最大8コア&5GHzでRyzenを凌駕!?
Core i9-11980HKやXeon W-11955Mなど、6コア/8コア版のTiger Lake-Hが正式発表
2021年05月11日 20時00分更新
ゲーミング性能はRyzen 9 5900HXより最大26%上に
Tiger Lake-Hの性能に関しては、まだ筆者の手元に実機がないので検証できない。そこで、インテルがブリーフィングで提示した結果を簡単に紹介したい。
まず、Tiger Lake-H対Comet Lake-Hをゲーミング性能で比較したのが下のグラフだ。Core i9-11980HK搭載ノートPCとi9-10980HK搭載ノートPCで比較しているが、どちらもノートPC用のGeForce RTX 3080(GPUのPower Limitは155Wに統一)を搭載している。
インテルによれば、テスト環境のメモリークロックはDDR4-3200で統一している(以降で紹介するグラフも同様)ため、ほぼCPUのパワー差が性能差となって現れているようだ。「Far Cry New Dawn」を筆頭に、ゲームによっては最大21%の性能向上が確認できたという。
続いては、ライバルであるAMDのRyzen 9 5900HXとCore i9-11980HKの対決だ。どちらも8コア/16スレッド仕様のため、この結果は非常に気になるところ。こちらもGPUはGeForce RTX 3080だが、RyzenのほうはGPUのPower Limitが165W設定のため、Core i9-11980HKはGPUパワーが10W低い、という点を念頭に置いて見ておきたい。
いずれのゲームでもCore i9-11980HK搭載ノートPCはRyzen 9 5900HX搭載ノートPCを上回っており、最大で26%の性能差がついている。前述の通り、GPUのPower Limit設定はRyzenのほうが高い点を考慮すれば、CPUパワーがGPUパワーをひっくり返すほどの性能差を出している、ということになる。
さらに、ダメ押しが次のグラフだ。今度はCore i5-11400H搭載ノートPCとRyzen 9 5900HS搭載ノートPCの対決で、GPUはGeForce RTX 3060になる。Core i5-11400H搭載ノートPCはMax-QかつPower Limitが最大65W、Ryzen 9 5900HS搭載ノートPCは最大80W設定の非Max-Q仕様である、という違いがある。CPUのコア数はRyzen 9 5900HSのほうが2コア多く、GPUパワーもRyzen 搭載ノートPCのほうが有利だ。
8コア/16スレッドかつ通常版GeForce RTX 3060を搭載したRyzen搭載ノートPCと、6コア/12スレッドかつMax-Q版のGeForce RTX 3060を搭載したTiger Lake-H搭載ノートPCが接戦を展開。「War Thunder」などではRyzen搭載ノートPC有利だが、その差はせいぜい3%。一方で、12%もCore i5-11400H搭載ノートPCのほうが勝るゲームもある、とインテルは主張している。
もちろん、これらの結果だけでTiger Lake-H搭載ノートPCの性能を判断するのは危険だ。実機でベンチマークを回してみるまでは“こういう話もある”程度にとどめておきたい。
クリエイティブ系アプリのパフォーマンスについても、インテルはいくつかの比較を行った。まずはCore i9-11980HK搭載ノートPC対Core i9-10980HK搭載ノートPC、つまりTiger Lake-H対Comet Lake-Hの頂上対決の結果を見てみよう。
Core i9-11980HK搭載ノートPCは動画編集でCore i9-10980HK搭載ノートPCに対して20%、Photoshop Elementsにおいては22%、Office 365においては14%上回ると主張している。前述の通り、Tiger Lake-Hは前世代に比べて最大クロックが300MHz下がっているが、Willow Coveアーキテクチャーのおかげで処理性能が向上していることがうかがえる。
同様に、Ryzen 9 5900HX搭載ノートPCとの対決でも、Core i9-11980HK搭載ノートPCが20%前後上回っているとこの資料は語っている。しかしながら、これだけアイコンが並んでいるのに性能差が出ているのはたった3アプリしかない点は疑問が残る。「Lightroom」のようにL3キャッシュの多いRyzenが強いアプリもあるわけで、やはりこちらも実機でのベンチマークを実行してから評価したいところ。
まとめ:実機ベンチマークの結果次第にはなるが、ノートPC派には楽しみな製品
デスクトップPC向けのRocket Lake-SはRyzenに迫りはしたものの、14nmプロセスを使い続けたことによる消費電力や熱問題はインテルの反撃に大きな影を落とした。しかしながら、ノートPC向けのTiger Lake-Hは10nmプロセスの強みを活かし、かなり良い仕上がりになっている「ようだ」。
都合の良いデータだけ見せただけの資料である可能性もあるが、Ryzenに対して20%以上のアドバンテージが出るシーンもあることを考えると、中〜大型ノートPC向けCPUではインテル対AMDのバトルはかなり白熱しそうだ。製品登場スケジュールは各メーカー次第だが、間もなく各社からアナウンスが出されることだろう。筆者も機会があれば、Tiger Lake-H搭載ノートPCのテストに参加してみたいものだ。