業界人の《ことば》から 第494回
リモートワークを中心に考える、Dropboxのバーチャルファースト
リモートワークは生産性を維持した自由を提供するのか、それとも分断を生むのか
2022年07月19日 09時00分更新
Dropbox Studioの設置でコラボレーションを活性化
バーチャルファーストにおいて象徴的な取り組みのひとつが、Dropbox Studioの設置である。
「Dropbox Studioは、出勤するためのオフィスではなく、社員同士がコラボレーションしたり、チームビルディングを行ったり、お客様との打ち合わせのためのスペースとして活用する」という。
出社してデスクで仕事をするという考え方ではなく、あくまでもリモートワークを前提とした上で、対面形式でコラボレーションする場としてオフィスを作りなおしたのがDropbox Studioというわけだ。
Dropbox Studioは、2021年6月から一部の地域で利用できるようにし、2022年4月からは、全世界でDropbox Studioが利用できるようになった。
もうひとつバーチャルファーストの実現において見逃せないのが、「同期」、「非同期」という考え方を持ち込み、これを使い分けるルールを社内に徹底したことだ。
Dropboxでは、オンライン会議や電話といった濃密なコミュニケーションを行えるものの、相手の時間を占有することになる仕事の仕方を「同期」とし、メールやチャット、文書などによるコミュニケーションにより、相手に対して、時間に柔軟性を持たせた仕事ができる環境を「非同期」と定義している。
バーチャルファーストでは、コミュニケーションの基本を「非同期」とし、本当にリアルタイムでの対話が必要な場合にだけミーティングを設定することを社員に奨励。「コラボレーションコアタイム」を設定し、お互いに最適な時間に同期することにした。また、従業員が同期と非同期を組み合わせた仕事のリズムを作ることができるように力を注いだほか、先に触れたDropbox Studioを「同期」作業を効率よく行う場所としての役割を担うことを明確に定義した。
社員を対象にした調査では、63%が「基本は非同期」を受け入れているという。
さらに、こうしたバーチャルファーストの活動を支援するために、「バーチャルファーストツールキット」を公開したことも特徴的な取り組みだ。
バーチャルファーストツールキットは、リモートワークに関する様々な原則をまとめたガイドで、バーチャルファーストの実践から学んだ知見に基づいて随時更新し、この内容を広く公開している。
この連載の記事
-
第606回
ビジネス
テプラは販売減、でもチャンスはピンチの中にこそある、キングジム新社長 -
第605回
ビジネス
10周年を迎えたVAIO、この数年に直面した「負のスパイラル」とは? -
第604回
ビジネス
秋葉原の専門店からBTO業界の雄に、サードウェーブこの先の伸びしろは? -
第603回
ビジネス
日本マイクロソフトが掲げた3大目標、そして隠されたもう一つの目標とは? -
第602回
ビジネス
ボッシュに全株式売却後の日立「白くまくん」 -
第601回
ビジネス
シャープらしい経営とは何か、そしてそれは成果につながるものなのか -
第600回
ビジネス
個人主義/利益偏重の時代だから問う「正直者の人生」、日立創業者・小平浪平氏のことば -
第599回
ビジネス
リコーと東芝テックによる合弁会社“エトリア”始動、複合機市場の将来は? -
第598回
ビジネス
GPT-4超え性能を実現した国内スタートアップELYZA、投資額の多寡ではなくチャレンジする姿勢こそ大事 -
第597回
ビジネス
危機感のなさを嘆くパナソニック楠見グループCEO、典型的な大企業病なのか? -
第596回
ビジネス
孫正義が“超AI”に言及、NVIDIAやOpen AIは逃した魚、しかし「準備運動は整った」 - この連載の一覧へ