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小さな改善の積み重ねでインパクト 建築業界で威力を発揮するビジネスチャット活用

2021年09月06日 10時00分更新

文● 指田昌夫 編集●MOVIEW 清水

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 7月14日、ワークスモバイルジャパンが開催した建設、建築、工事業界向けのオンラインセミナーで、ヒノキヤグループ デジタル戦略部部長の萩原紀和氏が自社のLINE WORKS導入について講演した。
 

ヒノキヤグループ デジタル戦略部部長 萩原紀和氏

建築現場との連絡は電話やFAXが中心 企業全体でデジタル化を推進

 建築業は全体的にIT化が遅れている業界の1つといわれるが、同社はその中にあって積極的にデジタルを導入している。オンラインの情報発信にも力を入れており、社長が自ら出演したYouTube動画を配信しており、公式インスタグラムも公開。質、量ともに充実している。「YouTubeは特に、当社の商品がどういう考え方で作られたかを具体的に知ってもらえるツールとして価値がある」(萩原氏)。デジタルに前向きな同社の姿勢は、採用面でも好影響を与えているという。

 そんな同社がLINE WORKSを導入したのは、2017年4月とかなり早い時期だ。発端はその4、5ヵ月前、社内の各所で業務の効率化を検討する中、建築現場の工期の短縮のためにデジタルをどう活用していくかという議論に遡る。工期遅延の原因を突き詰めていくと、社内と建築現場、また現場に出入りする協力会社(施工会社)との連絡や情報共有に時間がかかっていることがみえてきた。

「従来は、社内の営業、現場監督と協力会社のやりとりはFAXや電話、メールを中心にしていたため、タイムラグが避けられなかった。それをもっと効率化できないかというのが出発点。改善のためにシステムを入れる際、まずはコミュニケーションを改善しようということになり、チャットツールの検討に入った」(萩原氏)

 各社のツールを調べていると、ちょうどその時期に機能を大幅に強化していたLINE WORKSが検索結果に出てきた。LINEと同じ操作性でありながらセキュリティがしっかりしている「法人用のLINE」というところが、萩原氏をはじめとするメンバーの目に止まった。

 萩原氏はLINE WORKSを選定した理由について、「業務で使用するためにセキュリティは重要ではあるものの、効率化が図られなければ意味がない。LINE WORKSは、使いやすさとセキュリティのバランスがうまくとれている」と語る。

LINEと同等の操作性で導入説明がほぼ不要

 LINE WORKSを導入後、同社にはどのような変化があったのか。萩原氏は期待以上の結果が出ていると感じている。

 まず萩原氏が評価しているのが、導入がきわめて短期間で進んだことだ。2017年4月に利用契約を結び、導入は約1カ月で完了。5月後半には実稼働が始まっていたという。「LINEと同じ操作感ということで、従業員への浸透が早かった。いいスタートダッシュができたと思っている」(萩原氏)

 自社だけでなく、協力会社の担当者にもQRコード経由でLINEとLINE WORKSを連携していることで、現場の業務の効率が大幅に改善し、当初の目標だった施行期間の短縮につながっているという。「FAXで図面を共有していたときと比べ、図面に変更があった際に、すぐに対応できたり、資料と平行して音声でも連絡ができる。さらに、協力会社間の連絡もLINE WORKSでできるので、スピードが速くなった」(萩原氏)

 同社ではLINE WORKS導入後、利用している営業担当者と使っていない人の業績を比較したことがあった。それによると使っている営業担当者の方が、使っていない人と比べて1.2~1.5倍の受注数を出していた。「LINE WORKSが営業成績に直結したわけではないが、できる営業マンほど『LINE WORKSは成果につながるツールだ』という意識を持っており、積極的に利用した結果だと考えている」(萩原氏)

 営業だけでなく、内勤の従業員どうしでも資料をやりとりしたり、「社内のありとあらゆる業務でLINE WORKSを使用している」と萩原氏は言う。「メールでやりとりしていたときと比べて、コミュニケーションは断然早くなった。LINE WORKSの導入は、当社の業績成長を牽引する1つの要因だと認識している」(萩原氏)

社内のナレッジ共有をエクセルからLINE WORKSへ

 社内コミュニケーションの標準ツールとして定着したLINE WORKSだが、その後萩原氏のチームは、建築業界のノウハウをLINE WORKSによって共有する仕組みを開発し、さらに活用を進めている。

ワークスモバイルジャパン 廣瀬信行氏と萩原氏との質疑応答形式でセミナーは進んだ

 新入社員が商品知識や建築業界の用語を覚えていくときに、これまでは先輩から教わる、または自分で調べるしか方法がなかった。そこに第3の方法として、LINE WORKSのAIチャットボットを提供することにしたのである。

「先輩社員にも自分の仕事があり、何もかも教わるわけにはいかない。また自分で調べても、それがヒノキヤグループではどういう解釈なのかを理解する必要がある。自社のナレッジのデータベースとしてAIチャットボットを使ってほしいと思い、開発した」(萩原氏)

 実は同社では、これまでも業務ナレッジをエクセルでまとめて、社内で共有していた。「エクセルから探すよりも、LINE WORKSに呼びかければ答えてもらえるのはすごく簡単でいい」(萩原氏)。今後は、回答集作りの体制強化と内容のブラッシュアップを図っていきたいという。適用領域も、社内手続きに必要な文書の問い合わせ対応などに拡大予定で、Q&A情報の整備を進めている。

 また同社では、社員に対して自由にグループを作れる権限を与えて運用している。すでに多くの社員は、100以上のグループを使い分けているという。「せっかく業務のスピードを上げるためにLINE WORKSを導入しているのに、グループを作るために申請が必要ではスピード感を落としてしまい、本末転倒だ。自由にさせると管理が煩雑になるという意見もあるが、今のところ、各自が少人数から大規模なグループまで、うまく使いこなしていると思う」(萩原氏)

 社員に自由に使わせる一方で、ログがとれることで牽制が効いていると萩原氏は言う。導入後、業務上で起こるトラブルなどでログを確認したいときは、適宜チェックをしている。

 萩原氏は、LINE WORKSによる業務効率化について次のように語る。

「特定の業務で大幅な効率化が実現できたということではない。ただ、日常の業務の中でコミュニケーションに関してちょっと面倒なことや、時間がかかっていたことがLINE WORKSによって少しずつ短縮し、それを積み上げることで、会社全体では大きな改善につながっていると思う」(萩原氏)

 また、コミュニケーションのインフラが共通化できたことで、何かトラブルがあったときに、協力会社も含めて連携して素早く対応できることもメリットだという。「コミュニケーションの問題で多くの時間をロスしていたこと、LINE WORKSがそれを改善していると、私自身、改めて実感している」と萩原氏は語った。

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