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SDGsへの意識が高まる中、成長を続けるチェンジ・ザ・ワールド

環境価値という新しいモノサシを提案する酒田発の「太陽光発電所 as a Service」

2021年12月27日 10時30分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 太陽光発電所を1ワット単位でスマホから購入できる「CHANGE」を展開するチェンジ・ザ・ワールド。以前、ユニークな酒田市のベンチャーとして取材したときは組織も小さかったが、今ではサービスが急成長し、従業員も40名規模になったという。経済的な利益とは異なる環境価値という新しいモノサシの提案に挑む同社のサービスと現状について広報担当の村上 怜夏氏に聞いた。

チェンジ・ザ・ワールド 経営企画室 村上 怜夏氏

アプリから1ワット単位で太陽光発電所を購入できる「CHANGE」

 山形県酒田市に本社をかまえるチェンジ・ザ・ワールドは2014年に設立。「社会的で革新的な事業に挑戦し、より良いカタチに「世界を変える」ことをミッションとし、太陽光発電所の建設・運用とシェアリングサービスを手がけ、地球温暖化、耕作放棄地の増大、農地の減少といった社会課題の解決に取り組む(関連記事:酒田市のスタートアップが目指す「新しき地方ITの道と光」)。2021年10月末には2億円の資金調達を実施しているほか、2021年11月にはソニー銀行が提供する投資型クラウドファンディングのプラットフォーム「Sony Bank GATE」においても3000万円の募集金額を達成している。

 同社の中心事業は個人がスマホから1ワット約300円でFIT対応の太陽光発電所を購入できる「CHANGE(チェンジ)」だ。購入後は月に1度の売電収入が分配され、いつでも売却できる。また、保有している太陽光発電所の発電実績やCO2削減量はアプリから簡単に確認できる。カーボンニュートラルへの貢献と投資商品としての性格を合わせ持つユニークなサービスだ。

簡単な画面操作で専門知識なしでも利益がすぐにわかる

 サービス開始の2017年7月から4年が経つが、ユーザー数はすでに1万6000人を突破。CHANGEで太陽光発電所を購入するとANA・JALマイルが付与されるという連携がスタートしたことで、この1年でユーザー数は急増し、累計の販売額も18億円を突破した。「山形県の小さなスタートアップですし、今までにない事業をやっていたので、なかなか信用も得られませんでした。その点、ANA・JALという二大航空会社との提携はとても大きかったです」と村上氏は語る。

 そして、環境負荷の軽減やSDGsへの取り組みは個人だけではなく、法人や自治体にも拡がっている。大手企業では環境対応の担当者やSDGs対応の部門も珍しくなくなった。太陽光発電所の導入を進めたいという一般企業の声に応えたのが、法人向けの再生可能エネルギー導入サービスである「CHANGE for Biz」だ。

 CHANGE for Bizでは太陽光発電所の設計、調達、建設から、保守、運用、ソーラーシェアリングまでをワンストップで提供する。各法人は発電した電気を別の場所で使うために一般送電網を用いる「自己託送」や、発電した電力を電気小売事業者に販売し、その事業者から発電設備とは別の場所で電力供給を受ける「オフサイトバーチャルPPA」などさまざまな方法を提案しているという。

 ユーザー企業であるデジタルマーケティング企業のメンバーズはCHANGE for Bizを導入して、事業活動で用いる電力を自社発電した再生可能エネルギーでまかなうことを目指している。

太陽光パネルは耕作放棄地へ ガチ営農法人が農業を担当

 チェンジ・ザ・ワールドが建設した太陽光発電所は252区画(2021年10月時点)におよぶ。北は北海道、南は鹿児島県まで総面積は24万7397㎡、総パネル容量は1万6221kW。この大部分はソーラシェアリングで、太陽光発電所がいわゆる耕作放棄地に建設されているのが特徴だ。

 耕作放棄地とは、以前耕作されていた土地でありながら、過去1年以上作物を栽培せず、しかも耕作する意思のない土地を指す。農業人口の減少とともに耕作放棄地は年々増加の一途をたどっており、2015年時点での農水省の調査では42.3万haを記録している。チェンジ・ザ・ワールドの太陽光発電所は、この耕作放棄地に建設されており、太陽光パネルの下で農業を行なっている。「メンバーズ様も耕作放棄地を活用するという点で弊社のソーラーシェアリングに興味を持っていただいたようです」(村上氏)。

 そして、耕作放棄地の選定や農作物の生産までを手がけているのが、グループの営農法人ララキノコになる。通常、大手企業でこうした農作業を事業として手がける場合は、あくまで事業部に所属したままでボランタリーに行なうことが多いが、ララキノコはメンバーの多くが元々農業経験者なので、この道のプロだ。「農地に再生する過程もこだわっており、化学肥料を一切使用せずに土を肥やしています」と村上氏は語る。

耕作放棄地の農地を再生し、太陽光パネルを設置

ソーラーシェアリングで育った茗荷の収穫風景

 こうして作られた野菜は「ソラベジ」と名付けられ、栽培した地域の道の駅で販売したり、CHANGEユーザーにプレゼントされる。また、日本郵便が販売している「むつぼしいも」にも使用されているという。

売電収入がないのに完売した「グリーンワット」のインパクト

 そして、2021年7月に発表された「グリーンワット」は、環境貢献に特化した太陽光発電所サービスになる(関連記事:太陽光発電所を誰でも簡単に購入できる新サービス「グリーンワット」)。1口500円から購入できる敷居の低さはCHANGEと同じだが、対象が非FITの太陽光発電所なので、売電収入は発生しない。還元されるのはCO2削減のような「環境価値」で、購入した太陽光発電所は購入時と同額で売却できる。

「グリーンワット」の提供も開始

 グリーンワットが誕生した背景は、2017年の改正FIT法の施行が挙げられる。2012年以降、固定価格での電力の買い取りが開始したことで、順調に増えた太陽光発電所だが、FIT法の改正によって売電価格は下落している。これにともなって太陽光発電所の設置件数も伸びが鈍化しているというのが現状だ。FIT法に依存せず、いかにグリーンエネルギーを増やすかという方法を考えた末、生まれたのが独自の環境価値を還元するグリーンワットになる。

 個人向けに金銭的なリターンではなく、環境価値を還元するというユニークなサービスだったが、7月21日の21時から販売を開始し、約14時間後には完売。既存オーナー、新規オーナー含め、1612名のグリーンワットオーナーが誕生し、SNSでも多くの反響を得たという。特に大きかったのは、既存のCHANGEユーザーの高い支持だった。「CHNAGEユーザーのうち約3割の購入額は1000円~1万円以下です。売電収入を考えれば、それほど大きくないにもかかわらず、このサービスを選んでいただいている段階で環境やSDGsの意識がとても高いユーザーだと思います」(村上氏)。

 経済的な利益と異なる環境価値というSDGs時代の新しいモノサシが高い支持を得たことに、サービスの大きなインパクトを感じる。今後はより広範な環境アクションのプラットフォームの提供を進めていくという。

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