ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第619回
価格性能比でライバル製品を圧倒するRadeon PRO W6000シリーズの凄さ AMD GPUロードマップ
2021年06月14日 12時00分更新
Radeon PRO W6800のライバルは
Quadro RTX 5000
その性能や消費電力、価格での対決例が下の画像だ。AMDとしてはRadeon PRO W6800の競合製品はRTX A6000ではなくQuadro RTX 5000と位置付けているようだ。
実際、スペック的にはQuadro RTX 5000がだいたいGeForce RTX 3080に近いので、こちらが競合と位置付けるのは間違っていない。またAMDの前モデルであるRadeon PRO VIIと比較しても、よりコストパフォーマンスが向上しているという。
さて、性能と価格差だけで見るとこれで終わりなのだが、今回はいろいろと新機能が搭載されてきた。まず最初はRadeon PRO Viewport Boost。これはあくまでも「互換性のあるアプリケーション」に限られるが、表示性能を大幅に引き上げる機能だ。
これはなにかという話だが、どうも説明を見る限りはアスキーの速報で紹介されたFidelity FX Super ResolutionのRadeon PRO版という気がする。Fidelity FX Super Resolutionは、要するにアップスケーリングで、例えば本来4Kでレンダリングするものを2Kでレンダリングし、縦横2倍に拡大する際にそれを拡大したと見せず、4Kに近い品質を保つという技法である。
これが役に立つのは、例えばレンダリング後の内部をウォークスルーするようなケースで、最終成果物をこの手法で作るのは問題があるが、そうした最終成果物の生成や、実際に細かくオブジェクトを作ったり配したり、というシーンでフレームレートが重要になる頻度は低いことを考えれば十分に有用という判断だと思われる。
ほかにもAgisoftのMetashapeを利用して衛星写真から市街地の3Dモデルを生成する作業では、Radeon PRO W6600ですらRadeon PRO W5500の37%アップだが、W6800は65%アップ、そしてデュアルW6800にすると147%アップということで大幅に性能が改善し、デュアルGPUの効果が得やすいとしている。
ところでこの右側にあるQuadro RTX 5000との性能比較が下の画像だ。Depth Mapの作成とAlign Photoの実施という2つのタスクに対し、Radeon PRO W6800とQuadro RTX 5000は同等の性能であり、そうなると先の競合他社との比較画像で示した価格差が価格性能比で効いてくるという話である。
下の画像はAct-3DのLumion 11.0という3Dレンダリングソフトである。こちらはレンダリング性能の比較になるが、Radeon PRO W6800はQuadro RTX 5000比で40%高速としている。
おもしろいのは前バージョンであるLimion 10.5との比較で、Quadro RTX 5000はバージョンアップにともなって11%レンダリング時間が増えたのに対し、Radeon PRO W6800は5%レンダリング時間削減に成功したとしていることだ。
またLumionの場合、メモリー量とメモリー帯域が大きく性能に関係するようで、4倍のVRAMと2.3倍の帯域を充てるとレンダリング速度が3.6倍速になったとする。このあたりは32GB GDDR6を搭載するRadeon PRO W6800のアドバンテージになるだろう。
この連載の記事
-
第803回
PC
トランジスタの当面の目標は電圧を0.3V未満に抑えつつ動作効率を5倍以上に引き上げること IEDM 2024レポート -
第802回
PC
16年間に渡り不可欠な存在であったISA Bus 消え去ったI/F史 -
第801回
PC
光インターコネクトで信号伝送の高速化を狙うインテル Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第800回
PC
プロセッサーから直接イーサネット信号を出せるBroadcomのCPO Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第799回
PC
世界最速に躍り出たスパコンEl Capitanはどうやって性能を改善したのか? 周波数は変えずにあるものを落とす -
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