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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第137回

アップルはなぜHomePodの製造を終了したのか

2021年03月30日 09時00分更新

文● 松村太郎 編集● ASCII

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●HomePod、製造終了の理由

 HomePodは、2018年2月に米国・英国・豪州で発売されたホームスピーカーです。Siriを搭載しながら「スマートスピーカー」とは名乗らなかった理由は、アップルが「Siri搭載デバイス」を家庭内にばらまく必要性に欠けていたことにある、と筆者は当時分析しました。

 アマゾンはスマートスピーカーのEchoを通じて音声アシスタントAlexaを普及しなければなりませんでしたが、アップルはiPhone、iPad、Apple Watch、Mac、そしてApple TVにSiriを搭載しており、音声アシスタント競争、あるいはスマートホームをホストする存在としては、家庭内に十分行き渡っていました。

 そのため音声アシスタントの住処としてではない価値を、スマートスピーカーに与えようとしたと考えることができます。その結果が、非常に高品質なオーディオ性能でした。しかし、そのことが、HomePodの製造終了の原因を招きました。

 価格です。

 HomePodは当初349ドルで発売されました。後述の通り、確かにアップルが目指したオーディオ品質は満足いくものでしたが、市場ではやはりスマートスピーカーとして価格が比較されてしまいました。しかも、349ドルは単に「高い」というレベルではなかったのです。

 感謝祭以降のホリデーシーズンともなれば、アマゾンやグーグルは通常50ドルで販売しているEcho DotやGoogle Home mini(現在はNest)にBOGO(Buy One Get One、1つ買うともう1つ)を設定したり、スマートホーム製品を購入するとおまけとしてつけたりする、価格破壊による普及を仕掛けていた頃です。

 もはや、スマートスピーカーを「買う」ではなく「もらう」ような状態の中で、割引もバンドルもないHomePodは、高音質というマーケティングもむなしく、販売を伸ばすことがかなわなかった、と分析しています。

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