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公的機関からの書面郵送による照会・回答を一括受託、OCR処理も組み込み効率化とコスト抑制を図る

キヤノンMJ、JAバンクにおける年間300万件の照会・回答業務をBPOで支援

2022年07月26日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は2022年7月25日、農林中央金庫と共同で、全国のJAバンクにおける公的機関からの預貯金等照会・回答業務を支援する「公的照会BPO・OCRサービス」を構築したことを発表した。年間300万件に及ぶ、JAバンクに対する公的機関からの書面(郵送)での照会依頼について、キヤノンBPOセンターが一括して対応を代行するもの。

 依頼元の公的機関や自治体ごとに異なる照会依頼書(非定型帳票)の受付とOCR処理、照会データ作成、照会実行、回答書の作成、回答書の郵送まで、キヤノンMJグループが持つソフトウェア/ハードウェアソリューション群も活用しながら、高効率かつコストを抑えた、一気通貫のサービスを提供するのが特徴だとしている。今後、他の金融機関や生命保険会社などにも提案を拡大していく方針。

キヤノンMJと農林中央金庫による“公的照会BPO・OCRサービス”の概要。全国JAバンクに対する公的機関からの照会依頼を一括で受け付け、その結果を回答書として郵送するまでの作業を行う

 預貯金等照会は、税金滞納者の資産調査などを目的に、公的機関から金融機関に対して口座の有無、取引履歴などの調査を依頼するもの。法的には任意調査という位置づけだが、回答しない場合には罰則規定があるなど、金融機関にとっては実質的に回答義務がある。政府統計によると調査件数は年間で6000万件にも上り、これまで原則として書面での調査依頼/回答で行われていたため、金融機関にとっては負担の大きな業務となっている。

 負担を軽減するために、政府では2019年(令和元年)にこの照会・回答業務をデジタル化していく方針を示しており、2024年(令和5年)以降に順次本格展開していくロードマップを示している。ただし、現在は書面とデジタルが混在した以降の過渡期であり、金融機関の負担は大きいままだ。

 JAバンクにおいても年間300万件ほどの照会があり、郵送による照会依頼書の受付から照会作業(口座有無の確認作業)、回答書の作成、郵送と、手作業による大きな事務負荷を抱えていたという。そこで今回、照会・回答業務のデジタル化サービス(NTTデータの「pipitLINQ」、SocioFutureの「DAIS」)を導入してデジタル化を推進するとともに、書面による照会・回答業務についてはキヤノンMJのBPOサービスを活用して全国集約化を図った。

 キヤノンMJのBPOセンターでは、公的機関からの依頼書の受領、依頼書に書かれた調査対象者情報のデータ化、自動回答システム(データベース)への照会、回答データからの回答書の印刷、封筒への封入、発送といった作業を一括で請け負う。

 キヤノンMJによると、依頼書の書式は統一されておらず1000種類ほどがあるという。依頼書に書かれた調査対象者情報のデータ化には、同社の非定型帳票対応日本語OCRソフトウェア「Rosetta-Stone-Components」を活用して効率化を図る。キヤノンMJでは、受領する依頼書のおよそ8割程度をOCR処理できると見ているという。また、依頼書のスキャンや回答書の印刷、封入などの作業には、同社製のドキュメントスキャナーやプロダクションプリンターなどを活用する。

公的機関の依頼書は統一されていないため、非定型帳票対応のOCRソフト「Rosetta-Stone-Components」を活用して必要な情報を抽出する

 キヤノンMJはこれまで、公的機関からの照会・回答業務を支援する目的で、太陽生命や朝日生命にOCRシステムを導入してきた。今回は、そうした実績のあるOCR処理を組み込んだBPOサービスとして提供し、顧客企業における業務負荷軽減とコスト抑制を図る狙いがある。

 今回の農林中央金庫とJAバンクの採用事例をきっかけとして、キヤノンMJでは今後、他の銀行や生命保険会社といった金融機関にも同サービスを提案し、展開を強化していく方針。今年1月に発表された同社の中期経営計画においては、ITOやBPOを含むアウトソーシング事業全体で2025年に売上高320億円を目指している。

キヤノンMJでは同サービスの強みとして、照会受付から照会実行、回答書の郵送まで一括してアウトソースできること、非定型OCRを活用することで高効率でコストを抑えたサービスが可能であることを挙げている

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