引き続きインテルCPUの話題……、というにはやや斜め上の話題であるが、今回はAlder Lakeに関係する電源規格の話だ。
来年投入予定のデスクトップ向けAlder Lakeには新しいLGA1700のプラットフォームが用意されるという話題はすでに何度か紹介した通りであるが、このLGA1700プラットフォームに関して、インテルはATX12VOを前面に押し出していくという話が出てきた。
ATX12VOそのものは実は2020年にリリースされた規格(最初のリリースは2019年である:後述)だが、今のところまったくと言っていいほど普及していない。ただAlder Lakeの世代でインテルはこのあたりを変革していくつもりなようだ。ということで今週はこのATX12VOについて説明したい。
マザーボードへの供給電源を12Vに一本化
ATX12VOとは“ATX 12V Only”の略である。要するにマザーボードへの供給電源を12Vに一本化しようという取り組みである。もともとATX12V電源は、+3.3V/+5V/+12V/+5VSB(StandBy:待機用電源)という4系統の電源出力が必須で、さらにオプションとして-12Vの出力も定義されていた。
もっと前のATX12V電源には、オプションで-5Vがあったし、それ以前のAT電源では3.3Vがなく、代わりに±5Vと±12Vが提供されていた。このあたりは時代の流れに沿って、要らないものが省かれ必要なものが追加されていった。
特にATX12V世代では、まずCPU供給用に4pinの12V(のちに8pinに強化)の12V補助コネクターが追加され、次にPCI Expressカード用に6pin(のちに8pinも追加)の12V補助コネクターが追加され、そして最新ではこの4/8pinのCPU向け補助コネクターが複数本、PCI Express用の6/8pin補助コネクターも複数(4~6)本出るようになってき始めた。
さて、ここで昨今の電源の内部構造を簡単に説明したい。下の画像は筆者の手持ちの1000W電源のラベルを写したものだが、こうした複数の電源出力の場合、内部構造は下図のようになっている。
まず一旦、入力された電圧にフィルター(突入電流の抑制や高周波成分の除去)をかけてから整流してDCにし、さらにActive PFC(力率の改善)や平滑化(脈流の安定化)を経てスイッチングレギュレーターにかけ、改めて「キレイな」交流に変換する。
これをトランスにかけて電圧変換するが、このトランスの出力は-12V/+3.3V/+5V/+12Vで全部取り出し口が異なる。それぞれの出力は個別に整流してDC化され、さらに平滑回路を経てそれぞれの所定の電圧として出力されるという格好だ。
ここで、例えば+12Vブロックが複数(筆者のTPQ-1000だと4つ)あるのは、そもそもまとめて100A出せるような回路ブロックを作るのが大変という話もさることながら、安全規格の縛りがあって、そういう大容量の出力回路を家庭で利用できるような機器に使えない(例えば40Aだったら20A+20Aに分けないといけない)という縛りもあっての話である(*1)。
(*1) 2000年代前半は確か20Aが最大容量だったような気がするのだが、TPQ-1000は25Aを出せているあたり、法令が改正されたのだろうか?(単にTPQ-1000がブッチぎってる可能性もあるが、他にも25Aまで出る電源が多数存在するあたり、法令が改正された可能性が高い)。

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