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コロナ禍を生き残るためのテレワークの進め方 第8回

ビジネスチャットとWeb会議が埋められないコミュニケーションを実現

雑談も心理的安全性もないテレワーク? ならば「仮想オフィス」だ

2020年10月12日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 テレワーク最大の課題である「コミュニケーション不足」を補うためのツールとして、「仮想オフィス」が注目を集めている。物理オフィスの感覚を仮想的に再現し、チャットやWeb会議で埋められなかった挨拶、雑談、相談、声かけなどコミュニケーションを実現する「仮想オフィス」のコンセプトと製品について見ていきたい。

ビジネスチャットで補えないコミュニケーションを補う

 緊急事態宣言を契機としたテレワーク導入がスタートして、すでに半年が経った。しっかり根付いた会社、オフィス出勤に戻った会社、両者を併用すべく模索している会社など、いろいろなフェーズがあるだろうが、多くのビジネスパーソンはテレワーク共通の課題として「コミュニケーション不足」を感じたのではないだろうか? 普段当たり前のようにオフィスや移動中に同僚と交わしていた雑談や相談がなくなり、テレワークの中で孤独や喪失感を抱える人は多い。また、メンバーや部下の仕事が見えなくなり、疑心暗鬼に陥ったり、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)の負荷が重くなったという事例も見受けられる。

 こうしたコミュニケーション不足を補う方法として、ビジネスチャットを活用する会社も多い。実際、私がコミュニケーション不足に対する解決法を相談されたら、おそらくビジネスチャットで雑談用のスレッドやチャンネルを作るようにアドバイスするだろう。過去にビジネスチャットを導入した会社の取材でも、雑談、趣味、出身地などさまざまなテーマで専用のスレッドやチャンネルを作り、従業員が気軽に投稿できる環境を得られたという事例がよくあった。

 しかし、ビジネスチャットの比重が高まってくると、業務以外の会話がやりにくいという状況が生まれるのも事実だ。特に大規模な組織でチャットを導入する場合は、従業員がチャンネル全員相手に投稿する心理的安全性が得にくい。本来求められていた双方向の闊達なやりとりが失われ、上意下達的なアナウンスになりがちである。

 そもそも、リアルオフィスであった雑談や気軽な相談環境をチャットで再現するのはかなり困難だ。相手の居場所や状況も把握しにくいし、口頭のやりとりをすべてテキスト化するスキルは多くの人が持ち合わせていない。もちろん、「Skypeをつなぎっぱなしにする」といった方法もないわけではないが、在宅勤務の場合は家族の声や生活音まですべて入ってしまうため、オフィスのような気軽なやりとりは難しい。

テレワーク時の「オフィス感」を実現する仮想オフィスに注目

 こうしたテレワークにおけるコミュニケーション不足を解消するツールとして最近注目を集めているのが「仮想オフィス」になる。製品ジャンルとして確立しているわけではないため、バーチャルスペースの提供、メンバーのステータス表示、音声やビデオ、チャットでの会話など機能はさまざま。とはいえ、物理オフィスの感覚を再現するという目的は共通しており、チャットやWeb会議で埋められなかった挨拶、雑談、相談、声かけなどリアルオフィスでのコミュニケーションを実現する。いくつか紹介していこう。

・Remotty(ソニックガーデン)

働き方改革が試行される以前からリモートワークを実践してきた受託開発会社ソニックガーデンの仮想オフィスサービス。チャットやWeb会議、グループウェアなどで補えないオープンでリアルタイムなやりとりをテレワーク環境で実現すべく開発された。入力したテキストが他のメンバーに流れるという点ではチャットツールに見えるが、基本はPCのカメラを使って、業務中の様子を定期的に撮影して、他のメンバーと共有するという機能。働いているメンバーの顔を見ながらの仕事は安心感があるし、相手の机に行くように相談することもできる。詳細は柳谷氏のレビュー(関連記事:オフィスにいる感覚を再現する仮想オフィス「Remotty」)を参照してもらいたい。

ソニックガーデンのRemotty

■関連サイト


・Sococo(テレワークマネジメント)

