赤澤賢一郎の不自由自在第5回

障害者用駐車スペースの話

文●アカザー 編集●ASCII STARTUP

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この記事は、国土交通省による歩行空間データの活用を推進する「バリアフリー・ナビプロジェクト」に掲載されている記事の転載です。

 どうもアカザーです! 2000年にスノーボード中の怪我で脊髄を損傷したんですが、気付けばもう22年以上も車いすユーザーやってんすね~。この22年間の車いす人生で、オレのQOLを爆上げしてくれたアイテムといえば、以前こちらのコラム「車いすと手動運転装置とオレ」で紹介した“手動運転装置”!

 でも、この“手動運転装置”を使っていて唯一ブルーになる場面があります。駐車場問題です! SNSでもたびたび話題にのぼることがあるこの“障害者用駐車スペース”問題。今回はこれについて、車いすユーザー視点で書いてみます。

“駐車禁止除外標章”と“車いすマーク”の違い

 20年前に比べると各段によくなったとはいえ、車いすで公共交通機関を使った移動にはまだあれやこれやとバリアはあったりします。その移動に比べると、断然メリットありまくりの手動運転装置が付いた自動車での移動。

 ですが、訪問先の駐車場でちょいちょい問題が起きたりするんです。特に問題が多いのは、多くの人が利用するショッピングセンターや公共施設にある“障害者用駐車スペース”です。

ショッピングセンターや公共施設のパーキングエリアでよく見かける、“障害者用駐車スペース”。

 そもそもオレ的に不都合なのは、障害者用駐車スペースが“車いすの要介助者を乗せた車を停めるための場所”として周知されていることです。オレのように車いすでもひとりで運転している人が居るコトを、駐車場の管理者を含め知っている人があまりにも少ない気がします。

 ここで、車いすユーザーであり、自ら手動運転装置を使い運転するドライバーでもあるオレ目線の駐車方法を紹介します。

 基本的に路上ではパーキングメーターなどの駐車スペースがあれば、そこに駐車する事が多いです。その際に、居住区の警察署が発行してくれる“駐車禁止除外標章”をダッシュボード上に提示しておけば違法駐車にはなりません。

 この“駐車禁止除外標章”は、横断歩道や交差点から前後5メートル以内の駐車はNGなど、一般的にも駐車禁止とされる場所以外なら、駐車が可能になるというものです(※各種使用条件アリ)。

 オレはショッピングセンターなどでも、“障害者用駐車スペース”を使う場合は、違法駐車ではないコトを周囲に示すために、この“駐車禁止除外標章”を提示しています。

“駐車禁止除外標章”を車のダッシュボードの見やすい場所に掲示。

 ちなみに、よく見かける車いすマーク(国際シンボルマーク)は“障害者が乗っています”と周りに知らせるだけのもので、法的な効力はありません。しかも、この車いすマークはカー用品店やネット通販で、誰でも購入することが可能なのです。でも、“駐車禁止除外標章”はそうはいかないので、コレが提示されていれば、その車はその“障害者用駐車スペース”が必要な利用者が使用しているというワケです。

車いすユーザー流パーキングエリアの使用法

 車いすユーザーのオレが車に乗るときは、運転席の横に車いすを斜め45度の角度に停め、両腕で身体を持ち上げ、車いすから運転席に乗り移ります。

 で、車に乗り移ったあとは車いすを折り畳み、運転席のシートをめいっぱい倒し、折り畳んだ車いすを持ち上げ、体の上を通して、助手席の後ろの席あたりに積み込みます。

 これが折り畳み型車いすを使っているオレの基本スタイル(車いすを高く持ち上げる腕力がない人は、屋根に取り付けたルーフトランクに自動収納する場合も)。降りる時はこの逆の手順です。

まずは車いすから自動車に乗り移る。

車いすは折り畳んで身体の上を運び、助手席の後ろに積む。

 毎日やっていると1分とかからずにできるようになるのですが(障害の度合いや使用している車いすにもよります)、慣れないうちは車いすを車内のあちこちにぶつけたりして、けっこう大変な作業だったり。ちなみに"障害者用駐車スペース"の横にあるゼブラゾーンは、車椅子などを置くのに必要なスペースというワケです。 

 話をショッピングセンターの“障害者用駐車スペース”に戻します。

 皆さん、車いすマークのある駐車スペースにカラーコーンなどが置いてあるのをみたコトはないですか?

こういうタイプのカラーコーンが、駐車スペースの前に置かれているのをよく見る。

黄色く大きなタイプを置いてある場所も! 奴はコーン四天王のなかでもいちばん手強いコーン!

 これは違法駐車を防止するためのコーンなんですが、車いすユーザーがひとりで運転している場合に、このコーンが置いてある駐車スペースを利用する場合はどうすると思います? 

【コーンの置いてある場所への駐車手順】
①コーンの前に車を停める
②運転席のシートを倒す
③バックシートの車いすを車外に出す
④車いすに乗り移りコーンをどける
⑤車いすから車に移乗
⑥車いすを折りたたんで車内に入れる
⑦シートを戻して車を運転し、駐車スペースに駐車!

