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「ニューノーマルの働き方」調査結果を発表、社員に支持される「バーチャルファースト」の取り組みも紹介

リモートワーク頻度と「ワークライフバランスの幸福度」の関係、Dropbox調査

文●大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 Dropbox Japanは2022年7月8日、日本国内で実施した「Future of Work(ニューノーマルの働き方)調査」の結果を発表した。リモートワーク実施における「現実と理想」のギャップ、ワークライフバランスの変化と幸福度の関係、チームで働くうえでの「同期/非同期の働き方」の使い分け意識など、役職や世代ごとの違いも含めた働き方の変化を多面的に示すものになっている。

 記者説明会では、同社 社長の梅田成二氏が調査結果の概要やポイントを紹介したほか、Dropboxが提唱する「バーチャルファースト(Virtual First)」の働き方を解説し、Dropbox Japanにおけるこの1年間の実践で得た「学び」を披露。さらに同社の人事責任者である高橋美智子氏が、社内の人事制度や日本での具体的な取り組みなどを紹介した。

同調査より、回答者の「リモートワーク実施頻度」と「ワークライフバランスの幸福度」の関係(上段が現在、下段がコロナ禍前の評価数値)。リモートワーク実施頻度の高い(週3日~全日)層では、コロナ禍前よりも大きく幸福度が高まっている

Dropbox Japan 代表取締役社長の梅田成二氏、Japan & APAC HRリードの高橋美智子氏

リモートワーク:理想と現実にギャップ、会社に求める支援は“次の段階”へ

 今回の調査は2022年4月7日~4月10日、日本全国の20歳~69歳の男女1500名を対象にインターネットで実施されたもの(調査実施は電通マクロミルインサイト)。梅田氏は調査結果について「リモートワークの現状と効果」「ワークライフバランスと幸福度」「『同期/非同期』の意識的な使い分け」という3つのポイントに絞って説明を行った。

 今回の調査対象者のうち、リモートワークを実施している回答者(「1週間に1~2日」未満の頻度も含む)は29.6%だった。一方で「理想的なリモートワークの頻度」を聞くと、リモートワークをしたいと考える人は48.4%に及び、現実と理想の間にはギャップがあることがわかった。

 「いま、リモートワークをされている方が30%。一方で、リモートワークをしたいと考えている方は48%いる。そこには今の会社の仕組みや経営陣の考えと、現場の社員の意識にギャップがあることがわかる。ちなみに『毎日リモートワークをしたい』という方(11.9%)よりも、『1週間に1~2日程度』(18.0%)や『1週間に3~4日以上』(12.5%)のほうが多い。どちらかというと(リモートワーク“も”できる)選択肢がほしい、という方が多い」

現実のリモートワーク実施頻度と「理想的な頻度」の間にはギャップがある

 リモートワークを実施している人が満足している点としては「通勤時間などの短縮(54.7%)」「自分のペースで仕事ができる(45.9%)」「時間や場所の制約がない(30.2%)」という回答がトップ3。一方で不満な点の上位は「プライベートと仕事のメリハリがつかない(30.6%)」「水道光熱費・食費などが上がった(29.7%)」「印刷ができない(24.3%)」となっている。

 「全体で見ると少ないものの、子どもがいる女性の30%、そして30代男性の22%は『仕事と並行して家事や育児をしないといけない』という不満を持っている。これは切実な思いだろう」

 リモートワークに対する会社からの支援については「必要最小限の環境は整っている」(梅田氏)のが現状だ。チャットやオンライン会議システムなどのツール、セキュリティ対策、職場外から業務ファイルにアクセスできる仕組みなどは、すでに4割以上が導入済みであり、それで十分だと考える人の割合も比較的高い。

