精度重視のためサポートするのは
INT 8ないしBFloat16のみ
さて価格や性能はおいておくとして、Flex Logicはどうやってこれを実現したか? であるが、基本的な流れは下の画像の通り。64サイクルが一つの区切りになっており、Load/MAC/Saveをパイプライン式に行なえるようになっている。
TPUを2次元構造に並べるベンダーもいくつかあるが、常に2次元を使い切れるとは限らないのが欠点。一方で1次元構造なら、効率は良いものの複雑なネットワークでは通信のレイテンシーが大きくなるという問題もある
ちなみに同社の基本的な発想は精度重視だそうで、それもあって例えばFPGAなどで多用されるBinary(Int 1)やInt 4などのデータ型は使われず、サポートされるのはINT 8ないしBFloat16になっている。
BFloat16では指数部8bit/仮数部7bit(+符号)なので、INT 8の演算エンジンがそのまま流用できるので、都合が良いということだろう。上の画像でINTだと64 MACsなのにBF16だと32 MACsというのは、2つのMACユニットで1つのBFloat16を処理しているのだと思われる。
このTPUが16個と、他にFPGAロジック(図中のEFLX Logic)や2MBのL2 SRAM、それとXFLX Interconnetが組み合わさって1つのブロックを形成。InferX X1にはこれが4ブロック実装されるので、TPUは合計で64個、L2 SRAMは8MBとなる。
おのおののTPUにはMACユニットが64個あるので、トータルで4K MACsということになり、それなりの演算密度ではあるのだが、InferX X1の最大の特徴はこのXFLX Interconnectにある。
上の画像にも“Tensor Processors are Reconfigurable”とあるが、なにがReconfigurableか? というとTPUそのものではなく、TPU同士をどうつなぐかを動的に変更できるというものである。
Reconfigurationは4μsで(つまり1秒間に最大25万回)変更が可能とされている。これで十分かというと、扱うデータ量やネットワークの層数に依存するが、例えば100fpsを実現したいと思うと、1枚あたり2500回のネットワーク変更が可能なので、普通に考えれば十分であろう。
ちなみにこうした複数のTPUを連続して動かすケースでは、ある段のTPUの出力が(そのままメモリーなどを介さずに)次のTPUに渡せるので、メモリー帯域の節約にもなるしボトルネックの削減にもなるとしている。

この連載の記事
-
第852回
PC
Google最新TPU「Ironwood」は前世代比4.7倍の性能向上かつ160Wの低消費電力で圧倒的省エネを実現 -
第851回
PC
Instinct MI400/MI500登場でAI/HPC向けGPUはどう変わる? CoWoS-L採用の詳細も判明 AMD GPUロードマップ -
第850回
デジタル
Zen 6+Zen 6c、そしてZen 7へ! EPYCは256コアへ向かう AMD CPUロードマップ -
第849回
PC
d-MatrixのAIプロセッサーCorsairはNVIDIA GB200に匹敵する性能を600Wの消費電力で実現 -
第848回
PC
消えたTofinoの残響 Intel IPU E2200がつなぐイーサネットの未来 -
第847回
PC
国産プロセッサーのPEZY-SC4sが消費電力わずか212Wで高効率99.2%を記録! 次世代省電力チップの決定版に王手 -
第846回
PC
Eコア288基の次世代Xeon「Clearwater Forest」に見る効率設計の極意 インテル CPUロードマップ -
第845回
PC
最大256MB共有キャッシュ対応で大規模処理も快適! Cuzcoが実現する高性能・拡張自在なRISC-Vプロセッサーの秘密 -
第844回
PC
耐量子暗号対応でセキュリティ強化! IBMのPower11が叶えた高信頼性と高速AI推論 -
第843回
PC
NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する? -
第842回
PC
双方向8Tbps伝送の次世代光インターコネクト! AyarLabsのTeraPHYがもたらす革新的光通信の詳細 - この連載の一覧へ















