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オービックのグループウェアを作ったスーパープログラマーは今日もコードを書き続ける

TinyBetterの樋口CEO、クラウド時代のグループウェアを再定義する

2020年06月02日 10時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

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DX以前に社内コミュニケーションの問題を抱えている会社が多い

大谷:なるほど。とはいえ、ここまで濃度の高い会社員時代だと、やり尽くした感あったのではないですか?

樋口:結局、オービックには14年いたのですが、確かに「やりきった感」がありましたね。そこで、1回転職を経て、起業を考えるようになりました。

大谷:小宮さんはどのタイミングでジョインするんでしょうか?

小宮:私の方が先にオービックを辞めています。実は在籍時から毎年1本映画を撮るみたいなことをやっていて、6時に新橋に集まって、2時間ミーティングしてからタクシーで出社するみたいな生活でした(笑)。実際、プロデューサーとして関わっている「海酒」という短編映画は、2016年にカンヌ国際映画祭に出展しているんです。オービックはどちらかというと堅い会社だったので、もう少し自由度の高い会社に行きたいなということで、ベンチャーに転職しています。

TinyBetter 小宮 誠氏

大谷:小宮さんもけっこう個性的なサラリーマン生活だったんですね。樋口さんとは以前からおつきあいがあったのですか?

小宮:社員研修のサブ講師をやらせてもらったこともあったので、2016年に辞めたときに樋口さんに挨拶いったのですが、そのとき映画の話をしたのがきっかけで、月に1回くらいで飲みに行くようになりました。

樋口:実は十年ぶりに会話したという感じです。辞めた者同士コミュニケーションしていたのですが、結局自分で会社起こそうと思って小宮に声をかけ、2017年にTinyBetter(タイニーベター)を創業しました。

大谷:会社名の由来はなんですか? Webサイトを見ると、ソフトウェア開発やコンサルティング、映像編集、ドローンなどいろいろやっていますよね。

樋口:オービックの時は、社員の改善要求に応えてプログラムを書くと、社員は喜んでくれました。そのときの気持ちが原点です。今までは社内に向けてやっていたのですが、TinyBetterという名前の通り、これからは自分たちの持っている能力を使って社会や文化、コミュニティに対して「ちょっとよくする」ことをやっていきたいなと思っています。当然、僕だったらプログラムだし、小宮だったら映画になります。

大谷:では、ITというフィールドでグループウェアを作ったんですね。

樋口:はい。コンサルティングの事業をやっていく中で、ITシステムの連携に困っている会社がけっこう多いことに気がついたんです。グループウェアもずいぶん古くなっていて、使いづらいという声が増えています。今はZoomやSlackのように、既存のサービスを置き換えているプロダクトもけっこう出ています。だったら、グループウェア分野でもチャレンジしてみたいなと思って作ったのがHignullです。「NULL」からということで、ゼロから書き直しています。

テクノロジー面や社会情勢もずいぶん様変わりしました。オービック時代はそれこそクラウドも、jQueryもなかった。でも、いまはクラウドがあり、チャットボットがあり、AIがあります。同じ領域だけど使える武器が違うので、新しいテクノロジースタックで作り直しています。

小宮:今はDXを目指す会社多いですけど、コンサルティングで入ると、DX以前の問題としてそもそも社内向けのITが全然整っていない会社だらけなんです。拠点ごとにITツールが違うとか、同じ場所なのに営業部と経理部でツール違うとか。

だから、「DXより前に、社内向けにやることあるよね」というのが、私たちの課題感なんです。情報共有だったり、タスク管理だったり、サイボウズやdesknet'sを入れて終わりじゃないんです。ベンチャーはSlackやTrelloを入れるところ多いですが、日本の多くの会社では定番ってまだないですよね。

サイボウズやグーグルに取って代わる「意気込み」は満々

大谷:さて、Hignullのインターフェイス見て驚くのは、タスク管理を見るとTrelloやBacklogのようなものがあり、カレンダーを見るとGoogleカレンダーのようなものがあり、ビジネスチャットを見るとSlackやChatworkのようなものがあり、単体のSaaSとして成り立つようなツールが集合体になっていることです。

統合型ビジネスクラウド「Hignull」のカレンダー画面

樋口:単体のアプリケーションとしてまず他社製品に負けておらず、しかもそれらが集合しているというアプリケーションを目指しています。

大谷:専門店の集合店ビックカメラみたいですね(笑)

樋口:カレンダー、連絡先、タスク管理、予約管理、フォーラム(掲示板)、会議室予約、座席表、電話メモ、プレゼンスなどの機能を持っています。このうち座席表、電話メモ、プレゼンスはセットになっていて、座席表とプレゼンスで居場所を確認し、電話メモを置くというイメージです。一通りの登録や確認は秘書代わりのチャットボットが対応してくれます。

大谷:特に推しの機能はあるんでしょうか?

小宮:ユニークなのはタスク管理とカレンダーですかね。タスク管理であればリスト型やカンバンボード、ガントチャートにも対応しています。割り振っていないタスクを検索で探し出したり、カレンダーと連携して各人の進捗管理もでき、リーダーにとってはうれしいと思います。TrelloやBacklogで欠けているところをカバーしている万能型タスク管理です。

Hignullのガントチャート

Hignullのカンバンボード

大谷:では、各メンバーはカレンダーを見れば、今日やらなけければいけないタスクや予定は全部わかるんですね。

小宮:はい。だから予定が入っていなくても、タスクが積み上がっている人に作業を割り当ててしまうといったこともなくなります。

樋口:あと、スケジュールは連絡先とうまく連携させて、商談管理までできるようにします。過去の商談履歴って、Excelに入れても読まないし、チャットだと流れますよね。だから、スケジュールの予定に連絡先をひも付けて、コメントを付けられるようにしています。商談の議事録をカレンダーに登録するようなイメージで、使いやすいUI/UXを目指しています。

小宮:実際、Excelで議事録とる方も多いですが、日付とあってなかったり、探しずらかったりします。Hignullでは、やりとりを人ごとに、スケジュールごとに整理できるので、あとからの利用が楽です。業務の現場で使いやすい形に情報が整理されているのが特徴です。

樋口:調整機能もユニークです。複数で予定を調整する場合も相手にアドレス(URL)を送れば、リアルタイムで更新されるので、空いている時間をすぐに調整できます。

機能的にはソーシャルカレンダーは競合になるのですが、複数名の登録もサポートしているし、重複しないカレンダーを複数作れます。予定も場所を登録しておけば、前後の移動時間もあらかじめ確保してくれます。

大谷:お話を聞いていると基本的にはサイボウズやG Suiteを機能的に補足するというより、そのまま乗り換えてこっちに来いみたいな製品ですよね。

樋口:もちろん、それを狙っているのですが、現実的には難しいとは思います(笑)。ただ、それくらいに意気込みではやりたいです。

お客さまとの話や競合の課題が出てきた面白そうな機能は今後も盛り込んで行こうと思っています。改善プロジェクトのタスクに加えて、また夜な夜なコードを書いています(笑)。

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