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世界でも日本でも「オフィス勤務とリモート勤務の組み合わせ」が主流に、そこで考えるべきポイントは?

「ハイブリッドワークで経営者が注意すべきは『公平性』」Slack最新調査

2022年01月26日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 Slackは2022年1月25日、同社が主宰するコンソーシアムのFuture Forumがまとめた四半期調査レポート「Future Forum Pulse」を公開した。オフィス勤務とリモート勤務を組み合わせた「ハイブリッドワーク」が世界中で主流の働き方となっており、従業員体験の改善にも寄与している一方で、従業員に対する経営層や管理者からの「不公平/不平等な扱い」のリスクも高まることに警鐘を鳴らしている。

 なぜハイブリッドワーク環境下ではそうした懸念が生じるのだろうか。それも含めた今回の調査レポートのポイントについて、Slack アライアンス本部 シニアディレクターの水嶋ディノ氏に話を聞いた。

今回の四半期(第5回)レポートの概要と要旨

Slack アライアンス本部 シニアディレクターの水嶋ディノ氏

9割超の回答者が「働く時間(時間帯)の柔軟性」を求める

 Future Forumは「未来の働き方を考えるコンソーシアム」として、Slackのほかボストンコンサルティンググループ(BCG)、ハーマンミラー、Management Leadership for Tomorrow(MLT、米国非営利組織)により創設された組織。企業が人材獲得競争を勝ち抜くためには、働く環境の「柔軟性」「インクルージョン」「透明性」を実現することが重要であると提言している。

 今回発表されたのは、そのFuture Forumが実施した5回目の調査レポートとなる。米国、日本、オーストラリア、フランス、ドイツ、英国の、1万人以上のナレッジワーカーに対して、2021年11月に調査を実施した。米国が約5000人、その他の5カ国がそれぞれ約1000人ずつという内訳となる。

 今回はまず、ハイブリッドワークが世界中で主流の働き方になっていることが報告されている。調査対象となったナレッジワーカーの過半数(58%)が、オフィス勤務とリモート勤務を組み合わせたハイブリッドワークを実施している。さらに、調査対象者全体のおよそ7割(68%)はハイブリッドワークを望んでいるという結果も出ている。

 「未来の働き方は、リモートワークかオフィスワークかという『選択』ではなく、それらの『両立と使い分け』であることが明らかになったと考えている。半数以上が実際にハイブリッドワークを実施しており、実施していない人でもそれを希望する人が多い。両方を使い分けたいという人が主流になっている」(水嶋氏)

 ハイブリッドワークを望む傾向は、日本においても強まっている。ハイブリッドワークが「最も理想的な働き方」だと回答した人は69%で、前回調査(2021年8月)の52%から大きく増えている。ちなみに今回の調査では、実際にハイブリッドワークを行っているという日本の回答者も過半数(52%)を占めた。

調査対象者全体の過半数がハイブリッドワークを実施、また約7割がそれを希望している。日本国内でもハイブリッドワークを望む声は強く、その理由の1位は「通勤時間の削減」

 さらに強かったのが「働く場所と時間の柔軟性」に対する要望だ。柔軟な働き方を望む傾向は前回調査でも明らかになっていたが、引き続き高いニーズが見られ、水嶋氏は「ナレッジワーカーの働き方として、柔軟な働き方が“標準”になりつつある」と説明する。

 今回の調査では、全回答者の78%が「働く場所の柔軟性が欲しい」と回答したほか、「働く時間(時間帯)の柔軟性」に至っては95%もの回答者がそれを望むとしている。日本でもこの傾向は変わらず、働く時間の柔軟性が重要だとした回答者は92%と、前回調査の84%からさらに増え、9割を超えている。

 「『日本は働き方に対する意識が他国と異なる』という先入観を持ちがちだが、われわれのデータからは、実際にはグローバルとそう変わらない傾向であることがわかる」(水嶋氏)

 なお、働き方に柔軟性を求める声は「過小評価されてきたグループ」、マイノリティグループにおいて特に顕著だと、同レポートでは指摘している。「週3日以上リモートワークで働きたい」という回答者は男性(46%)より女性(52%)が多い。また米国調査におけるハイブリッドワークまたは完全リモート勤務を好む回答者の割合は、白人(75%)よりもヒスパニック/ラテン系(86%)、アジア人/アジア系アメリカ人(81%)、黒人(81%)が高いという結果だった。

