フランス生まれの革靴です
革靴が欲しい。30代半ばになって、そう思うわけです。
「30代にもなって革靴の一つも持っていないのか?」と思われるかもしれませんが、さすがにいい大人ですし、冠婚葬祭のためのものや、ビジネスシューズの類などは持っています。コロナ禍で履く機会が激減しましたが……。
そうではなくて、もっと幅広く使える、それでいてコーディネートを選ばない、大人が履く革靴がほしい。つまり、スニーカーのようにも使えて、ビジネスカジュアルぐらいでも履けるな……ぐらいの。カジュアル感のある革靴と言い換えてもいいかも。歩きやすいと、もっとよい。ついでに、雨や汚れに強ければ言うことはない。
そこで、パラブーツを選びました。購入したのは定番モデルの「シャンボード」です。7万1500円。安くは、ない。
パラブーツは、フランスで創業された老舗シューズブランド。1908年にレミー・アレクシス・リシャールがフランスでオーダーメイド靴の工房を開いたのが始まり。1910年にリシャールは公証人の娘であるジュリエット・ポンヴェールと結婚、リシャール・ポンヴェール(Richard-Pontvert)社を設立します。
リシャールは、天然のラテックスをブラジルのパラ港から輸入し、ラバーソールをあしらった靴の生産を始めました。“パラ”ブーツという名はそれに由来し、1927年には「パラブーツ」を商標登録しています。現在でも「Made in France」を貫くブランドです。
シャンボードはパラブーツの製品の中でも人気のモデルで、外羽根式のUチップの革靴です。Uチップの革靴は狩猟やゴルフ用に使われてきたこともあり、堅牢な作りの製品が多い。Uチップの靴に外羽根式が採用されているのも、脱ぎ履きがしやすいから。筆者の探していた「履きやすい」革靴にぴったりではありませんか。
実はこのシャンボード、定番モデルではありますが、デビューは意外に遅く、1987年です。筆者が1986年生まれなので、自分が生まれたあとに登場したモデルになります。これはちょっと驚きました。なにしろ定番と言われていたので、もっと歴史があるものかと……。
似たようなデザインの靴の定番としてはジェイエムウエストン(JM Weston)の「ゴルフ」もありますが、価格が倍ぐらい違いますし、どちらかというとラフに履くので、シャンボードのほうが自分に合っているかな、と……。
ちなみにシャンボード(Chambord)の名前は、フランソワ1世のために建てられたという「シャンボール城」のある地名に由来。なので、「シャンボード」はかなり英語読みで、フランス語っぽく読めば「シャンボー(ル)」という感じです。
以前からパラブーツには憧れがあったのですが、安いものではありません。「他に革靴を持っているし、スニーカーも履くし」などと、ずっと躊躇していました。
ところがある日、社内チャットで、編集部きっての伊達者・貝塚さんと、ひょんなことで靴の話で盛り上がりました。そこでお互いにパラブーツを欲しがっていることがわかり、「いいですよね」「買いたいですよね」と盛り上がって、物欲が急上昇。やっぱり買うか……というメンタリティーに。
思い立ったが吉日とも言いますし、2022年4月にオープンしたパラブーツ丸の内店を訪れ、店員さんに話を聞きながらサイズを試し(試着すると「欲しい度」が3倍ぐらいになる気がする)、その勢いで「えいや!」と買いました。ここで迷うと、もう、ずっと悩み続ける気がして……。このあたりの購買に対する勢いのよさは、アスキー編集部で培われたものだと考えております。
タフな作りのノルウェージャン製法
シャンボードの最大の特徴は、「ノルウェージャン製法」で作られていることです。この製法、寒冷地向けの靴の製法として、北欧で発達したとされるためにその名があります。かつては配達員や工員などに愛用されるほどタフな作りがウリで、登山靴を手がけていた歴史もある、パラブーツらしい製法です。
実は、ノルウェージャン製法の定義は、メーカーによって微妙に異なるようです。パラブーツの場合、まずアッパーとインソール(中底)とL字のウェルト(アッパーとソールに縫い付ける、靴の周りを縁取るような帯状の革)をすくい縫いし、さらにウェルトとアウトソール(本底)を出し縫いする製法を指します。
つまり、ウェルト部分に、(アッパーを貫通して)インソールと、アウトソールを縫い付けているため、2本のステッチが入ることになります。イメージとしては、アッパーと靴底の隙間にレザーテープを縫い付けた……みたいな感じ。
このノルウェージャン製法により、アッパーとアウトソールが直接縫い合わされていないことも手伝って、縫い目から雨水が染み込む……などということがなくなります。無骨な外見になるだけではなく、堅牢性、防水性も高まる製法です。
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