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Apple M1搭載で大幅性能アップの「iPad Pro」&カラフル7色「iMac」特集 第33回

小さいながらも“製作者の意図”を見事に反映する高信頼・高画質

iPad Pro 12.9インチのディスプレーは「バーゲン価格」だ

2021年06月06日 12時00分更新

文● 本田雅一 編集●飯島恵里子

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HDR映像を写真で表現することは不可能だが、相対的な違いは微妙ながら出る。この例では映像の明るい部分の色乗り(鮮やかさ、濃さ)が新型の方が良い(左が新しいiPad Pro)

上手に機能さえすれば2500分割のローカルディミングは“強い”

 と、仕組みの話ばかりで恐縮だが、要はかなり上手にローカルディミングという技術をアップルは使いこなしている。

 実は新しいiPad Proを、iPadを使って描いているプロのイラストレーターに見せて、実際に使ってみてもらった。パフォーマンスも良いことは良いのだが、パッと見て驚いていたのが、色の鮮やかさだった。

 イラストはHDRでは描かないものだから、あくまでSDRの映像であり、旧モデルとの色再現域の違いはないはずなのだが、実際には新モデルの方がコントラストが高く、色鮮やかな絵柄になるのだ。

 理屈から言えば、漏れ光が減ることで色純度が高まる、なんて理屈は成り立つのだが、観ていただいたイラストは自身がお描きになった明るい海辺のイラストなので、漏れ光ごときでそこまで大きな違いが出るとは思えない。

 しかし、実際には明らかに新モデルの方が高画質。さらに映画など映像作品を見始めると、その違いは如実になってくる。

 低い輝度の色再現はとても上手で、旧モデルではホワイトバランスがずれていた暗部のグレートーンがニュートラルに表現されているのが印象的だった。このため暗部の色が安定し、色の描き分けも明確。映像を描写するための絵の具が増えた、といったところだろうか。

 これは高輝度部も同じで、HDRコンテンツならばネオンサインや夕景のような明るさと彩度が共に高いシーンで、実にリアリティのある映像を出してくれる。

 HDRの映像制作では最大1000nitsのマスターモニターが使われていることが多く、1000nitsまでをリニアに再現できるiPad Proはマスターモニターと同様の輝度範囲をHDRで表現できることになる。言い換えれば、製作時に意図したダイナミックレンジで再生できますよということだ。

 PRO XDR Displayで高品位なローカルディミングを見せていただけに、本機の出来の良さにもさほど驚くわけでもないのだが、色再現域がDisplay-P3までの範囲ならば、ある程度、信頼できるモニターとしても活躍できる。

 “Liquid Retina XDR Display”という名前があたら得られているが、名前の通り、サイズこそ異なるものの、PRO Display XDRとほぼ同じか、あるいは精細感やコントラスト感に関しては、むしろ優れているように感じるかもしれない。

最高輝度が500nitsの旧モデルでは明るい部分がロールオフ処理されるが、新型ではリニアに表現できるため、のびやかでコントラストの高い表示になった。空の彩度も高い(左が新しいiPad Pro)

 HLGフォトなど静止画でHDRを扱える一眼カメラなども増えているが、iPad Proのディスプレーならば内蔵ディスプレーで、HDRフォトの現像パラメータを追い込むことができるだろう。

 41g重く、0.5mm厚くなった理由の大半は、おそらくこのディスプレーを採用するためで、ドルベースで100ドルの価格アップにもつながっている。このことに不満を表明する人もいるようだが、個人的にはディスプレーの置き換えだけでも100ドル以上の価値があると思う。

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