久しぶりに今週はNVIDIAの話だ。前回のロードマップアップデートが連載581回なので半年ぶりである。なぜこんなに空いたかと言えば、新製品がまったく出てこないのが理由である。今年1月に発表になったGeForce RTX 3080 12GBは新製品と言えば新製品だが、基本的にはGeForce RTX 3080 Tiのダウングレード版ということを考えると、バリエーションチェンジの範疇と言えよう。
そんなNVIDIAであるが、3月23日からオンライン開催となったGTC 2022の基調講演で、次世代GPUであるHopperが発表になった。実際にはHopperだけでなく、ものすごく盛り沢山の発表があり、これを全部カバーするのは1本の記事では到底不可能なのだが、現状ではまだ詳細が明らかにされないGraceなどは後回しにして、一番の目玉とでもいうべきHopperことNVIDIA H100 GPUについて今回は説明しよう。
NVIDIAが次世代GPUの“Hopper”こと「GH100」を発表
まずはJensen Huang CEOの基調講演から、Hopperに話を絞って説明しよう。Hopperというコード名で開発されたGH100は、HBM3を6つ搭載するやはりお化けチップであった。
性能はFP32/FP64で60TFlops、AI向けのFP8では4000TFlopsに達する(FP8の話は後述)。TSMCのN4をベースとした、カスタム版の4Nプロセスで製造され、トランジスタ数は800億個に達する。ちなみにダイサイズは814mm2で、おそらくEUVステッパーのReticle Limit(露光できる寸法の限界)ギリギリなのだと思われる。
またこのスライドではNVIDIA H100となっているが、正式にはチップの名称がGH100、これを搭載したモジュールがH100である(わりとこのあたりがNVIDIAの資料を見ているといい加減なのがアレだが)。
新機能として挙げられているのはTransformer Engine、第2世代のMulti-Instance、Confidential Computing、第4世代NVILink、DPX命令セットなどであるが、これはこの後もう少し詳細な説明があるのでそちらで説明したい。
このGH100を搭載したSXMモジュールであるH100は1個あたり700Wの消費電力とされる。このH100を8つ搭載したのがHGX H100となる。そのHGX H100にCPUやNetwork、Storageなどを追加したのがDGX H100である。
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