ハイエンドCPUの性能を限界まで絞り出すためのCPUクーラー!

暑い夏、高温のPCを冷やすCPUクーラーを選ぶなら水冷がよいのか空冷がよいのかを検証

文●石川ひさよし 編集●ASCII

提供: エムエスアイコンピュータージャパン

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 マザーボードはMSI「MPG Z690 FORCE WIFI」。もちろんPL1&PL2を無制限にできる点、高ブーストでも安定して計測できる点で選択している。「MPG Z690 FORCE WIFI」は、前回ホワイトPC自作企画でも用いた製品だが、「MPG Z690 CARBON WIFI」とスペック的に同等でヒートシンクをシルバー化したモデルと考えてよい。今回のパーツ構成では、このマザーボード上の各部ヒートシンクと、ビデオカード上の各ロゴがシルバー/ホワイトで、アクセントになっている。これをヒートシンクがブラックの「MPG Z690 CARBON WIFI」や、全面ブラックの「MEG Z690 UNIFY」に置き換えれば、ケース内をブラックアウトすることができる。

MSI「MPG Z690 FORCE WIFI」

 ビデオカードはMSI「GeForce RTX 3070 Ti VENTUS 3X 8G OC」を用いた。WQHD〜4Kで高画質設定が狙っていけるGeForce RTX 3070 Tiを搭載しつつ、OCでより性能を高めたモデルだ。VENTUS 3Xは3連ファンでLED非搭載のシブ目のデザインが特徴的。発光箇所が少ない「MEG CORELIQUID S360」との相性はバッチリだ。

MSI「GeForce RTX 3070 Ti VENTUS 3X 8G OC」

 そして肝心のPCケースを紹介しよう。今回用意したのはMSI「MPG QUIETUDE 100S」。やや大きめで大型ビデオカードも余裕のミドルタワーケースだ。製品名のとおり静音性を重視しているが、背面を中心にパンチホールも多い。天板部はマグネット交換式にスチール蓋とメッシュフィルターを利用シーンに合わせて切り換えできる。

MSI「MPG QUIETUDE 100S」

 CPUクーラーとのフィッティングだが、空冷CPUクーラーなら高さ17.5cmまで対応する。17.5cmと言うと14cm角ファンを搭載する大型CPUクーラーでも装着可能なサイズ感だ。もちろん今回用意した比較対象も余裕で収まる。一方、水冷ラジエータはフロントおよびトップが12/14/24/28/36cm、リアが12cm。「MEG CORELIQUID S360」の場合、フロントにもトップにも装着できる。どちらがよいかというのはあるが、今回計測したかぎりではトップのほうがよいデータをとれた。

「MPG QUIETUDE 100S」の標準搭載ファンを説明しておこう。「MPG QUIETUDE 100S」は12cm角ファンの「MEG SILENT GALE P12」を1基、リアに搭載している。ラジエータをトップに、ファンを排気向けに搭載すると全体で4基のファンを排気に使い、吸気ファンはゼロという負圧の性格になる。一方、ラジエータをフロントに置き、ファンの数を吸気が3基、排気が1基とすると正圧の性格になる。「MPG QUIETUDE 100S」はリアにパンチングホールを設けるなど通気性をよくしているが、基本的には静音向けのケースだ。フロント配置でデータが振るわなかったのは、排気が足りなかったためと思われる。

36cmラジエータを「MPG QUIETUDE 100S」のフロントに搭載したイメージ

36cmラジエータを「MPG QUIETUDE 100S」のトップに搭載したイメージ

 ただし、これは標準構成でのデータだ。ケースファンを追加した場合はまた変わってくるだろう。「MPG QUIETUDE 100S」は12cm角ファンの場合、最大7基まで搭載できる。標準のリア1基に加え、トップに排気用に3基を加えれば、ラジエータをフロントに置いて吸気3基としても、全体的にやや負圧の性格になる。また、今回ファンの回転数は「MSI Center」から「Gaming」の決め打ちで実施している。ファンの回転数を細かく部分部分で調整していけば、よりよい結果が得られるだろう。

ログデータ解析で分かる、ハイエンド簡易水冷CPUクーラーの強み

 まずはベンチマーク実行中のログからCPU温度の推移を見てみよう。計測時の環境は、室温が27℃、湿度は70%台だ。マザーボードの設定から、PL1&2は無制限(4095W)としている。

 グラフ1はCINEBENCH R23のMulti Coreテストを10分間動かした際のものだ。まず全体に触れておくと、CINEBENCH R23はCPUメインのベンチマークだけあって、ほとんどの時間はCPUの上限100℃付近で推移する。数年前なら、CPUクーラー選びは高負荷時で60〜70℃台を維持できるものが理想的としていたが現在は異なる。第12世代Core、そしてそれをPL1&2無制限とすると、許容される最大温度である100℃になるまで性能を出し切ろうとする。結果的にCPU温度のグラフではほとんど100℃に張り付く形となってしまい、どのクーラーの組み合わせでも同じようなグラフになりがちだ。

グラフ1 CINEBENCH R23のMulti Coreテストを10分間動かしたCPU温度の推移

 100℃という温度だが問題はない。一見すると高いように見えてしまうがCPUの動作保証上限であり、それを超えることがないようインテリジェントなクロック制御や電力制御が行なわれる。サーマルスロットリングと言うと、パフォーマンスを制限されるイメージを持たれがちだが、CPUに関しては少し事情が異なる。もちろん本当に冷却性能が不足していればCPU性能も制限されるが、高性能なCPUクーラーを組み合わせている場合は性能を引き出しつつCPUを壊さないための介入を意味している。こうした理由から、CINEBENCH R23のグラフで見るべきところは、「負荷が抜けた時にどこまですみやかに冷却されるか」となる。

 全体(480カウント)のグラフでも、30カウント経過時以降、390カウント付近のベンチマーク終了まで、ところどころスパイクのようにCPU温度が低くなるシーンがある。Multi Coreテストのレンダリング終了から次のレンダリングが始まるまでに一瞬、CPU負荷が抜ける部分だ。このスパイク部分にフォーカスすると、部分的に青い線「MEG CORELIQUID S360」側のほうがより冷えているといったシーンがある。

 そしてグラフ2は240カウント経過時点からの120カウント分を切り出したものだ。こちらのグラフではスパイク部分のほかにも、小刻みに青い「MEG CORELIQUID S360」側がより低い温度になる(冷える)部分がいくつかあるのが分かる。レンダリングと次のレンダリング間のタイミングだけでなく、わずかでも負荷が小さくなったタイミングでCPUが冷却されていることが分かるグラフだ。

グラフ2 CINEBENCH R23のMulti Coreテストを10分間動かしたCPU温度の推移(部分拡大)

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