JRAシステムサービスが「VeeamON TOUR JAPAN ONLINE」で講演
JRAの競馬業務を支える統合IT基盤、「4つのバックアップ課題」をVeeamで解決
2020年12月14日 08時00分更新
日本中央競馬会(JRA)の競馬業務を支える13の情報系ITシステム。これらはすべて統合IT基盤上で稼働しており、当然、日々の確実なデータバックアップも欠かせない。しかし、旧来運用してきたバックアップ基盤には“4つの課題”があった――。
2020年10月28日に開催されたカンファレンス「VeeamON TOUR JAPAN ONLINE」の顧客事例セッションでは、中央競馬にかかるシステムの開発/保守/運用を請け負うJRAシステムサービス(JRASS)が登壇。統合IT基盤の刷新にあわせてVeeamバックアップ製品を導入することで、これまで抱えていたバックアップにまつわる課題をすべて解決できたことを紹介した。
競馬業務を支える13の情報系システムを仮想化集約した統合IT基盤
1968年(昭和43年)設立のJRASSは、JRAのシステム開発や保守/運用を担う会社だ。たとえば勝馬投票券の販売や集計、払戻を行うシステム(トータリゼータシステム)をはじめ、全国の競馬場や場外馬券売場(WINS)に実況映像やオッズなどの情報を配信するシステム、競走馬管理システムなどの開発、またJRAの公式ホームページやインターネット投票システム運営などを手がけている。さらに自社事業として、PCやスマートフォンからJRA公式の競馬データが参照できる「JRA-VAN」サービスも展開している。
小城氏によると、JRAの競馬業務を支える情報系ITシステムは13を数え、それらはすべて「VMware vSphere」で仮想化された統合IT基盤上で稼働している。
13システムのうち、基幹システムは6つある。競馬開催日にオッズなどの情報を集配信する「インフォメーションシステム」、競走馬のオッズや成績などをWeb配信する「JRAホームページシステム」、全国18事業所の経理業務を取り扱い、レースの賞金や給与計算なども行う「会計/従業員給与管理システム」、JRA全職員にデスクトップ環境(3000台超)を提供する「仮想デスクトップシステム」など、いずれも重要度が高いシステムだ。
第1世代の統合IT基盤は2015年から稼働しており、JRASSでは大規模障害や災害発生によるリスクに備えて、業務終了後や夜間に統合IT基盤上の全サーバーをバックアップする運用を続けてきた。ただし、そこには大きく4つの課題もあったと、小城氏は証言する。
そこで、今年2020年に構築した第2世代の統合IT基盤では、仮想化環境との親和性が高いVeeamのバックアップ製品「Veeam Backup & Replication(VBR)」を採用し、これらの課題をすべて解消したという。以下では、これまで抱えていた「4つのバックアップ課題」とVBRによる解決策、そして小城氏の評価を見てみよう。
第1世代のバックアップ業務課題と、Veeam導入による解決策
●バックアップの失敗や管理の煩雑さ
第1世代基盤のバックアップでは「D2D2T方式」を採用していた。まず各システムからディスクリポジトリにバックアップをとり、さらにそのバックアップデータのコピーをテープに記録する方式だ。バックアップテープは毎日遠隔地へ輸送し、災害復旧対策(DR対策)も実施していた。ただしこうした管理作業は煩雑であり、加えてバックアップ処理の失敗もしばしば起きていたという。
バックアップ処理は業務時間外の夜間に行うため、たとえば処理中にディスクフルやテープ不良で異常終了しても、運用担当者がそれに気づくのは翌朝になる。そのためバックアップテープの発送時間に間に合わず、その日の輸送をあきらめることもしばしばあったという。また、テープ装置のクリーニングや残容量チェックなどを日々行う必要があり、運用者の業務負担も高かった。
そこで第2世代基盤では、VBRが備えるレプリケーションとWANアクセラレーションの機能を利用して、テープではなくネットワーク経由での遠隔バックアップに変更した。小城氏は、「バックアップ処理の失敗が減ったうえ、テープ輸送コストの削減、テープメディアの破損や紛失のリスクからの解放といったメリットがあった」と評価する。
●バックアップのパフォーマンス問題
テープへの書き込み処理には時間がかかる。第1世代基盤では、バックアップ対象のシステムによっては最大10時間もの時間を要しており、その処理が途中で異常終了すると再度やり直しとなっていた。また、長時間の処理中にシステムのリカバリ要請があっても、「まだ処理が終わっていない」と断る以外になかったという。
第2世代ではテープバックアップの廃止に加えて、VBRが備える差分取得/重複排除/圧縮といった仕組みによってバックアップ容量自体が削減され、効率的なバックアップ処理が行えるようになった。小城氏は「パフォーマンス問題を気にすることが少なくなった」と語る。
●バックアップソフトの乱立
第1世代基盤ではWindows/Linuxサーバー、クライアント、Oracleデータベースのそれぞれに対応した、4種類のバックアップソフトを使用していたという。複数のソフトを併用すると、運用者が個々のソフトに対して十分に理解できず、リカバリなどの操作が安全にできなくおそれがある。またそれぞれに設定項目も異なるため、運用者には高いスキルが求められ、運用が属人化してしまっていた。
第2世代基盤では、VBRを採用したことでこれらのバックアップソフトを1つにまとめることができた。シンプルなGUIを使って誰でも簡単にバックアップ設定ができ、さらにポリシー設定によって、新規に作成した仮想マシンが自動的にバックアップ対象に追加される点を評価しているという。「リカバリ方法もシンプルで、迅速かつ安全に実行できる」(小城氏)。
●バックアップソフトのライセンス費用高騰
第1世代基盤で使用していた複数のバックアップソフトは、それぞれライセンス課金方式が異なっていた。サーバー単位の課金方式をとるソフトの場合、仮想化統合を進めても仮想サーバー1台ずつに課金されることになり、大きなコスト圧縮につながらなかったという。
Veeamの場合、仮想化ホスト(物理サーバー)のCPU単位での課金となるため、仮想マシンを何台増やしてもライセンス料金は変わらない。Oracleデータベースのバックアップ機能はオプションだが、「Oracle Recovery Manager(RMAN)」と連携して動作し、トランザクションレベルでのリカバリに対応する。
「CPUライセンスも他社製品に比べて安価であり、申し分ない。さらに驚くことに、Windowsクライアント端末のバックアップは無償だ。エージェントをインストールしてクライアント側からバックアップを指示する必要はあるが、クライアント端末であればまったく問題ない」(小城氏)
* * *
第2世代でVeeamを採用し、従来の課題を解決したことにより、「パフォーマンス改善や業務効率アップ」「シンプルで安定したバックアップ管理」「TCO(総所有コスト)削減」というメリットが得られたと、小城氏は説明した。
「皆様の会社でも同様のバックアップ課題がある場合には、ぜひともVeeamのバックアップソフトを検討いただければと思う」(小城氏)
最後に小城氏は「Veeamへのお願い」として、今後も信頼性の高いバックアップソフトとして進化させると同時に、「ライセンス費用の値上げだけはぜひとも避けていただきたい」「GUIの日本語化も心からお願いしたい」とユーモアを交えてコメントした。Veeamでは製品の日本語化を推進する方針を示しており、後者に関しては小城氏の希望もそう遠くないうちに叶いそうだ。
(提供:Veeam Software)
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