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山根博士の海外モバイル通信 第538回

今も昔もキーボード! ノキアいにしえのQWERTYキーボードスマホを引っ張り出した

2021年03月19日 10時00分更新

文● 山根康宏 編集●ASCII

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ノキアの黎明期のスマホが集結!

 最近はQWERTYキーボードの付いたスマートフォンは滅多に見なくなりました。しかし今から10年くらい前は、ブラックベリースタイルのキーボード付きスマートフォンを各社が出していました。筆者が今でも好きなノキアも、数々のキーボード端末を出していたのです。

 さて、香港在住の筆者の個人的な話になりますが、香港に住んでいるガジェット仲間の友人のYouTubeライブで昔のスマートフォン、いや、PDAの話しをしました。みなさんは「PSION」(サイオン)というPDAがあったことを知っているでしょうか。Palm(パーム)が主流だった2000年前後、PSIONはそのライバルだったのです。筆者と一緒にPSIONを使っていた友人と熱い話をしたので、気になる方はぜひご覧ください。

PSIONを熱く語る友人の田池氏(右)と筆者(左)

 このYouTubeに出演するに当たり、自宅にある古いノキアのキーボード付きスマートフォンを引っ張り出してきました。なぜならPSIONとノキアには大きな関係があるからです。PSIONは自社開発した「EPOC OS」を搭載していましたが、このEPOC OSは1999年にPSION、ノキア、エリクソン、モトローラなどが設立したSymbian社に移管され、Symbian OSと名前を変えました。そしてその後、iPhoneが登場するまでスマートフォンの代表的なOSとして栄光の時代を築き上げたのです。

 日本でもノキアのスマートフォンは何機種か販売されました。それらはいずれもSymbian OSのS60(旧Series 60)UIを搭載していました。しかしこのS60以前にもノキアはキーボード付きスマートフォンに、古いバージョンのSymbian OS/UIを採用していたのです。今回出演したYouTubeでは、PSIONのPDAと、ノキアのSymbian OS搭載キーボードスマートフォンのお話をしました。

 とはいえS60は日本でもメジャーだったことから、S60以前のUI、Series 80を搭載したノキアのQWERTYキーボードスマートフォンまでのお話をしたのです。Series 80はQWERTYキーボード、横長ディスプレーに対応。このOSを搭載したモデルは「Nokia 9210」(2000年)、「Nokia 9300」と「Nokia 9500」(どちらも2004年)などでした。

Nokia 9210の強化モデル、Nokia 9210i(奥)とNokia 9500(前)。閉じた状態では携帯電話として使える

 ディスプレーはもちろんカラー、タッチパネルではありませんでしたが、ディスプレーの横に4つのボタンがあり、メニュー操作などがワンタッチできます。また、QWERTYキーボードの上にはよく使われるオフィス系アプリのショートカットボタンもあります。日本語もある程度使えたので、筆者はこの時代からノキアのQWERTYキーボード端末をメインマシンとして使っていました。

キーボードも押しやすく、アプリショートカットボタンもある

 この2機種以前もノキアはQWERTYキーボードスマートフォンを出していました。それらのモデルはSymbian OSではなく、GeoWorksが開発したGEOSを搭載していたのです。GEOSはスマートフォンのない時代、PDA向けに開発されたものでしたが、ノキアはパケット通信ではなく回線交換式のデータ通信に対応させ、ブラウザーの利用を可能にしました。

 ノキアのGEOS搭載スマートフォンはNokia 9000(1998年)シリーズとNokia 9110(1999年)シリーズ。Nokia 9000はだいぶ大きいサイズでしたが、Nokia 9110は小型でスリム。なおNokia 9210とNokia 9110はほぼ同じ大きさです。

GEOS搭載時代のNokia 9000(奥)とNokia 9110(前)

 どちらも2000年より前のモデルですから、ディスプレーはモノクロ。また標準でFAXの送受信ができたのが時代を感じさせます。このころは普段のメッセージのやり取りはSMSを使い、書類のやり取りはFAXでした。メールはPCで使う、そんな頃です。しかしそんな時代からノキアはQWERTYキーボードの付いたスマートフォンを出していたわけです。

Nokia 9000。アプリボタンは左から「TEL」「SMS」「FAX」と並ぶ。ブラウザーを「Internet」と表記しているのが懐かしい

 ノキアのこの一連のQWERTYキーボード付きスマートフォンは「Communicator」(コミュニケーター)という愛称が付けられていました。まだスマートフォンがない時代、携帯電話とインターネットやFAXが融合したスマートな端末を、ノキアはCommunicatorと呼んでいたのです。

 1990年台後半は携帯電話は通話に使うことが主な用途であり、携帯電話でメールを送ったりブラウジングする、なんてことは夢の話でした。ところがノキアはNokia 9000以前にHPと組んで、Communicatorのような使い方ができる製品を出していたのです。それがHPのOmniGo 700LXです。

HPのOmniGo 700LX。背面が不思議な形をしている

 OmniGo 700LXの中身はキーボード付きのDOSマシンとして当時(1996年)メジャーだったHP LX200。つまりDOSで動くPDAです。しかしOmniGo 700LXの閉じた姿を見ると、背面が不思議な形をしています。さらにはHPの製品なのに「NOKIA」のロゴも見えます。

 実はこの背面は、ノキアの当時のベストセラー携帯電話である「Nokia 2110」をスライドインさせて装着できるのです。つまりHPの200LXの背面にNokia 2110が合体できる構造になっているわけです。

背面の謎の形状は、Nokia 2110を装着するためのもの

 Nokia 2110は1994年に発売され、当時世界最薄のスリムケータイとして大人気となりました。日本にも同系機が登場しましたが、「こんなに薄いケータイなら、PDAの背面に装着しても厚みは増さないだろう」とノキア、HPの両者が考え、700LXが生まれたのでしょう。

1994年当時は薄さで人気だったNokia 2110。筆者のコレクションだがキーパッドは経年劣化している

Nokia 2110をHP OmniGo 700LXにスライドイン

合体完了

 片手で持つにはギリギリの大きさのOmniGo 700LX+Nokia 2110の合体スタイルですが、当時はどこでもパッと開いてネットにつなぐことのできる、夢のマシンだったんでしょうね。

 なお、筆者は100LXや200LXを日本で使っていましたが、その後はザウルスに浮気して、1998年に香港に駐在員として赴任してからはPSIONやパームを使っていました。このOmniGo 700LXはだいぶ後からコレクションとして購入したものですが、このスタイルで実際に使ってみたかったものです。

背中に着けたNokia 2110が重いので、倒れないように本体下からストッパーを引き出せる

開いた状態。キーボードとディスプレイ周りは200LXと同等。液晶は経年劣化で傷んでいる

 20年以上も前の製品なので、残念ながらあちこち劣化してしまっています。しかしこうしてたまに出してきて、昔の思い出に浸るのも楽しいもの。今後もQWERTYキーボード付きスマートフォンが出てきたら購入して、「キーボードスマホコレクション」を充実させようと思っています。

これらの端末はたまに出してきて昔を懐かしみたい

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