日立物流の売却で、構造改革には一段落
これまでの構造改革の基本姿勢は、グローバルで戦える体制づくりとともに、デジタル化の流れとは異なる事業を連結対象から外すこと、そして、社会イノベーション事業にフォーカスした体制に移行することであった。
小島社長兼CEOは、「社会イノベーション事業に適した形を作るための構造改革を進め、それが、今回の日立物流の売却でひと区切りがついた」と語る。
そして、2021中期経営計画の成果は、最終年度となった2021年度(2021年4月~2022年3月)連結業績にも表れている。売上収益が前年比17.6%増の10兆2646億円、調整後営業利益は同49.1%増の7382億円、EBITは同0.1%増の8509億円、継続事業税引前利益は同0.6%減の8393億円、当期純利益は同16.3%増の5834億円。調整後営業利益率は7.2%、ROICは7.7%。半導体不足や部材価格高騰、COVID-19の再拡大など、厳しい事業環境ではあったものの増収増益を達成。当期純利益は過去最高を記録するという力強い内容になった。
こうした成果をもとにして、2024中期経営計画がスタートすることになる。
小島社長兼CEOは、「10年間の構造改革のあとを受けてスタートする2024中期経営計画は、デジタル、グリーン、イノベーションでグローバルに成長する企業へのモードチェンジになる」と繰り返し強調。「それに向けて、サステナブル経営の深化、Lumadaによる高収益化、キャッシュの創出と還元、グローバルリスクマネジメントにフォーカスして経営する」と述べた。
また、「上場子会社の再編は終了したが、Adjusted EBITA率で10%に届かないと判断した事業については入れ替える。ポートフォリオを常に見直していく経営を進める。収益率が5~6%の事業はついては、この2~3年で徹底的に手を入れ、資産規模が大きい事業で、相対的に低収益となっている事業の改善にも取り組む」と、構造改革の手を緩めない姿勢もみせている。
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