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3年ぶりにリアル会場でも参加が可能に、多彩な登壇者がDXトレンドやソリューションを紹介

ウイングアーク1st、年次イベント「updataDX22」を開催中

2022年10月14日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 ウイングアーク1stの年次カンファレンス「updataDX22」が、2022年10月12日~14日の日程で開催中だ。3年ぶりに会場(ザ・プリンス パークタワー東京)参加も可能なハイブリッド開催になった。

 「データでビジネスをアップデートする」という意味の造語“UPDATA”とDXをイベントタイトルに掲げ、最新のDXトレンドやDX/企業変革事例、ウイングアーク製品の最新機能やロードマップ、パートナーソリューションの紹介など、60以上のセッションと25社によるブース展示を用意している。

「updataDX22」で冒頭あいさつに立った、ウイングアーク1st 代表取締役 社長執行役員CEOの田中潤氏

3年ぶりのリアル会場開催ということもあり、多くの来場者でにぎわっていた

 2日目の冒頭であいさつに立った同社CEOの田中潤氏は、「皆さんと3年ぶりに近くでお会いできてうれしい。会場に起こしの皆さんにはこの空気を感じていただき、またオンラインの皆さんもぜひ楽しんでいただけたら」と語った。会場参加とオンライン参加を合わせ、今年の参加登録者は1万7000名を超えたという。

 本記事では、1日目、2日目に開催されたいくつかのセッションをピックアップして概要をご紹介する。引き続き3日目も多様なセッションが催されるほか、会期終了後にはアーカイブ動画配信も予定されている。そちらも合わせてご覧いただきたい。

「不透明な時代」を乗り越えるために求められるDXの姿を語る

 2日目午前に開催されたSpecial Keynoteセッション「不透明な時代。だから今、デジタルトランスフォーメーション」では、石川県副知事の西垣淳子氏、イェール大学助教授で半熟仮想株式会社 代表取締役社長でもある経済学者/実業家の成田悠輔氏、ウクライナのSIベンダーの日本法人であるELEKS Japan 取締役社長COOの田井昭氏が登壇し、それぞれの立場から現在の「不透明な時代」をDXで乗り越えていくための知見が語られた。

石川県副知事の西垣淳子氏、イェール大学助教授で半熟仮想株式会社 代表取締役社長でもある経済学者/実業家の成田悠輔氏(米国からリモート出演)、ELEKS Japan 取締役社長COOの田井昭氏

 今年7月に石川県副知事に着任した西垣氏は、石川県において今後取り組んでいくオープンデータ活用、「政策立案におけるデータ活用」について説明した。西垣氏は、これまでの政策立案は“政策の供給者”=行政側視点に立ったものだったが、今後はビッグデータに基づいて社会課題を可視化することで“需要者”=市民視点に立った政策立案が必要だと語る。

 石川県ではWebサイトにオープンデータカタログを掲載しており、また月次/年次の経済統計資料やレポートもWebサイトで公表するなど、「47都道府県の中でもかなりしっかり」(西垣氏)オープンデータを公表できているという。ただしまだ、データを「公表する」ことがメインであり「活用する」ところまで意識が行っていない、というのが西垣氏の評価だ。

 ここからオープンデータ活用を進めるために、西垣氏は「3つの“シンカ”を目指したい」と話した。主要統計の将来予測を可能にする「進化」、データの組み合わせによる深読みを行う「深化」、そして外部からデータを見ることで生まれる新たな価値や課題=データの「真価」という3つである。

 こうした取り組みを進めるために、県庁内各幹部の部屋にダッシュボードを設置して“感覚”ではなくデータに基づく判断という姿勢を根付かせていくと語った。また今後の課題としては、県と県内19市町の間で共通のデータ活用モデルやルールの策定、個人情報活用のためのガイドライン策定、“アナログ”を前提とした既存ルールからの転換(アンラーニング)、課題解決に向けたデザイン力(発想力、構想力)の向上といったものを挙げた。