働く場所や働く時間の柔軟性を求める声は強い。特に働く時間については、日本でも9割超の回答者が重要だと答えている

 従業員が働くうえでの満足度、従業員体験という観点では、全般にスコアの改善が見られ、Future Forumではハイブリッドワークの増加がこれに寄与していると分析している。前回調査比で「全体的な満足度」は12%、「ワークライフバランス」は15%、「仕事関連のストレスや不安」は25%、それぞれ高いスコアを記録している。

 この従業員体験スコアを働き方の種別ごとに見ると、従業員の満足度の高さは完全リモート勤務、ハイブリッドワーク、完全オフィス勤務の順となっている。完全オフィス勤務の従業員においては、特に「ワークライフバランス」や「仕事上のストレスや心配事」のスコアが低い傾向が見られる。

働き方種別ごとに集計した満足度(従業員体験スコア)

「近接性バイアス」による“えこひいき”のリスクに注意

 冒頭でも触れたとおり、今回の調査レポートでは、ハイブリッドワークで異なる働き方をする従業員に対する「不公平な扱い」のリスクについて言及し、経営層や管理職への注意を促している。

 同レポートでは、不公平な扱いが生じる原因として「近接性バイアス(Proximity Bias)」を指摘している。これは、じかに接する時間が長いほど、その相手に対して肯定的/好意的な印象を持つという人間の心理的な偏り(バイアス)を指す言葉だ。

 そして「現在、週3日以上オフィスで仕事をしている」経営層は71%、一般従業員は63%と、経営層がオフィスに出勤している割合は高い。

 「つまり経営層が、オフィスに出勤して一緒に働いている従業員のほうを無意識に“えこひいき”してしまうリスクがあるということ。近接性バイアスは人間の本能のようなものであり変えられないが、そうしたバイアスに影響を受けているという自覚は必要だ」(水嶋氏)

 たとえば今回の調査では、オフィス勤務をする従業員(完全オフィス勤務またはハイブリッド)の割合として、男性が84%、女性が79%という結果が出ている。同様に、子どもをもつ回答者のほうがリモート勤務(完全リモート勤務またはハイブリッド)をしている割合が高い。経営層の近接性バイアスによって、こうした従業員が不当に低い評価を受けるなどの不利益を被るリスクがある。

 もっとも、こうした危険性に気づく経営層も増えているという。今回の調査では、ハイブリッドワークの導入における経営層の課題として、41%がこの近接性バイアスの問題を挙げた。

近接性バイアスのリスクに気づく経営層も増えつつある

ハイブリッドワークの導入を機に見直したい「ルールと企業文化」

 Future Forumでは、ハイブリッドワークという新しい働き方を導入するこの機会に、業績評価やダイバーシティ&インクルージョンなどの経営施策を見直す、あるいは一から作り直すことを提言したうえで、「公平な職場環境」の実現に向けた指針を以下のように示している。

・具体的な行動で示す … ハイブリッドワークのための原則と行動指針を明確に定めたうえで、行動のガイドラインをモデル化する。

 「たとえば、経営層や管理職のオフィス勤務日数を『週3日まで』などと制限する。リモート参加者が1人でもいる会議は、オフィスの参加者も含め全員オンラインで参加する。会議や打ち合わせに使う時間帯を○時~○時と定めて、そのほかの時間帯は各自が柔軟に働けるようにする。Slackのような非同期のコミュニケーションを優先するようにし、会議や電話といったリアルタイム(同期)のコミュニケーションが本当に必要かどうか、その都度検討する。こうしたルールづくりが考えられる」(水嶋氏)

・透明性の高いコミュニケーションで信頼を構築する … 迅速でオープンなコミュニケーションを行うとともに、従業員からのフィードバックを積極的に引き出す。

 「上司から部下に対して業務指示をするだけでなく、働くうえでのサポートがきちんとできているかどうか、支援が必要なことは何かないかなど、部下からのフィードバックをきちんともらうこと」(水嶋氏)

・マネージャーに新たなスキル教育を行う … 従業員の“監視役”ではなく、寄り添う“コーチ”としてふるまえるマネージャー、個々の従業員が働いた時間ではなく「成果」をきちんと評価できるマネージャーを育成する。

Future Forumが考える、公平な職場環境を実現するための指針

 水嶋氏は、こうしたルールやガイドラインは単に策定するだけでなく、実践して企業文化として根付かせることが大切だと強調した。

 「ルールを作り、経営層も含めてそれを実践していかなければ、働き方の変革や職場の公平性の維持といったことはできない。企業文化から変えていくという意識を持って、新しい働き方の実現に取り組んでいただきたい」(水嶋氏)

調査結果は同社ブログでも紹介されている(画像はSlackブログより

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