 一方、「勤務先では導入されておらず、導入してほしいと思うもの」という回答の多い項目を見ると「自宅での就労環境整備のための補助金」「ワーケーションなど自由な働き方を奨励する制度」「仕事の成果に基づき働き方を評価する仕組み」が上位3つだ。梅田氏は、リモートワークの実体験と理解がだんだん進めば、今後はこうした制度面の整備に関心が移っていくのではないかと説明する。

リモートワークに対して会社がどのようなサポートをしているか、またしてほしいか。基本的なツールの整備が進み、次は制度面でのサポートが求められる

リモートワーク頻度が高い人は「ワークライフバランスの幸福度」も高い

 ワークライフバランスと幸福度について、まずコロナ禍前と現在のワークライフバランスを比較してもらうと、仕事の比重が高い「ワーク寄り」の人の割合は52%から47.9%へ微減、プライベートの比重が高い「ライフ寄り」の人は22.4%から25.5%へと微増している。全体では若干プライベートを重視する方向に動いたものの、まだまだ「ワーク寄り」の傾向は強い。ただし「リモートワークを週3日以上行っている層」「経営者/役員クラス」では、「ワーク寄り」比率が大幅に減少している。

 回答者が感じる「ワークライフバランスに対する幸福度」は、全体ではコロナ禍前と現在で変化がなかった(10段階で平均5.3)。ただし、リモートワーク実施頻度の高い層では、コロナ禍前よりも大きく幸福度が高まっている(本記事冒頭の図表を参照)。たとえば「1週間に3~4日以上リモートワークを実施している」回答者のうち「幸福度が高い」とした人は51.4%。また「すべて(全日)リモートワーク」の回答者でも46.2%が「幸福度が高い」としている。

ワークライフバランスについての質問。コロナ前に強かった「ワーク寄り」傾向が若干やわらいだものの、中間管理職の忙しさは変わらずのようだ

 「同期/非同期の働き方」に対する意識についても調査している。「同期の働き方」とは、対面/オンラインの会議や電話での通話のように、一緒に働くメンバーどうしが時間を合わせてコミュニケーションを行うこと。一方で「非同期の働き方」とは、「メール」や「チャット」あるいは「ドキュメント共有」など、個々のメンバーが自分の好きなタイミングでコミュニケーションを行うことを指す。Dropboxでは、同期/非同期の働き方にはそれぞれ一長一短があり、「意識的に使い分ける」ことが重要だと考え、実践しているという。

 それでは、同期/非同期の働き方は実際にどの程度、意識して使い分けられているのか。今回の調査では、全体の37.4%が「意図的に使い分けている/使い分けることがある」と回答している。特にその比率が高かったのは「20代男性(44.8%)」「20代女性(49.5%)」「部長クラス(61.1%)」だった。

 部長クラスの人が同期/非同期を強く意識していることは、たとえば「会議の仕方にも顕著に表れている」と梅田氏は指摘する。会議を設定する場合には、「会議の目的を明確にしておく」「関連資料を事前に共有する」「回答に時間がかかる項目は事前に共有する」など、「同期」の場である会議を有効活用するための「非同期」の準備を実践している人が多いという調査結果が出ている。

同期/非同期の働き方を意識し、意図的に使い分けているかどうか。部長クラス、20代男女ではそうした意識が強い

実際に「会議の仕方」を見ても、部長クラスでは同期/非同期でなすべきことを意識していることがわかる

 ちなみに、同期/非同期の働き方に対する意識は、「経営者」や「役員クラス」では低い結果となっている(「一般社員」と同程度)。「部長クラス」との大きな差がある点について、調査を実施した電通マクロミルインサイトでは「現場仕事に携わる頻度の違いが理由の1つではないか」とコメントした。また梅田氏は、前述したとおり「経営者/役員クラス」ではコロナ以後に「ワーク寄り」比率が大きく下がった一方で「部長クラス」ではそれほど下がっていない点も合わせて指摘し、「今回の調査結果を見るかぎりでは、経営者/役員クラスと部長クラスの間に少しギャップがあるのではないか」と述べた。

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