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荻窪圭の“這いつくばって猫に近づけ” 第700回

700回記念! 連載初期の猫とカメラで昔を懐かしむ

2021年02月17日 12時00分更新

文● 荻窪圭/猫写真家 編集●ASCII

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かふかが首筋を嚙んだ瞬間の「ふぎゃ」って顔が最高だったのである。当時のカメラは暗所に弱かったので天井に向けてフラッシュをバウンス発光させて撮影している。2008年8月 ニコン D40X

連載開始からはや14年
カメラも進化しました

 なんと、「這いつくばって猫に近づけ」が連載700回を迎えたのである(たぶん)。なんかスゴいな。何年書いてるんだろうと思って調べたら、最初は2007年だった。14年前である。

 第1回で掲載した写真のうちの1枚がこちら。2007年4月にキヤノン「Powershot TX1」で撮影した猫だ。14年も前のことなので再掲しても誰も覚えてないでしょう。

 Powershot TX1なんて覚えてる人少ないと思う。後継機が出ないで終わったところをみると、あまり売れなかったのだろう。なにしろ縦型でモニターを横に開いて撮影する、ちょっと面倒なスタイルだったのだ。でも10倍ズームレンズを搭載し、猫を撮るにはなかなか都合が良かったのである。

Powershot TX1はユニークなスタイルのカメラ。画素数は710万画素でCMOSではなくCCD。写りはなかなか良かった。2007年4月 キヤノン Powershot TX1

 連載開始当初からのポリシーがひとつある。それは写真に必ず撮影年月と使ったカメラを明記すること。デジタルカメラがどんどん進化しつづける中、そのときどんなカメラが使われているかの記録になるし、各回のテーマに沿って古い写真も適宜引っ張り出そうと考えていたので撮影年月も必要だなと考えたのである。

 たとえばこれ、第8回で使った写真だけど、撮影は2003年6月。被写体はうちの猫(にやと大五郎)。丸いクッションの上でぐだっとにやが寝ているところに、大五郎がおもむろにかぶさってきれいなX字を作ってくれたのだ。この体勢は一瞬だったのだけど、たまたまカメラを持っていたので撮ってしまったのだ。カメラはペンタックス「Optio 550」。500万画素の5倍ズーム機だった。

こういう写真、今ならスマートフォンの独壇場だよね。でもこの頃はまだなかったのだ。にしても、きれいなX字である。2003年6月 ペンタックス Optio 550

 仕事がら、いろんなメーカーのいろんなカメラを使う機会が多いので、登場するカメラを眺めるだけでも面白いかと思う。にしてもOptioとか懐かしいですな。

 2年目の2008年になるとアレが登場する。そう、iPhoneだ。表参道に徹夜で行列して買った「iPhone 3G」である。もちろんすぐこの連載のネタになった。

 カメラは200万画素でフォーカスも固定。画質もいいとは言えなかったけど、あっという間にガラケーのカメラ機能を置き去りにした。カメラ性能自体より「撮ったあとの処理」、特にネットへの公開が圧倒的に優れていたのである。

iPhone 3Gを持ってなじみの公園でなじみの猫。石のテーブルが涼しかったのかそこで潰れてた。2008年7月 アップル iPhone 3G

 ちなみにこの猫、このあと紆余曲折を経た後、わたしの友人の家で生きてます。当時の公園にいた猫の一番の長生き。

 この年、我が家にかふかがやって来た。とりあえず新しい猫がくるとデジタル一眼で撮りまくる。まあどこのうちでもそうだよね。子猫が子猫でいる間なんて一瞬だしね。冒頭写真はその成果。カメラはニコン「D40X」。寝ている大五郎にかふかがそっと近づいていったのでこっそりカメラを構えてたら、この瞬間が撮れたのだった。

 かふか子猫時代の写真をもう1枚。こちらはニコン「D90」。ポイントは、かふかが乗っかってるのは液晶テレビってこと。よくあの狭いところに乗るなあと思いつつ、テレビを倒さないようにと祈ってたのだ。さすがに今はもう乗らない。

いやあテレビが倒れやしないかとヒヤヒヤしたのだけど、まずは写真を撮ってからという猫飼いあるあるなのだった。もちろんTVは無事で、今でも使ってます。2008年9月 ニコン D90

 2008年といえば世界初のミラーレス一眼、パナソニック「G1」が誕生した年でもある。わたしが最初に買ったのは2009年にその上位モデルとして出た「GH1」。EVF搭載でモニターはバリアングルで、フルHD動画が撮れる最先端のカメラだったのだ。この写真は第99回で使ったもの。

なぜか16:9で撮ってた。この頃、GH1を使って16:9で撮るのがマイブームだったのだ。神奈川県のとある墓地にいた猫。ピンクの舌が可愛い。2009年4月 パナソニック LUMIX DMC-GH1

 パナソニックとオリンパスがいちはやくマイクロフォーサーズでミラーレス一眼に乗り出し、新しい市場が形成されていったのである。この頃が、デジタルカメラ最盛期だったといって過言じゃない。CIPAが公表しているデジタルカメラの出荷台数を見ると、2008~2010年がピークなのだ。それを支えていたのが出荷台数の9割近くを占めていたコンパクトデジカメだ。

 最後はそんなコンパクトデジカメで撮ったものを2枚。これは真冬の寒い日にキヤノン「Powershot SX1 IS」で撮った大人と子供の猫。日向でぴったり寄り添って暖をとってたのが印象的で、鉄橋に電車が通るタイミングを待って録った記憶がある。第86回で使った写真だ。

大人猫と子猫が日向でくっつきあってる後ろを、乗り心地の良い暖房の効いた特急列車が駆け抜けていくというそんなシーンなのだった。2009年1月 キヤノン Powershot SX1 IS

 もう1枚はもうちょっとさかのぼって富士フイルム「FinePix F100fd」で撮ったもの。とある公園、膝に2匹乗っかってきたと思ったら、くつろいで舐めはじめたので右手にカメラを持って腕を伸ばして自撮り。モニターは固定式でくるっと回転して自撮りできますなんて機能はなかったので、撮影は「だいたいこんなアングルかな」って感じの勘撮りなのだった。

 懐かしいですな、FinePix。

公園のデュアル膝猫。どちらも去勢済みだが、昔は去勢の印として耳カットではなく耳ピアスをするケースもあったが、この写真のようにいつしか取れちゃうのが問題なのだった。2008年3月 富士フイルム FinePix F100fd

 この公園の猫、猫ボランティアの方がぜんぶ去勢したおかげで増えることなく、最後まで残った猫数匹もボランティアの方が里親になって引き取ったりして、今はもういないのだった(たぶん)。

 連載700回記念ということで初期の写真を振り返ってみた(ただし、全部処理しなおしたので初出時よりは画質もよくなってます)。枚数が多すぎてピックアップ始めたらキリがなくなったので、最初の100回分ってことに絞ったのだけど、出てくるカメラがどれも懐かしいですな。

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筆者紹介─荻窪圭

 
著者近影 荻窪圭

老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/

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