年次イベント「SAPPHIRE NOW Reimagined」開催、気候変動問題への取り組み「Climate 21」も
SAP、インダストリー4.0を加速させる「Industry Cloud」発表
2020年07月01日 07時00分更新
CO2削減と収益性改善を両立させるための「Climate 21」の取り組みと新製品
Climate 21は、地球温暖化など環境問題に対するSAPの社会的責任(CSR)を示したともいえるイニシアティブだ。
「新型コロナの危機はいつか収束に向かう。しかし気候変動問題は(コロナ危機の後も)未解決のまま残る、人類最大の問題だ。いま行動を起こすことで、CO2排出量を長期的に削減させることができる」(ザウアーエシッヒ氏)
CO2は、調達、製造、物流、ディストリビューション、廃棄と、企業活動のあらゆるプロセスにおいて排出される。一方で、これらはSAPが提供する業務システムのカバー範囲でもある。ザウアーエシッヒ氏は、SAPは業務ソフトウェアのリーダーであり、世界中の商取引の77%が何らかの形でSAPシステムを使っていることを紹介し、「その意味でSAPはユニークなポジションにある。次のアクションを起こすべきタイミングだ」と述べて、Climate 21を発表した。
Climate 21が目指すのは、「CO2排出量を削減しつつ収益性を改善すること」だ。そしてザウアーエシッヒ氏は、これは実現不可能ではないと強調する。実際に、持続可能性の高いビジネスを展開する企業は、それが低/中レベルの企業よりも業績が良いという。「“デジタル”というDNAに持続可能性の要素を組み合わせることで、企業は長期的に良い業績を収めることができる」(同氏)。
このイニシアティブを支援する最初の製品が「SAP Product Carbon Footprint Analytics」だ。これは自社の事業活動におけるCO2排出量を計測/算出して把握できるもので、その分析を通じて事業活動の最適化につなげることができる。
実際に同製品を使い、CO2排出削減に取り組んでいるのがドイツの天然素材メーカー、Döhlerだ。同社が製造、提供する食品/飲料の原材料は5000種類以上に及び、1万5000以上の商品で利用されている。
基調講演に登場したDöhler CEOのアンドレアス・クライン氏は、SAP Product Carbon Footprint Analyticsについて「統合型のソリューションであることに魅力を感じている」と語る。同社ではすでにS/4HANAをオンプレミス導入し、SAP Analytics Cloudも導入済みだったため、SAP Product Carbon Footprint Analyticsはプラグイン形式で簡単に導入できたという。
導入の狙いは「CO2排出量の正確な測定」だ。クライン氏は、これは長期的な取り組みになることを認めながらも、「デジタル化と持続可能性の取り組みを一緒に進めることができる。デジタル化によりプロセスが効率化され、同時に(CO2排出量の数字について)透明性も得られる」と述べている。
ザウアーエシッヒ氏は、「Climate 21はインテリジェントエンタープライズの具現化」だと述べ、自身のLinkedInアカウントにおいて「いいね」1件で1本の植樹をするソーシャルキャンペーンを始めたと明かした。持続可能性を企業の成功を測る尺度に採用すべきだとも提案している。
「小さな一歩が大きな変化につながる」(ザウアーエシッヒ氏)