セリプスキー新CEOが見せた"パーパスビルト"なサービスへのこだわり
Graviton3、プライベート5G、デジタルツイン AWS re:Invent 2021で発表されたアップデート
2021年12月03日 10時00分更新
AWS Private 5G
エリアや利用者を限定して、5Gのメリットである超高速、超低遅延、多数同時接続といったモバイルエクスペリエンスを提供する"ローカル5G"への注目度が高まりつつあるが、セリプスキーCEOが「驚くほど簡単に5Gにつながる」と評した新サービスが「AWS Private 5G」である。
ユーザーはAWSが提供するハードウェア、ソフトウェア、SIMカードを使ってオフィスや工場、倉庫といったプライベートな環境で簡単にプライベート5Gを構築できる。いわばout-of-boxなローカル5Gというイメージに近い。容量の追加やデバイスのプロビジョニング、アクセス権限などはAWSコンソールから実行でき、さらにデバイス単位の課金は行なわれず、実際に利用した通信量にもとづいて課金される。また、AWSのサービスらしく、AWSの他のサービスと連携させることも可能。現在は米国のみのプレビュー展開だが、エンタープライズによる5G利用への関心が高まっている現在、日本を含めたグローバルでの展開が期待される。
AWS Lake Formation - 行と列レベルでのセキュリティ機能/Governed Tables
AWS上にセキュアなデータレイクを数日で構築する「AWS Lake Formation」は、もともとIAMベースのきめ細かなデータアクセスが可能だったが、今回のアップデートではセリプスキーCEOが強調する「正しい人々による正しいアクセス」をより強化するため、Lake Formationが管理するS3上のデータに対し、セル(行/列)レベルでのアクセス制御を可能にするアップデートが発表されている。これはストレージAPIに行/列/セルを指定する機能を追加することで実現しており、個人情報などの機密データへのアクセスをよりきめ細かく制御することが可能になる。
セリプスキーCEOが発表したLake Formation関連のもうひとつのアップデートは、ACIDトランザクションをサポートする新しいS3のテーブルタイプ「Governed Tables」だ。これまではS3だけでACIDトランザクションを実現することはできなかった(ストレージをラッピングすることで取り込んでいた)が、今回のGoverned Tablesにより信頼性と一貫性をもってデータレイクにデータを挿入することが可能になる。これもストレージAPIの機能として実装されており、Lake Formationに統合されたAmazon SageMakerやAmazon Redshiftといった分析/ML系のサービスを通じてデータレイクにクエリすることもできるようになっている。
いずれのアップデートも東京リージョンを含む主要なリージョンで提供が開始されており、S3データレイクの利便性とセキュリティがさらに向上することになる。
アナリティクスサービスにサーバレス&オンデマンドのオプション
AWSのデータサービスの基本コンセプトは「One size does not fit all - ひとつのサービスがすべてのニーズを満たすことはない」である。したがってデータベースもアナリティクスサービスもさまざまなニーズに応じたオファリングが揃っている。そしてより細かなニーズに応えるために、セリプスキーCEOは既存の4つのマネージドアナリティクスサービスのアップデートを発表している。
・Amazon Redshift Serverless … Redshiftのサーバレスオプション、ノードを意識せずに数秒で分析の実行とスケーリングが可能、米国東部/西部、フランクフルト、アイルランド、東京の各リージョンでプレビュー提供
・Amazon EMR Serverless … クラスタの構成/管理/最適化などを行うことなく、Apache Spark、Hive、Prestoなどで構築されたアプリケーションが利用可能、必要に応じてリソースを自動的にスケールアウト/ダウン、プレビュー提供
・Amazon MSK Serverless … 容量を管理することなくApache Kafkaを簡単に実行できるMSKクラスタ、自動プロビジョニングと自動スケーリングを実現、米国東部リージョンでプレビュー提供
・Amazon Kinesis on-Demand … Kinesisのオンデマンドモード、キャパシティプロビジョニングやストリーミングワークロードの管理を不要に、書き込み用に最大200M/秒および20万レコード/秒まで自動的にスケールアップ、全リージョンで提供
いずれのアップデートも「使いたいときだけ、使いたい量を使う」を徹底しており、ユーザがノード数やプロビジョニングなどを気にする必要がない点が特徴的だ。AWSはここ数年、マネージドサービスにおける"Pay-as-you-go"をよりきめ細かく設定する傾向にあり、たとえばRedshift ServerlessではベースRPU(Redshift Process Unit)と最大RPUを設定することで、自動スケーリングが有効でも予算コントロールが容易になっている。サーバレスオプションでは突発的なスパイクによる課金額の増大がネックになることもあるが、そうした事態を可能な限り回避できるようになっている。