アップルの新情報に対するリサーチで高名なアナリスト、ミンチー・クオ氏が、先週自身のツイートで、今年度のアップル「AirPods (第3世代)」製造見通し予測を公表した。それによると今年度の第2から第3四半期にかけてのAirPods(第3世代)の製造注文が3割強減るだろうと予測している。クオ氏によると、これはアップルの販売戦略の問題で、AirPods(第3世代)が発売開始されてからも旧モデルのAirPods(第2世代)がより安価なモデルとして併売されているからだという。そのためクオ氏は今年出ると予想されているAirPods Pro(第2世代)が登場しても、現行のAirPods Proは併売されないだろうと予測している。
AirPods 3 orders for 2-3Q22 have been cut by 30%+. Due to the failed product segmentation strategy, demand for AirPods 3 is significantly weaker than for AirPods 2. AirPods Pro may get discontinued after Apple launches AirPods Pro 2 in 2H22 to avoid repeating the same mistake.
— 郭明錤 (Ming-Chi Kuo) (@mingchikuo) April 5, 2022
このニュースを読んで考えさせられたのは、AirPods(第3世代)の需要がなぜ低いのかということだ。コロナ禍によるユーザーの購買力低下など考慮しなければならないことはあるが、実のところ第3世代と第2世代の違いがユーザーにうまく訴求できていないためではないだろうか。
第3世代と第2世代の違いはいくつかあるが、最も大きいものは「空間オーディオ」および「ダイナミックヘッドトラッキング」対応である。アップルは最近FaceTimeの空間オーディオ対応まで特許出願している。空間オーディオを全面的に押し出そうとしているアップルが、エントリークラスのイヤホンでも空間オーディオ対応を進めているのは当然だ。
しかし、ユーザーの方はそれに対してアップルが当初予想していたものよりも低い反応しか示していないわけだ。
この理由としては、先に空間オーディオ対応を果たしたAirPods Proを所持しているユーザーが多いということもあるだろうが、空間オーディオ自体にそれほどユーザーを惹きつける魅力がないもいう推測もできる。空間オーディオには「これぞ」というキラーコンテンツがまだ見当たらない。コンテンツとしての魅力がまだ低いとも言える。ユーザーに対しての空間オーディオの付加価値はまだまだ発展途上と言えるだろう。
先日、ミュージシャンのイエ(カニエ・ウエスト)が発表した「Stem Player」は自らミキシングをやり直せるといういままでにない付加価値を打ち出し、音楽鑑賞の新しい可能性を見せてくれたと思う(関連記事)。ミンチー・クオ氏は今年発売を予想されるAirPods Pro(第2世代)に関してはロスレスオーディオをサポートする可能性を示唆しているが、アップルが音楽鑑賞における魅力ある付加価値をどうやって広げていくかは注目していきたい。
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