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抗がん剤副作用を軽減させる薬剤、データ科学で発見=岡山大など

2022年03月20日 07時44分更新

文● MIT Technology Review Japan

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岡山大学などの研究グループは、抗がん剤オキサリプラチンの副作用である末梢神経障害を軽減する薬剤を、ビッグデータ解析などのデータ科学の手法を用いて発見した。これまでオキサリプラチン誘発末梢神経障害は、発症予測が困難で患者数も少なかったため、ヒトにおける治療薬候補の有効性評価が難しく、有効な治療薬が見つかっていなかった。

岡山大学などの研究グループは、抗がん剤オキサリプラチンの副作用である末梢神経障害を軽減する薬剤を、ビッグデータ解析などのデータ科学の手法を用いて発見した。これまでオキサリプラチン誘発末梢神経障害は、発症予測が困難で患者数も少なかったため、ヒトにおける治療薬候補の有効性評価が難しく、有効な治療薬が見つかっていなかった。 研究グループはまず、約770万件の薬剤性副作用報告を集積している米食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システムデータベースから、オキサリプラチンと併用したときに末梢神経障害を軽減する既存承認薬を検索。さらに、米国立衛生研究所(NIH)が提供している遺伝子発現データベースから、オキサリプラチン誘発末梢神経障害に関連した遺伝子発現変化を打ち消す既存承認薬を探索した。これらの2つのデータベースの解析結果から、高脂血症治療薬であるシンバスタチンが、オキサリプラチン誘発末梢神経障害の新たな治療薬となる可能性が見出された。 その後のラットを使った動物実験では、シンバスタチンが神経軸索の編成を抑制し、オキサリプラチン投与によって生じる痛覚過敏反応を有意に軽減することが確認された。さらに、徳島大学病院が保有する過去の電子カルテデータの分析からも、オキサリプラチンにスタチン系薬剤を併用している患者群は、末梢神経障害の発現頻度が有意に低いことも明らかになったという。 研究成果は3月1日、「バイオメディシン・アンド・ファーマコセラピー(Biomedicine & Pharmacotherapy)」誌に掲載された。

(笹田)

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