資生堂は、デジタルマーケティングなどを行う資生堂インタラクティブビューティーを、2021年7月に、アクセンチュアとの合弁で設立すると発表した。
資生堂の魚谷雅彦社長兼CEOは、「これは、資生堂の未来にとって、極めて重要な発表である。資生堂はDXによって、ビューティー市場に革新をもたらす。それをアクセンチュアと一緒に取り組むことになる」とする。
資生堂は、中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」において スキンビューティー領域をコア事業とする抜本的な経営改革を実行。その一環として、「デジタルを活用した事業モデルへの転換・組織構築」を掲げている。
新会社は、この取り組みを具現化するもので、ビューティー領域に特化したデジタル・ ITの戦略機能会社として、デジタルを中心とした事業モデル改革、グローバル標準のITインフラとオペレーションの構築、デジタル・IT領域での人材の強化に取り組み、DXの加速により、日本の事業モデルを革新。「資生堂だけでは成し得なかった新しいビューティー体験を実現する」と意気込む。
たとえば、顧客がオンラインや店頭で行った肌診断の結果や、バーチャルメイクアップ履歴をデータベースに蓄積し、その履歴データを、購買データや研究開発のデータなどと合わせて分析。時間や場所を自由に選択しながら、顧客に最適なカウンセリングや商品選び、レッスンのメニューの提案が可能になる。さらに、美容に関する最新のテクノロジーを活用して、顧客一人ひとりに合わせて、パーソナライズしたサービスを、デジタルとリアルを問わずに生涯に渡って提供。シームレスで、様々なコンタクトポイントから提供するという。
スキンアナリティクスの機能を使って、スマホのカメラなどで、朝起きたときに肌の状態を確認して、データを蓄積。スマートミラーでは、肌の状態からUV対策をした方がいいことなどを提示。ARを活用したバーチャルメイクをスマホに記録するといったことが可能になる。
資生堂の魚谷社長兼CEOは、「資生堂は、化粧品を販売することが目的ではない。美の価値を世界中のお客様にお届けし、活力を提供し、元気になってもらい、幸せな人生を送ってもらうことが目的であり、それが資生堂の使命である。『美の力で、世界をより良くする』ことの実現に向けて、DXは大きな役割を果たすと考えている」と語る。
資生堂が目指す姿を、「パーソナルビューティウェルネスカンパニー」だと位置づける。
「生活者一人ひとりの環境が異なり、個性がある。それは一人ひとりが異なる美に対するニーズを持っていることと言い換えることができる。以前は、多くの人たちに対して広告を打つ形だったが、いまはターゲットを絞り込んで関係性を築くことが大切である。デジタルを活用して、ニーズの変化や環境変化に対応した商品開発だけでなく、サプライチェーン全体において、生活者とパーソナライズされた関係を構築することで、パーソナルなビューティーウェルネスを提供できる」とする。
資生堂では、2019年に、企業ミッションを「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」に定めた。
ビューティーイノベーションの実現において、データにアクセスし、顧客をより理解し、スピードを持って、ニーズを満たし、これまでとは異なる形で顧客とエンゲーシメントすることができるようになるとする。

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