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Veeamが解き放つ“データの力” 第14回

“守り”から“攻め”への転換、モダンデータ保護ビジョンを実現する「Veeamプラットフォーム」とは?

Veeam最新版「VBR V11a」から、さらにその先の未来を考える

2021年12月20日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

提供: Veeam Software

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 2021年10月にVeeam Softwareがリリースした最新版製品「Veeam Backup & Replication V11a(VBR V11a)」。VBR V11aではパブリッククラウド対応の強化、対応プラットフォームの拡充、コンテナバックアップの統合といった機能強化点がある。

 だが実は、今回の新機能追加はVBRという単体製品の強化だけを意味するものではない。Veeamが考える「モダンデータ保護」のビジョンや、それを実現する「Veeamプラットフォーム」構築を進めるうえでも重要なマイルストーンであるという。

 Veeamが目指すモダンデータ保護は旧来のデータ保護とどう違うのか、またVeeamプラットフォームの将来像とはどんなものなのか。今回はそうした疑問を、同社 シニア・システムズ・エンジニアの斉藤 乾氏にぶつけてみた。

Veeam製品で構成される「Veeamプラットフォーム」の全体像

最新版「Veeam Backup & Replication V11a」の注目ポイント

 まずはVBR V11aのアップデートについて簡単におさらいしておこう。多数の強化点があるが、前述したとおり、注目すべきポイントはパブリッククラウド対応の強化、対応プラットフォームの拡充、コンテナバックアップ統合の3点である。

 まずパブリッククラウド対応においては、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloudという主要なハイパースケーラー3社への対応が強化された。特に今回、Google Cloudへの対応が進んだことで、いずれのパブリッククラウド配下にあるデータでも一元的に管理できる“マルチクラウドデータマネジメント”環境が実現している。

 「Google Cloudについては、たとえば仮想マシンをCompute Engine上へダイレクトにリストアできる機能が追加されました。また、これまではGoogle Cloud Marketplaceからデプロイする必要があった『Veeam Backup for Google Cloud Platform(GCP)』が、VBRの管理コンソールからでも展開できるようになっています」

Veeam Software シニア・システムズ・エンジニアの斉藤 乾氏

 各クラウドが提供するクラウドネイティブサービス(PaaS)への対応も拡充されている。具体的には、AWSの「Amazon EFS」ファイルシステム、Azureの「Azure SQL」データベースのネイティブバックアップ/リストアにも新たに対応した。加えて、Veeam Backup for AWS/Azure/GCPのバックアップ先として、アーカイブ層(「Amazon S3 Glacier」など)のクラウドストレージもサポートしている。

VBR V11aではクラウド対応がさらに強化された

 対応プラットフォームの拡充については、VMware ESXi、Hyper-V、Nutanix AHVに続いて、新たに「Red Hat Vitrualization(RHV)」ハイパーバイザへの対応を開始したことが注目される(現在はパブリックベータとして提供)。そのほか、最新OSである「Windows Server 2022」や「Windows 11」などにも対応済みだ。

 コンテナバックアップについては、買収によりVeeam傘下となったKasten by Veeamが提供する「Kasten K10」とVBRの統合作業がスタートしている。VBR V11aではまず、VMware環境に展開されたKubernetesクラスタのパーシステントボリュームにおいて、バックアップ先としてVBRリポジトリが選択できるようになっている。

RHVをはじめとして対応プラットフォームも大幅に拡張

“攻め”のデータ保護を実現する「モダンデータ保護」ビジョン

 こうしたVBR V11aのアップデートは、個別に見ても魅力的なものと言える。ただしその背景には、Veeamが考えるモダンデータ保護ビジョンと、それを実現するVeeamプラットフォームの構築という方針がある。こちらに目を向ければ、Veeamの目指す未来がよりはっきりと見えてくるはずだ。

 まず、モダンデータ保護ビジョンとはどんなものなのか。

 Veeamでは、モダンデータ保護は「5つの要素」で構成されると説明している。旧来のデータ保護が対象としていた重要データの「バックアップとリカバリ」に加えて、ワークロードをいつでも最適な環境に移行できる「クラウドモビリティ」、パフォーマンスの「モニタリングとアナリティクス」、多様な環境での復旧やマイグレーションを統合する「オーケストレーションと自動化」、ランサムウェアなどのサイバー脅威から保護する「ガバナンスとコンプライアンス」も同時に実現する。