 って、長いわ!!!

 でもこういう手順を踏まざるを得ないんですヨ。マックス・フェルスタッペンでも、ここで3分切りのタイムを出すのは至難の業!

コーンが運転席側にあったりする場合も…ドアを開けて降りられない!?

 カラーコーンには「利用時には係員へ連絡を~」と書かれているものもあり、その番号に連絡すると管理者さんがやってきてコーンをどけてくれる場合もあるのですが、たいてい前述の方法よりも時間がかかったりします。ていうかほぼ確実に倍くらい時間がかかります(経験則)。

 前述のひとりでコーンをどかす方法でも、他の車の出入りを3分以上止めることにもなりかねません。なので、車の出入りが多いショッピングセンターの駐車場なんかだと、駐車を諦めそのまましっぽを巻いて帰るコトもありました。負け犬のワイ乙。ていうか後ろに2~3台並ばれたときのプレッシャーよ!(笑)

駐車スペースの管理方法も場所ごとにバラバラ。コレは駐車後と出庫前に駐車場管理室に連絡を!というもの。

多様性のあるパーキングスペースを!

 たぶんコーンを置いている管理者側は、違法駐車を防ぎたいコトありきで、車いすユーザーがひとりで車を運転して出かけたりはするはずがないよね~? コーンをどかすのは介助者がやればいいんじゃないすか~?的な考えなのかも。

 だが考えが古いッ! 思考が昭和過ぎるぜ!

 平成的な解決方法として、前述の事前登録制(駐車禁止除外標章)や罰金制度(アメリカ)などもありましたが、それも古いッ! 時代は令和ッ! 

 っぱ、令和の時代はみんなの意識をもう一段上げる方向でオナシャス! 

●「“障害者用駐車スペース”のゼブラゾーンは車いすの積み下ろしに必要なスペース!」
●「車いすユーザーでもひとりで車を運転するコトがあるぜ!」
●「“障害者用駐車スペース”は車いすユーザーのみの専用スペースではない!」 

 このあたりを多くの方々に認知してもらい、その上で「コーンも置いてないし、空いてるし、ココ停めていいよね! ちょっとの時間だし!」的な思考をなくしていく方向でお願いシャス!

 またこれは車いすユーザーでも知らない人がいそうなのですが、車いすマークのついた駐車スペースを利用できるのは、車いすユーザー以外にもけっこういたりするんですヨ。

 なかでも違法利用と間違えられて問題が複雑になるのが、一見して障害がわからない方々です。そこで“駐車禁止除外標章”の提示に意味が出てくるんですが、妊産婦さんなど一時的な利用可能者もいらっしゃいます。そして複雑なルールで縛れば縛るほど、その抜け道を見つけて不正利用をする輩が一定数いるのも事実。

“障害者用駐車スペース”といっても、車いすユーザーだけの場所ではありません。高齢者や怪我人、妊産婦さんなど、さまざまな人が利用可能です。そして、管理が民間なこともあって違法駐車しても事実上おとがめナシ。そんな複雑かつもやっとしたルールなので、不正利用する人も多く見られます。

 オレ的には、複雑なルールで縛るよりも「車いすユーザーや他のハンディがある方は、なぜこの駐車スペースが必要なのか?を多くの人に知ってもらう」そのこと自体が重要な気がします。最近よく聞く“心のバリアフリー”も同じ感じで、まず相互理解ありきですよね。

 そのためには、オレを含めたそれをやってもらう側(障害者や車いすユーザー)の、自分たちがどうしてそれが必要なのか?を知ってもらう努力が必要な気がします。令和の今なら、SNSなどで気軽に利用体験などを発信していくのなんか超アリだと思います(ただ文句や愚痴のタレ流しは個人的には嫌いっす…)。

 オレは、そういった健常者と障害者の相互理解なくして「真の心のバリアフリー」はない気がするんですよね~。

 と、最後はいろいろと好き勝手に書きましたが、オレを含めた車いすユーザーの多くは健常者の皆さんに、超感謝しまくりなんですヨ!

 先日もスーパーで「高いところのモノとりますから声かけでくださいね~」と、優しい言葉をかけていただきました。車いすになって人の暖かさに触れる機会がホント増えたな~と、この22年ずっと感じています。

 ちょっと不自由ですけど、車いすは人の暖かさが心に沁みる乗り物なんすよ!

 あ! そうそう、車止め用モーターが運転席側にあるコインパーキング! お前はダメだ! ギルティ罪深い! ていうかヤツは令和の時代で駆逐する方向で!

アカザー(赤澤賢一郎)
週刊アスキーの編集者を経て、現在は車いすのフリー編集者・ライターをやっています。2000年にスノーボード中の事故で脊髄を損傷(Th12-L1)。車椅子ユーザーになって21年です。2018年に札医大で再生医療の治験を受け、2020年に20年ぶりに歩行!!!

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