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酸化銅の室温でのマルチフェロイクス機能発現を確認=NIMSなど

2022年11月24日 06時27分更新

文● MIT Technology Review Japan

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物質・材料研究機構(NIMS)などの国際研究チームは、酸化銅が圧力を加えることにより室温で磁性と強誘電性を併せ持つマルチフェロイクス材料となることを実証。さらに、室温で機能するマルチフェロイクス材料の開発に有効な理論モデルを確立した。強誘電性や強磁性などの性質を複数有する物質であるマルチフェロイクス材料は、次世代メモリー材料や低消費電力の光制御デバイスへの応用が期待されている。

物質・材料研究機構(NIMS)などの国際研究チームは、酸化銅が圧力を加えることにより室温で磁性と強誘電性を併せ持つマルチフェロイクス材料となることを実証。さらに、室温で機能するマルチフェロイクス材料の開発に有効な理論モデルを確立した。強誘電性や強磁性などの性質を複数有する物質であるマルチフェロイクス材料は、次世代メモリー材料や低消費電力の光制御デバイスへの応用が期待されている。 研究チームは、高圧下でも微小なスピンを観測できる新しい高圧発生装置を用いた中性子回折実験により、加圧することで酸化銅のマルチフェロイクス機能が室温で発現することを確認した。さらに、高圧力下における銅イオン間にはたらくスピン同士の相互作用(磁気的相互作用)の大きさと、どの銅イオン間に相互作用が存在するのかという仮定を最小限に抑えた、独自の計算手法による理論モデルを確立した。 マルチフェロイクス材料は、そのほとんどが100K(ケルビン、絶対温度)以下の低温でしかその機能を発現しないため、室温での動作が不可欠なデバイスへの応用が課題となっていた。酸化銅については、理論的にはマルチフェロイクスの機能発現温度が室温まで上昇することが示唆されていたが、高圧下で微細なスピンを直接観察する方法がないため、実験的に実証されていなかった。 研究チームが今回確立した理論モデルは、次世代メモリーや光制御デバイスなどの開発指針として役立つことが期待される。研究論文は、学術誌フィジカルレビュー・レターズ(Physical Review Letters)のオンライン版に2022年11月15日付けで掲載された

(中條)

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