法人カード一体型支出管理「Staple」のクラウドキャストCEO 星川氏に聞く、バーチャルファーストな働き方の価値

新しい働き方実現のために、あえて「週1日だけ」オフィスを開ける理由

文●大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

提供: Dropbox

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テクノロジー中心の会社、クリエイティビティが発揮できる働き方を目指す

――クラウドキャストさんには現在、Dropboxのバーチャル・ファースト・アンバサダーを務めていただいており、リモートワークにも積極的に取り組まれているとうかがいました。その姿勢はコロナ禍以前からですか?

Dropbox Japan 梅田氏

星川氏:いえ、ずっとリモートワーク主体というわけでもないんですよ。ただし「固定されたオフィスにはこだわらない」「リモートワークも組み合わせて働くのが自然だ」という考えは、設立当初からあったと思います。

 まず、クラウドキャストの立ち上げ当初はわたし1人で、オフィスもないかたちで会社をスタートしました。わたし自身が“リモートワーク”だったわけですね。次に雇用したのも海外のエンジニアで、日本のビザを取るのではなく、そのまま現地でコーディングやテストの仕事をしてもらいました。

 その後、2013年ごろに本格的に資金調達を行い、日本国内での採用を始めました。現在の従業員数は40名ほどで、ある程度人を東京に集めたかたちになりました。

――途中からオフィスも構えられたのですか。

星川氏:そうですね。最初はコワーキングスペースから始まって、規模の拡大とともに自社のオフィスを借りたこともあります。現在は大手町の「FINOLAB」という、Fintechベンチャーが集まる共同オフィスに入居しているかたちです。

 オフィスにはオフィスの良さがありますが、まあ毎日出勤する必要もないかなとも思っています。コロナ以前も、出勤やリモートワークについての細かいルールは設けていませんでした。

――一般的な会社だと、リモートワークには事前に申請が必要だとか、何らかのルールがありますよね。ルールを設けなかった理由は?

星川氏:僕らはとにかく「いい人材を集めていいものを作る」のがミッションなので、そこには別にルールはいらないかなと、最初から考えていました。現在は規模が拡大し、まったくルールがないわけではないのですが、それでも必要最小限のルールだけでいいと思っています。

 プロの人材が集まる会社なので、良い仕事さえしていただければ問題ない。その評価は仕事のアウトプットやクオリティで行い、「何時間働いたか」は関係ない。むしろ同じ成果をアウトプットできるなら、短い時間でできたほうがいいはずですからね。

――星川さん自身がエンジニアの出身ということもあって、やはりエンジニアが伸び伸びと働けることを一番に考えて、働き方を設計されているという感じでしょうか。

星川氏:そうですね、そこは昔から変わっていないです。

 クラウドキャストはテクノロジー中心の会社なので、従業員のクリエイティブの力が発揮されるように働き方を合わせています。良い仕事をする、良いコードを書くためには、やはり集中して仕事ができないといけない。この「集中する時間」というのは人それぞれで、1人の時間もすごく重要です。それはオフィス環境を整えるだけではなかなか作れないと考えています。

 とはいえ、コロナ以前は「1:9」くらいの割合でした。リモートワークの従業員が「1」、オフィスに出勤する従業員が「9」です。基本的にはふつうに出勤してもらって、通勤手当も支給していました。それがコロナ以後は「8:2」くらいの割合に逆転しています。

コロナ禍のフルリモートワーク経験で「犠牲になるもの」が見えてきた

――「1:9」が「8:2」に逆転したと。われわれDropboxも、以前は快適なオフィスを用意するなどオフィス出社中心の考え方でしたが、コロナ禍をきっかけにバーチャルファーストへと全面転換しました。クラウドキャストさんも、コロナ禍がきっかけで働き方が大きく変わったわけですね。

星川氏:そうです。コロナの一番大変なときには、ほかの会社と同じようにフルリモートワークも経験しました。そこからいろいろと試行錯誤して、現在の「8:2」というバランスにたどり着いたのです。実際にフルリモートで働いてみると、フィジカル(オフィス出勤)にも良さがあることに気づきます。

――フルリモートワークで働いてみて、どのあたりに課題を感じましたか。

星川氏:リモートワークには、エンジニアが集中できて生産性が高まるというメリットがあり、おそらく製品のクオリティも良くなると思います。Dropboxのような、リモートワークを支援するツールも充実してきていますし。

 ただし、最初の数カ月間は良かったのですが、フルリモートの状態が続けば続くほど、組織間の壁が感じられるようになったり、チーム内のスピード感が悪くなったりと、犠牲になっている部分もあることに気づきました。フルリモートの働き方は、やはり人間どうしのコミュニケーションに課題があると思います。

――最初は良いんだけど、時間が経つにつれて課題が浮き彫りになってくるというのは興味深いですね。

星川氏:特に新しい人を採用してオンボーディングするときに、フルリモートでやるのはかなり苦労しました。オンボーディングにおける課題は明らかで、入社した方がなかなか「なじめない」んですよね。リモートだと仕事上のちょっとしたことが相談しづらい、相談するのをためらってしまう。その結果コミュニケーションが不足して、望んだ成長曲線にならない。

 いろいろと試行錯誤した結果、現在の僕らの答えは「ハイブリッド(ワーク)」です。リモートファースト、バーチャルファーストではあるけれども、そこに対面でのコミュニケーションを組み合わせることが必要です。営業とお客様とのディール(商談)でも同じですが、情報伝達さえしっかりできればリモートでも……とロジカルに割り切れることばかりではない。対面で会って、ついでにちょっとランチでもして、雑談も含めて話す機会を設ける――。そういう人間としてのコミュニケーションも欠かせないという気がします。

――おっしゃるとおりですね。Dropboxの提唱する「バーチャルファースト」も、バーチャルが優先という意味であって、100%リモートワークにすべきと主張しているわけではありません。リモートと対面という異なる働き方を組み合わせて“いいとこ取り”をすることで、柔軟な働き方、コミュニケーション、ワークライフバランスなどを最適化しようという発想です。

星川氏:Dropboxさんとわれわれの考えていることはすごく似ていますし、共感を覚えます。

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