モダンデータ保護を構成する「5つの要素」

 斉藤氏は、このビジョンには「2つのモダナイゼーション(近代化)」を実現することによって「利益創出」や「DX」を可能にする狙いがあると説明する。つまり、データ保護を“守り”だけでなく“攻め”のビジネスにも利用できるようにするという意図だ。

 斉藤氏が述べる「2つのモダナイゼーション」の1つめは「プラットフォームのモダナイゼーション」である。ITコストのOPEX化など、多くの企業が経営戦略の一環としてクラウド移行と活用を考えている。

 「Veeamでは以前から『クラウド・データ・マネジメント』のメッセージを掲げてお客様のクラウド環境を支援してきた強みがあり、Veeam製品は2021年上半期までに225PBもの顧客データを主要パブリッククラウドに移行した実績を持ちます。さらに今後を見据えてコンテナ化というテーマにも着手しており、お客様のプラットフォーム近代化を常に支援できるよう努めています」

 そして、もう1つが「データ利用方法のモダナイゼーション」だ。

 「データ保護と言うと守りの戦略だと思われがちですが、それだけではありません。一般的に、データ保護の目的で蓄積されているデータ量は業務データのおよそ3倍とも言われており、Veeamプラットフォームの軸に『データの再利用』を加えることで、バックアップを守りだけでなく攻めにも転換できるよう技術開発を進めています」

 斉藤氏は、バックアップデータの再利用を促す具体的なソリューションとして、バックアップから開発/テスト環境を簡単に構築できる「On-Demand Sandbox」、バックアップに含まれる個人情報や機密情報を削除したうえで復元できる「Staged Restore」、リストアすることなくバックアップをそのままサーバーにアタッチできる「Data Integration API」を挙げた。アプリ開発のアジャイル化やDevOps、ビッグデータ分析といった取り組みを協力に支援するものになる。

個々に強みを持つ製品の連携で実現する「Veeamプラットフォーム」

 プラットフォームとデータ利用方法のモダナイゼーションを図るために、VeeamではVBRを中心に据えたVeeamプラットフォームを構想し、その方向性に沿った製品ポートフォリオの拡張と強化を進めている。前述したVBR V11aのアップデートも同様だ。

 Veeamプラットフォームにはさまざまな特徴があるが、斉藤氏が特に重要だと考えるのは「データポータビリティとクラウドモビリティ」だという。これは、先述したプラットフォームのモダナイゼーションにおいて必須の要件であり、実際に将来的なクラウド移行を念頭に置いてVeeam製品を選択する顧客は多いという。

 VBR V11aにおいてGoogle Cloudへ仮想マシンを直接リストアできるようになったことで、この特徴はさらに盤石のものとなった。オンプレミス(物理/仮想環境)からのクラウド移行だけでなく、将来的に考えられるマルチクラウド間でのワークロード移行に対する備えにもなる。

VBR V11aが対応する移行元/移行先のマトリクス

 また、クラウド移行後のデータ保護手段を提供している点も重要だ。「Veeam Backup for AWS」など、各クラウドのネイティブ機能を用いた効率の良いソリューションが用意されており、しかもそれをオンプレミス環境と統合的に運用管理できる。加えて、Veeam製品は「Veeam Universal License(VUL)」という共通ライセンスを採用しているため、ライセンス自体もそのままクラウドに移行して投資の無駄をなくすことができる。

 Veeamプラットフォームがマイクロサービスアーキテクチャを採用し、構成する各製品が互いに干渉しないよう疎結合した状態で連携できる点も重要な特徴だという。対応プラットフォームが拡大してもコアソリューションが肥大化することがなく、効率的に構成できる。

 「各製品とも最初のバージョンは単体で動作するように開発し、機能の成熟とあわせて徐々に他製品との連携を進めます。これにより、各プラットフォームのネイティブ機能を生かした機能拡張、そして各領域のビジネスニーズに応じた機能拡張を実現しながら、必要な製品だけを選択して構成できる仕組みになっています」

 そのほか、昨今のセキュリティ脅威状況を考えると、Veeamプラットフォームがランサムウェア対策やセキュリティの機能を提供できる点も大きな特徴だと、斉藤氏は指摘した。

* * *

 今回見てきたとおり、VBR V11aはVeeamの考える“未来のデータ保護”実現に向けた新たな一歩となるリリースだ。ITとデジタルを取り巻く状況と期待が大きく変化し続けている現在、バックアップ/リストア環境もその変化への対応を考え、備えておくときに来ていると言えるだろう。5年後、10年後を考えたとき、Veeamプラットフォームの持つ優位性は大きな注目に値するのではないだろうか。

(提供:Veeam Software)

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