業務効率化のメリットはコスト削減だけではない!4つの手順で実現
少子高齢化に加え、世界経済の影響を受けてのインフレ懸念など、日本を取り巻く経済情勢は厳しさを増しています。国内市場でシェアを維持し生き残っていくためには、業務の効率化が喫緊の課題といえます。
今回は、コスト削減だけではない業務効率化のメリットや、効率化に向けて具体的に何をするべきなのか、注意点もあわせて説明します。
業務効率化とその目的(メリット)
まずは業務効率化とは何か、目的とすべきことや、どのようなメリットがあるのかについて確認してみましょう。
業務効率化とは
業務効率化とはタスク(求められている役割や仕事)の実行を効率化することです。業務効率化により、人的(時間的)コスト削減や生産性の向上が期待できます。
現状、日本は労働人口の減少や市場の縮減という厳しい状況下にあり、シェアの維持や、ましてや事業拡大を図るには、さらなる効率化が必要とされます。昨今の「働き方改革」の流れもあり、人材不足のなか、今ある仕事を既存の人員で回していくにしても、労働時間を増やさず適正な規模に抑えなくてはなりません。これらにいかに対応するかが課題であり、近年は業務効率化の手段として、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入する企業も増えています。
さらに、真の業務効率化には、自部門にかかわる業務効率化(部分最適)でなく、全体を見渡した最適化が求められます。場合によってはRPAを併用するなどして、ドラスティックな業務フローの改善(業務改革)が必要となるでしょう。
業務効率化の目的(メリット)
業務効率化の目的は、生産性の向上による利益増大です。また、従業員の満足度向上や業績アップが期待できます。
人員や設備の追加投入ができず収益の機会損失が生じていたり、既存業務の時間的(人的)コストを削減しつつ収益性を向上させる必要が生じたりした場合に、業務効率化を検討することになりますが、コストにのみフォーカスするのではなく、利益を増大させる方向で考えるほうがいいでしょう。
業務効率化が実現できれば、目的とする利益増加以外に、企業にとって好ましい副産物が生じます。労働時間の削減や従業員へ利益還元することで、従業員の定着率や勤労意欲の向上が期待できるほか、得た収益で成長分野への投資も可能になります。企業活動において良いスパイラルを築いていけることでしょう。
業務効率化の実現に向けた手順
それでは、業務効率化を実現するにはどのような手順をとればよいのでしょうか。業務効率化に向けた4つのプロセスを簡単に紹介します。
1. 現状把握、可視化
まずは、業務がどのように行われているのか知る必要があります。業務フローを可視化して、仕事の流れを客観的に把握し、ボトルネックを浮き出させます。
やり方としては、ひとつの業務を各プロセスに分割し、その流れを見ることでおのおのの関連性や因果関係を見ていきます。ここで注意すべきなのは、業務マニュアルからプロセスマップを作るより、現場からの聞き取りによって、実態を正確に把握することです。プロセスごとにかかる時間の計測や業務遂行の状況も調査しておきましょう。
2. 対象業務の決定
現状がつかめてきたら、次に業務(フロー)のなかでどのプロセスがボトルネックなのかを特定し、改善対象として選定します。具体的には以下のようなプロセスを中心に決定するとよいでしょう。
・手戻り(やり直し)がよく起こる
・次工程がある業務
・業務にかかる時間のバラつきが大きい
第一に、業務フロー全体の効率を下げているのは、後工程からの戻りとやり直しがよく発生するプロセスです。エラーが多く作業効率が低い分、試行回数でカバーしている面があります。前工程の品質改善策が必要ですが、手戻りの工程が担っていたチェック体制を温存し、品質維持や時短につなげるほうがいいこともあります。この場合はプロセスの再設計が必要になるでしょう。
また、現在のプロセスを完了しないと次工程に着手できない場合、遅れが全体に影響することになります。該当プロセスの改善が最優先なのはもちろんですが、部門分担制でなくひとつの部門で一体管理し、待ち時間を最小限に抑える方法もあります。
そのほか、各プロセスにかかる平均時間を計り、バラつきが大きければ改善余地が大きい可能性が高いです。つまり、平均時間の長さで軽重を判断するのではなく、平均時間からの散らばり具合を確認する方法です。
3. ECRSを用いた見直しと新たな手段の検討
改善すべき対象業務や課題を見つけたら、業務改善のフレームワーク「ECRS」に沿って見直しすることをおすすめします。ECRSとは4つのステップを用いて既存の業務プロセスを見直す改善手法です。
1.Eliminate「排除」
業務フローのなかで不要な工程を廃止します。形骸化した慣例もそれに当たります。
2.Combine「結合(分離)」
類似業務の統合や、行き過ぎた分業の廃止です。逆に規模化しており、分業による効率化が適する場合は「分離」が必要です。
3.Rearrange「交換」
業務フローの再設計です。プロセスの順番を並べ替え、効率化できないか検討します。担当部署や人員の入れ替えも含みます。
4.Simplify「簡素化」
作業を簡素化しても役割が果たせるかを検討します。標準化したり作業手順をシンプルにすることで、ミス防止と負担軽減も図れます。
ECRSのステップに沿って業務プロセスを洗練させていくなかで、効率化に役立つ新しい技術やサービスを検討するのもいいでしょう。経営資源をコア事業に集中させ、それ以外の業務はRPAのようなシステム活用や外部委託をするのもひとつの方法です。
また、ツールやシステムの導入により効率化を図るのも有効です。例えば、電子処理を自動化するRPAは業務量や繁閑の差に柔軟に対応でき、高精度かつ短時間処理を実現します。
4. 検証と評価
見直しにより再構築された業務フローで、業務がきちんと遂行できているかの検証と、改善効果が出ているかの評価を行いましょう。変更によって、業務の精度低下や機能不全が起こっていないか、まずはチェックが必要です。そして、新しい業務フローの処理時間やコストを測定し、課題が解決できているかどうか評価を行います。結果によっては軌道修正の検討も必要です。
業務効率化の注意点
業務効率化には業務フローと課題の把握、改善目標の設定が重要です。目の前の問題にとらわれて拙速な解決手段を求めがちですが、目的や目標に応じた最適な手段を選ぶことを忘れないようにしましょう。
さらに、業務効率化を成功させるには社内体制の整備も必要です。現状の把握と分析、対象業務の選定、業務プロセスの見直しや再構築、新たな手段の導入・検討など多くのステップを、継続的に実施しなくてはならないからです。
業務効率化のプロジェクトの管理部門を決定し、各自が分担の割り当て、スケジュール、達成目標を明確に定め、プロジェクトに実効性を持たせましょう。
現状分析と適切な手段選びで業務効率化を実現
業務の効率化はコスト削減だけでなく、従業員満足度の向上にもつながります。業務効率化を実現するには、現在抱えている問題の特定・分析と最適な手段の選定が大切になります。効率化の手段としては業務改善活動のほか、アウトソーシング、RPAのようなシステム・ツールの活用があります。業務効率化の対策実施後は、効果検証や評価を行って社内で共有し、今後に活かしていきましょう。
※本ページの内容はユーザックシステムの「業務改善とIT活用のトビラ」の転載です。転載元はこちらです。