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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第616回

Alder Lakeが採用する電源規格ATX12VOとは? インテル CPUロードマップ

2021年05月24日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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マザーボード用の電源コネクターが10pinに変更

 下の画像が新しいマザーボード用の電源コネクターである。

新しいマザーボード用の電源コネクター。10pinというコネクターはこれまでなかったので、間違えることはなさそうだ

 Pinの内容は以下のようになっている。マザーボード側はこれまで+5VSBを利用していたスタンバイ回路を+12VSBに対応させる必要はあるが、差はそこだけである。

ATX12VOに採用される10pinコネクターの役割
番号 信号名 意味
1 PS_ON# これをOff(TTL_Low:0~0.8V)に落とすと電源がOn
2 COM GND
3 COM GND
4 COM GND
5 Reserved 未使用(予約)
6 PWR_OK 電源がOnになるとOn(TTL_High:2.4~5V)になる
7 +12VSB 12Vスタンバイ電源。ACがコンセントにつながると供給
8 +12V1 DC 12V電源その1
9 +12V1 DC 12V電源その2
10 +12V1 DC(12V Sensing) 12V電源その3。12V電圧測定にも利用

 ちなみに+12VSBは最大でも1.5A以下、ALPM(Alternative Low Power Mode)では0.625A以下とされている。そしてこの12V1 DCというのは、マザーボード上でCPU「以外」への電力供給に使われるもので、特に最大供給能力などに関する定義はない。

 また、仮に10pinコネクターで供給しきれないほど消費電力が多いマザーボードの場合、追加でPCI Express用と同じ6pinコネクターを最大2つまで追加して、これで対応できるとする。この追加の6pinコネクターで1個あたり216~288Wが供給できるとするので、コネクター1個あたり18~24Aほど流れる計算だ。

 これとは別に4pin、または8pinのATX12V用補助電源コネクターが必要になる(こちらは従来のATX12Vと一緒)だが、こちらが+12V2という分類になる。この+12V2はCPUによって仕様が決まっており、以下を供給できるのが必須となる(これはATX12VOの仕様ではなく、別の追補ドキュメントが用意される)。

第6/第7世代Coreプロセッサー
TDP 連続供給 ピーク供給
35W 10A 13.5A
65W 14A 18A
80W 14A 18A
95W 16A 18A
第8/第9世代Coreプロセッサー
TDP 連続供給 ピーク供給
35W 13A 16.5A
65W 21A 28A
95W 22A 29A
140W 28A 39A
165W 37.5A 45A
第10/第11世代Coreプロセッサー
TDP 連続供給 ピーク供給
35W 13A 16.5A
65W 23A 30A
125W 26A 34A
165W 37.5A 40A

 12V3/4はPCI Express向けなので仕様には詳細は含まれていないが、こちらはPCI ExpressのCEM(Card Electromechanical)Specificationに準拠する形だ。

 ちなみにCEMでは最大で6.25A(6pin)/12.5A(8pin)を供給できれば良い計算になるのだが、最近は300Wを軽くぶっちぎるビデオカードが出てきており、電源メーカーもこれに対応する必要があるので、20A近く供給できるのが当たり前になってきている。

 ところでSATAは? という話だが、新たに4pinと6pinのSATA電源ケーブルが定義された。マザーボード上で5Vが生成され、12Vと併せて供給される格好だ。

4pinコネクターは、ATX12Vの4pin(端子間ピッチ4.2mm)より一回り小さい、3mmピッチのものになるので、間違って挿す危険性は低そうである

6pinコネクターは、横方向が2mm、縦方向が3mmピッチとさらに一回り小さい。これも他のコネクターとは明らかに大きさが異なる

 さて、このATX12VOという仕様だが、実は公開されたのは2019年6月である。2020年3月にはRevision 002が公開され、これが現時点での最新版となっている。これとは別にプロセッサーごとの+12V2に関する補足は随時アップデートされており、最新版は今年3月にRevsion 002として公開されている。

 もう最初の仕様公開から2年近く経過しており、それなりに普及している……わけもないのは皆様もご存じの通り。少なくとも現状、日本では1枚たりとも発売されていない。

 筆者が知る限り、このATX12VOに対応しているのはASRockのZ490 Phantom Gaming 4SRのみである。ちなみにこの製品、ASRockの日本向けページには出てこないあたり、お察しである。このZ490 Phantom Gaming 4SR、下の画像のとおり24pinのコネクターが姿を消しているのがわかる。

ASRockのZ490 Phantom Gaming 4SR。赤枠と赤字は筆者追加。むしろマザーボードへの配線が増えている気がする

 これに対応する電源だが、台湾High PowerのHP1-J650GD-F12Sが一応ATX12VO対応「ということになっている」。なぜ注釈が付くかというと、この製品カタログには通常のATX12V電源(なので24pinのコネクター実装)として掲載されているからだ。

 ただこの製品はOEM/ODM向けという扱いで、それもあってオンラインでは未掲載ながら、ATX12VO対応の派生型が用意されているようで、実際Guru 3Dが昨年10月に試用レポートを掲載している。

ATX12VOに対応するHigh Powerの650W電源「HP1-J650GD-F12S」

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