石川県内の行政におけるオープンデータ活用の進化/深化/真価を目指す。取り組みの一環として、ダッシュボードを県庁内に展開し「データに基づく判断の訓練を進めたい」(西垣氏)

西垣氏が紹介したダッシュボードの例

 経済学者/実業家の成田氏のセッションでは、同氏の近著「22世紀の民主主義 ―選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる」に基づき「民主主義がDXされたらどうなるか?」という議論が展開された。“代表制民主主義+資本主義”というこれまでのモデルが機能不全に陥り、むしろ民主主義国において経済停滞が続いていることを指摘したうえで、これまでの「選挙で代表を選ぶモデル」に代わる新しいモデルを提案するものだ。

成田氏は、人々の無意識の行動や生体情報のビッグデータに基づく新しい民主主義モデルを提案した

 ELEKS Japanの田井氏は、ウクライナ本社がロシアによる軍事侵攻に直面してどのような対応を行い、ビジネスを継続させたのかを具体的に紹介した。同社では2014年のクリミア危機以来、大規模な侵攻がありうることを前提にBCPを準備しており、侵攻が始まった2月24日以前からリスク低減委員会の設置、ウクライナ西部への移住推奨、国外での業務検討などを行っていたという。侵攻開始後にはBCPを実行に移し従業員の安全性を確保したうえで、顧客にも安心を与えるアクションを取ってきたという。

 DXに関しては、同社がデザインからコンサルティング、開発、ローンチ、技術サポートまで一貫して請け負える強みをアピールした。特に日本企業においてはDXの「D=テクノロジー」部分が重視され「X=ビジネス」がおろそかにされがちだと指摘し、両者のバランスを取るためにもビジネス要件の精査が必要だと訴えた。

(左)ロシアによるウクライナ軍事侵攻以後、ELEKS本社がとったアクション (右)顧客と伴走しながらDXの取り組みを支援していくと語った

「つなぐDB、Dr.Sum」「業務アプリなBI、MotionBoard」とは?

 初日には「データ活用をもっと身近に。データの運用をもっと柔軟に。」と題し、ウイングアークの旗艦製品である「Dr.Sum」と「MotionBoard」がどのように企業のDXを支えるのか、最新機能の紹介やライブデモ、さらに今後のロードマップ紹介などを交えたセッションが催された。

同セッション前編では「Dr.Sum」「MotionBoard」それぞれのコンセプトや最新アップデート情報が、後編では最新機能のライブデモが披露された

ウイングアークが提供するデータ管理/活用製品群。「このひとくくり(全体)、環境そのものをウイングアークでは『Dataring(データリング)』と呼んでいる」(大澤氏)

 ウイングアーク1st 執行役員 兼 Data Empowerment事業部長の大澤重雄氏は、「ウイングアークが目指す世界は、データを活用する=データを中心にものを考える世界。その実現のために『データ活用ができる状態を維持し続ける』ことに着目していきたい」と、製品全体の方向性を説明する。

 同セッションでは、それぞれの製品における最新のコンセプト、開発の方向性を「つなぐDB、Dr.Sum」「業務アプリなBI、MotionBoard」という短い言葉で表現した。Dr.Sumは高速な分析用データベースエンジンを中核とするデータ分析基盤として、またMotionBoardは機能豊富なBIダッシュボードツールとして知られるが、ユーザー企業におけるビジネスニーズや抱える課題の変化に伴って、それぞれの位置付けも常に進化している。

 Dr.Sumの「つなぐDB」というコンセプトは、データ活用に取り組む多くの顧客企業が直面する「データの分断/サイロ化」という課題に対応するものだ。データ活用においては複数のデータを柔軟に組み合わせられるかどうかが成功の鍵を握るが、サイロ化により阻まれているケースは多い。また、基幹システムの大規模なデータはIT部門が管理していることが多く、それを柔軟に活用したい現場部門との間にも「壁」が生じる。

