充電式インパクトレンチを買ってタイヤ交換は楽になった。とにかくあっという間だ。4穴ホイールなら1本10秒もあれば外れてしまう。なのに私の気分はいまいち晴れない。
いざ圧倒的なパワーによる電光石火の勢いを目の当たりにすると、果たしてこれで良かったのか、素人のくせに効率を目的としてインパクトレンチを導入したのは間違いではなかったのか。そんなふうに思えてくる。だって素人にとって、自分でできる範囲のクルマいじりは楽しみのうちなのだから。
最近の車は壊れないし、壊れたとしても電子制御化が進んで手の出しようがない。そんなクルマに手を入れられるのは、洗車かタイヤ交換くらいだ。その貴重な機会をみすみす省力化してしまっていいのか。効率はさておき自動車の変速だってマニュアルの方が楽しいではないか。そう思うタイプの人間は、タイヤ交換も自分の腕でやるべきなのだ。
「自動車整備にはさまざまな問題があって時に退屈だが、タイヤ交換への取り組みは、楽しく、クールで、セクシーであるべき」と、心の中の進次郎もささやいている。
ナットを緩めるときはカクッと抵抗が弱まる瞬間に。締めるときは正にその抵抗感に。あの急激な、あるいはなだらかなトルク変動を手に感じるたび、何かエロティックな感情が高まるのは私だけなのか。
せんせい!ここに変態がいます!ハイその通り!
そこで私はホイールナットの締緩を人力で行なう、クールでセクシーな工具を買い揃えたのだった。
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