20年以上前からテレワークを推進してきた田澤由利氏が率いるテレワークマネジメントが提供する仮想オフィスサービス。リアルオフィスを模したオフィスレイアウトを選び、ログインするとオフィスに仮想出勤する形となる。各メンバーの在席状況も一目でわかり、名前をタッチするとチャット、音声、ビデオで気軽にやりとりできる。また、会議室に行くと、資料の共有ができ、もちろん外出先からも会議に参加することが可能だ。

■関連サイト


・Ovice(NIMARU TECHNOLOGY)

リモートワークやイベント、展示会、コミュニティスペースなど多種多様な使い方を想定したオンラインスペースサービス。俯瞰されたオープンスペースでは、別のユーザーに近づくだけで会話ができ、そのまま画面共有できる。逆にオープンスペースから隔離された会議室では会議が可能で、部屋をロックすることも可能。スペースのレイアウトは用途にあわせていろいろ選べる。同時接続50名で月額5000円から利用できるという価格帯も魅力的だ。

Oviceのオープンスペース

■関連サイト


・Remo Virtual Office(Remo)

交流会やカンファレンス向けの「Remo Conference」を提供する仮想オフィスサービス。メンバーのみ利用できるプライベートスペースを構築し、オフィスを上から見たようなレイアウトで自らの座る場所を指定。オンライン/退席中/邪魔不可などのステータスは他のメンバーにオープンにされ、ビデオ、チャット、音声、画面共有、ホワイトボード、管理者によるブロードキャストも可能となっている。Slackとの連携も可能。

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・クラウドオフィスRISA(OPSION)

大阪のOPSIONが手がける仮想オフィスサービス。髪型や顔のパーツを使った自分だけのアバターを作成し、在宅勤務やリモートワークのユーザーも同じ仮想オフィスで共同作業するという「セカンドライフのオフィス版」のようなイメージだ。常時接続を前提とした高音質な音声通話やテキストチャットを使って気軽な雑談ができるという。

■関連サイト


・仮想オフィス Walkabout Workplace(日立ソリューションズ)

2020年7月に発表されたばかりの仮想オフィスサービスで、米Walkabout Collaborativeの製品を日立ソリューションズが販売する。社員は仮想環境で自室を作ることができ、自身のステータスはリアルタイムに更新されるため、話しかけてよいかがすぐわかるという。また、会議室や休憩ルームなどでは雑談や打ち合わせもでき、誰と誰が会話しているのかも可視化されるとのこと。場所とひも付けたコミュニケーションを実現できるのか特徴と言える(関連記事:日立ソリューションズ、テレワークの不安を解消する「仮想オフィス」を展開)。


・NeWork(NTTコミュニケーションズ)

「リアルより気軽に話しかけられる」ことを目指して開発されたNTTコミュニケーションズの「オンラインワークスペース」で、2020年8月に発表されたばかり。サービスにログインすると自分の居場所である「ワークプレイス」に入り、その中ではプロジェクトや話題ごとの「バブル」を作ることができる。バブルは「仮想的な部屋」として機能し、参加しているときは発言するだけでメンバーと会話できる。「オープン(いつでもOK)」「ワーク(話しかけるのは可)」「ゾーン(集中時間)」の3つのモードによって、アイコンの色が変化する。ビデオや資料共有も可能で、Webブラウザ上でリアルタイム通信を実現するWebRTCプラットフォーム「SkyWeb」を用いる。現在は事前登録を受付中(関連記事:テレワークで失われた“立ち話感覚”を、NTT Comが「NeWork」披露)。

NTTコミュニケーションズのNeWork

■関連サイト


・BONX for BUSINESS(BONX)

いわゆる仮想オフィスのサービスとは異なるが、「BONX for BUISINESS」も紹介したい。BONX for BUISINESSはスマートフォンを使って30人までの音声コミュニケーションを可能にするサービス。手持ちのマイクイヤフォンのほか、純正ヘッドセットの「BONX Grip」を使えば、発話検知によるハンズフリー通話や可能。声でつながることでリモートでも同じオフィスのようにコミュニケーションができるため、チームワークを実現しやすい。

■関連サイト

 このように仮想オフィスのサービスやソリューションはどんどん増えており、オフィスのような感覚を実現するユニークな機能も追加されていくことになりそうだ。ビジネスチャットやWeb会議が埋められないコミュニケーションのスキマを埋めるツールとして注目しておきたい。

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