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見た目も味もそのままに、柔らかさを変える調理家電「デリソフター」はなぜ生まれた

2022年06月14日 18時00分更新

文● 貝塚/ASCII

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一見すると普通のステーキだが、実は違う(デリソフター公式サイトより)

ゲームチェンジャーカタパルトの狙い

 パナソニックによる「Game Changer Catapult(ゲームチェンジャー・カタパルト)」は、同社の技術や社内での部署をまたいだコラボレーション、さまざまな業種の社外の企業とのコラボレーションを通じて、新規事業を創出しようとする試みだ。名称は、「ゲームチェンジャー」を世の中に次々と打ち出す「発射台(カタパルト)」という意味から名付けられた。

 事業を統括するパナソニック 事業開発センター ゲームチェンジャー・カタパルト推進部ビジネスインキュベーション課 課長の杉山覚氏は、その立ち上げについて、「これまでのビジネスのやり方では生き残れないという危機感を持ち、2016年に立ち上げました」と話す。

 「これまでのビジネスは大量生産・大量消費が前提になっていますが、今後の消費を牽引するZ世代は、環境問題への貢献やサステイナブルな事業への関心が強く、経済的価値だけでなく社会的価値も実現することが当たり前の社会になりつつあります。そんな中、新規事業やコラボレーションを通じて、新しい時代のビジネスに対応できる人を育てたいという目的もあるんです(杉山氏)」

 事業化の一つのオプションとして、米国のベンチャーキャピタルスクラムベンチャーズと、官民系ファンドINCJと立ち上げた合弁会社「BeeEdge」からの出資を受けて、カーブアウト型で会社を設立するスキームがあり、これまで3社の事業会社を設立してきた。

 その中の一社であるギフモ株式会社は、ゲームチェンジャー・カタパルトから生まれ、BeeEdgeからの出資を受けて立ち上がった企業だ。

見た目はそのまま、柔らかく

 パナソニック 事業開発センター ゲームチェンジャー・カタパルト推進部推進部 ビジネスインキュベーション課 主務の向奥裕基氏は、「デリソフターは、『誰1人取り残されない世界の実現』が開発の根底にあります。誤嚥を防止するためとはいえ、高齢者1人だけがペースト状の料理を食べているのはどうか、といった考えからスタートしました」と話す。

デリソフター。炊飯器のような見た目で、キッチンに置いても違和感は一切ない

 そう、デリソフターは、高齢者や、咀嚼機能、誤嚥機能にハンデキャップを抱える人などが、そのままでは食べにくい料理を、やわらかく調理してくれる製品だ。練り物や貝類など、調理に対応しない食品はいくつかあるものの、調理する対象は基本的に自由で、手料理だけでなく、冷凍食品などにも対応。「デリカッター」と呼ばれる剣山のようなパーツで食材に孔を設け、高加圧でスチーム調理をすることで、料理のオリジナルの見た目と味をなるべく保ったまま、歯茎や舌でつぶせるほどにやわらかくしてくれる。

デリソフターで調理したステーキの例。フォークがそのまま沈んでしまうほど柔らかい(デリソフター公式サイト)

 「当初は、パナソニック社内の有志メンバーからなるケア家電サークルを作り、社外の管理栄養士さんなども含めた、20名ほどのチームで、ブラッシュアップをしながら開発を進めました。現在は、ギフモとしてパナソニックの技術を借りながら、サービスを展開しています(向奥氏)」

 デリソフターは、4万7300円で一般向けにも販売されているほか、養護老人ホームや飲食店などでも導入された実績がある。味も見た目もそのまま、やわらかさだけが違う。以前、それは叶わない夢だったかもしれない。しかし、ゲームチェンジャー・カタパルトを発端としてデリソフターが生まれたいま、誰にでも実現ができるのだ。

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