 こうした課題を解消すべく、Dr.Sumでは幅広いデータソースを集約してデータマート/DWHを構成可能としている。さらに接続できるBIツール群も「Dr.Sum Datalizer」やMotionBoardといったウイングアーク製品だけでなく、「Tableau」「PowerBI」といった他社製品に拡大している。なお同日付で、対応BIツールに「ThoughtSpot」も追加したことを発表した。

(左)大規模データ活用には「IT部門と現場部門の壁」もあり、その間をつなげるのがDr.Sumだと紹介 (右)部門向けのデータマート、全社向けのデータウェアハウス、さらにそれらのハイブリッドというかたちで柔軟に分析用データベースを用意できる

 一方、MotionBoardは「業務アプリなBI」を目指すと紹介されている。「業務アプリなBI」とは、従来のようにデータを取り込んで可視化するダッシュボードだけでなく、業務現場のデータ入力ができる業務アプリの開発もできるBI、という意味だ。これにより、基幹システムのデータはあるものの現場のデータがない、あるいは現場からデータを収集する仕組みがないという企業の課題に対応する。

 MotionBoardはデータの入力機能も備えており、ダッシュボードを作るのと同じような感覚で、データ入力フォームも簡単に作成できる。実際にMotionBoardは、日本トランスオーシャン航空、パナソニックといった顧客企業から「BIというよりは業務アプリに近い、業務改善ツールとして使える」「データ入力が最も容易なツール」といった評価を得ているという。

 それに加えて、現行最新版のVer.6.3ではカメラ映像を活用できることも紹介した。たとえば現場のダッシュボードで何らかのアラームが出ていたり、ある時間帯に異常値が発生していたりする場合に、現場で何が起きていたのかをカメラ映像で確認するといった使い方ができる。これも「業務アプリなBI」としての機能であり、今後のバージョンでもさらに機能強化を図るという。

BIツールではなく「業務アプリ」としてMotionBoardを評価する顧客の声もあるという(入力フォーム機能は次期バージョンの開発中画面)

 なお同セッションでは、両製品の今後の開発ロードマップも紹介された。

 Dr.Sumにおいては、現行バージョンで対応するサードパーティ製BIツールを今年中にさらに拡大する。またデータベースとマートの両立、運用の可視化といった機能強化ポイントを持つ次期バージョン(Ver.5.7)を来年冬に、また大幅なバージョンアップとなるVer.6.0を2024年以降にリリース予定だ。

 MotionBoardにおいては、新しいプラットフォームを適用したクラウド版Entry Editionを今年12月に提供予定のほか、来年3月には入力フォーム作成機能など「業務アプリ」としての機能強化を図ったVer.6.4をリリースする。

Dr.Sum(左)、MotionBoard(右)のロードマップ

DXトップランナーたちがそれぞれの業界、企業規模で見つけたDXの進め方

 2日目夕方には、国内において“DX推進のベンチマーク”と目される3社、クレディセゾン、中外製薬、LIXILの各DX担当幹部が登壇するパネルディスカッション「DXトップランナー3人が語る 組織と社会を変革する価値創造型DX」が催された。

 業界や企業規模、ビジネス戦略の異なる3社では、それぞれに異なるDX戦略、組織や人材のデジタル化に向けた取り組みが必要とされる。ディスカッションの中で各社各様の工夫が紹介され、その「違い」と共に「共通点」も浮き彫りになったユニークなセッションだった。

LIXIL 常務役員 Marketing部門 リーダーの安井卓氏、中外製薬 上席執行役員 デジタルトランスフォーメーションユニット長の志済聡子氏、クレディセゾン 取締役(兼)専務執行役員 CTO(兼)CIOの小野和俊氏

 こうしたセッションのほかにも、EXPO会場では各社ソリューションのブース展示、ミニステージでのセッション、さらにスタンプラリーの抽選などが行われにぎわっていた。

 updataDX22は10月14日までザ・プリンス パークタワー東京とオンラインでハイブリッド開催され、その後、各セッションはアーカイブ配信される。

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