ソニーとホンダは知られているが
ソニー・ホンダモビリティは知られていない
水野氏は昨年暮れに「ソニーやホンダは誰でも知っているが、ソニー・ホンダモビリティと言っても誰も“何の会社?”となる。クルマを多くの人に知ってもらうためにも、ブランド名はできるだけ早い時期に披露しなければならない」と語っていたが、それがさっそく披露されたことになる。そのブランド名は、披露された新しいコンセプトカーのフロントグリルとリアエンドにしっかりと反映されていた。
ただ、AFEELAのロゴマークは特徴を感じるものはなく、どこかホンダが北米で展開するスペシャルブランド“ACULA(アキュラ)”の語感にも似ている。これは意外になじみやすいかも? とも感じた。ほかにシンボルマーク的なものは発表されず、これは2025年春に予定する先行受注までに決めようという段取りなのかもしれない。
一方で披露された車両は、これまでの「VISION-S」をベースに新たなコンセプトに合わせた仕様変更したものにも見えた。ステアリングが自動運転を意識した形状に変更されていたが、インテリアは「まるで繭に包まれたような、無垢でやさしいラウンド基調のデザイン」で、「人が求める機能と体験の実現を目指す」と表現されていた(リリースより)。これはまさにVISION-Sが目指していたエンタテイメントの世界と共通のものだ。
ただ、ルーフにはLiDARが収まりそうなセンサーボックスも見え、Bピラーにはカメラが備えられるなど、ソニーが提供する車載センサーが装備されたこともうかがえる。発表内容によれば「車内外には計45個のカメラ、センサーなどを搭載し、室内のインキャビンカメラやToFセンサーによって、ドライバーの運転状況や走行状態をモニタリングし、不慮の交通事故防止へ貢献する」としている。
また、「特定条件下での自動運転機能、レベル3搭載を目指すと同時に、市街地等、より広い運転条件下での運転支援機能、レベル2+の開発にも取り組む」とし、つまり、ここからは限りなく自動運転に近い状態で走りながらソニーが提供するエンタテイメントを楽しむ、そんな新たなモビリティの世界観を示したと言えるだろう。
それを実現するための新たなコミュニケーションツールの搭載も明らかにされた。それが「Media Bar」だ。「モビリティと人がインタラクティブなコミュニケーションをするため、知性を持ったモビリティがその意思を光で語りかける」仕組みだそうで、今後は「さまざまなパートナー、クリエイターと共に、可能性を幅広く模索していく」としている。
チップセットはクアルコムと協業
こうした機能は、「最大 800TOPSの演算性能を持つハードウェア」の搭載によって実現され、そこには「Qualcomm Snapdragon Digital ChassisのSoCを採用」することも明らかにされた。次世代のモビリティ体験の実現に向けて、戦略的な技術パートナーシップを築いていくというわけだ。特に新たなサービスの取り組みには、常に最新の状態になるアップデートは欠かせず、そこに必要なのは紛れもなく5Gネットワークだ。この分野でのクアルコムとの協業は自然の流れだったと言えるだろう。
会場ではクアルコムテクノロジーズの社長 兼 CEOのクリスティアーノ・アモン氏が登壇。「自動車はますますコネクテッド化とインテリジェント化が進んでおり、自動車における体験も変化している。Snapdragon Digital Chassis は、次世代のソフトウェアデファインドな車両の基盤として、新しいモビリティ体験とサービスを実現する」と述べ、自動車の将来に対する共通のビジョンとして実現できることへの期待感を示した。
さらにモビリティサービスおよびエンタテインメントの新たな価値創出に向けて、Epic Gamesと協業についても明らかにされた。ここでは、Epic GamesのCTOを努めるキム・レブレリ氏が登壇し、「ソニーとソニー・ホンダモビリティとともに、この革新的な新ジャンルで、新たなエンタテインメントをお届けすることを楽しみにしている」と述べた。まさにソニーが目指す、新たなモビリティの世界観がここに凝縮されているのは間違いない。
ソニー・ホンダモビリティは、このプロトタイプをベースに開発を進めていくとしており、2025年前半に先行受注を開始。同年中には発売を予定する。デリバリーは2026年春に北米から開始する見込みだが、同社は日本へも同年中に展開することを明らかにしている。ソニー・ホンダモビリティが示す新たなモビリティはどう展開されるのか。その登場に期待はますます高まる。
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