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T教授の「戦略的衝動買い」 第635回

超バズってる「本当の定規」をネットでプレミア価格で衝動買い

2021年06月03日 12時00分更新

文● T教授 撮影●T教授 編集●ASCII

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素材はガラス、カーボン、ステンレス、竹、チタンなど様々だ

目盛の表記方法が大きく変わった話題の定規

 目盛という限りは、長さを測るモノだ。なので「本当の定規」は“定規”ではなく“本当のものさし”と呼ぶべきだ。しかし少し間の抜けた感覚の“ものさし”ではなく、真面目でシュアなテイストを感じる“定規”をマーケティング的に選んだようだ。

 「本当の定規」は一般的には“直尺”(ちょくじゃく)と呼ばれるまっすぐなものさしを差す。作業服などのポケットにも簡単に収まる。同時に精度の要求される商品であるがゆえに、伸縮誤差の少ないステンレス製の15cmの商品が好まれる。

 実際に筆者の手元にあった直尺と新入りの「本当の定規」を並べて比べてみると、細かなことを気にしなければ、全体の雰囲気は大同小異、だが「本当の定規」(上から2番目)だけは目盛のたたずまいが従来と異なることに気がつく。

引き出しにあった15cmものさし。すべてが某専門メーカーの同じものに見える

 同じコクヨが以前から販売しているJIS 1級の15cm直尺と、「本当の定規」を上下2段に並べて見ると違いは一目瞭然だ。一見して「本当の定規」は目盛が太いように見える。実はこの目盛が「本当の定規」の今までにない画期的な発想なのだ。

同じコクヨのJIS 1級 直尺と「本当の定規」を上下に並べて比べてみた

 実際に上下に並べた2つの定規をデジカメで超接写してみた。従来の定規の仲間である“コクヨJIS 1級直尺”(上側)を見ると分かるが、ステンレス板に印刷された定規の目盛線はそれ自身に0.1mm〜0.2mmの幅があり、使用者が長さを目で見て測る時には目盛線の幅の中央位置を見ている。

目盛線の幅をゼロにするという画期的な定規が「本当の定規」(下)だが実際に使っているといろいろ矛盾を感じてくる

 伝統的なこの目盛の読み方が見やすいか使いよいかは人それぞれで何とも言えないが、すべての人がこの読み方に慣れていることだけは確かだろう。

 一方、「本当の定規」は、目盛線の幅をなくすことを目標として、従来の目盛線ではなく幅1mmの太さの面の繰り返しという考え方を基本にした。モノの長さには目盛線などは存在せず、人が比較のために見える化を実現するための道具がものさしだ。

 今回の定規は小さな直尺の世界の話だが、自然界にある海岸線も同様だ。そこに幅のある線などはなく、幅0mmの流動的な境界があるだけだ。

 「本当の定規」では、境界で区別された連続を表現、見やすくするために幅1mmの黒い面と白い面を交互に繰り返すことによって幅0mmの目盛線(境界)を意識させる仕組みだ。これは今までありそうでなかったおもしろい発想だ。従来の直尺と「本当の定規」の目盛の発想の違いは明快だ。

 しかし、「本当の定規」を実際にしばらく使っていて疑問に思うこともいろいろ出てきた。まず、あまり目の良くない筆者が「本当の定規」を見ると、黒い面と白い面の幅が同じに見えないことだ。どうしても白い面が黒い面に比べて幅太に見えてしまう。

素人でかつ目の弱い筆者は黒い幅と白い幅が違って見えて気持ち悪い。加えてついつい目盛線の中間距離を読む長年の癖が出て、黒い太幅の部分から下に伸びている“ヒゲ”がウザい

 加えて、黒い面の両端から下側に伸びた短い2本のヒゲのような線が目障りだ。長年、目盛線はその中央位置で読むということを繰り返しやって来たので、ついつい目盛線の中央部分に目が行ってしまう。目的のよく分からないヒゲだが、筆者的にはない方が気持ちは落ち着く。

 筆者的には以上の2点が気になって気持ち悪くて、正直なところ「本当の定規」をあまり使わなくなってしまった。

 にわかに直尺に興味を持ってしまった数週間だったので、悪乗りでおもしろそうな“新潟精機”の「快段目盛」という階段状の目盛を採用した15cm直尺も衝動買いしてしまった。ところがこれが当初の期待を大きく超える商品だった。

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