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「あらゆるデータソースのシングルゲートウェイ」と「ビジネスユーザのデータ活用基盤」

「SAP HANA Cloud/Data Warehouse Cloud」国内DCからの提供発表

2020年05月01日 07時00分更新

文● 五味明子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 SAPジャパンは2020年4月23日、独SAPが2019年5月に発表したクラウドデータマネジメントサービス「SAP HANA Cloud」および「SAP Data Warehouse Cloud」を日本国内のデータセンターから提供することを発表した。いずれもインメモリデータベース「SAP HANA」をベースにしたマネージドサービスで、提供開始は第2四半期(2020年4~6月期)の予定。

 SAPジャパン バイスプレジデント プラットフォーム&テクノロジ事業本部 本部長 チーフイノベーションオフィサーの首藤聡一郎氏は、国内でもクラウドネイティブなデータベースサービスへのニーズが高まっている点を強調する。

 「HANAが誕生してから約10年、国内でもさまざまな用途でHANAが使われてきたが、ここにきて『ビジネスオペレーションから生まれる“Oデータ”と、ユーザエクスペリエンスにひもづく“Xデータ”を紡ぎあわせ、新たな価値創出につなげていきたい、それもクラウド上で』という声をいただく機会が増えてきた。クラウドネイティブなHANAをベースにした今回のサービスは、国内のお客様のよりインテリジェントな企業活動を支援する」(首藤氏)

SAP HANA Cloudがめざすのは、OデータとXデータ(オペレーショナルデータとエクスペリエンスデータ)の連携から生まれるよりインテリジェントな企業活動の支援だ

SAP HANA Cloud:あらゆるデータソースのシングルゲートウェイ

 SAP HANA Cloudは、いわゆる“Database-as-a-Service(DaaS)”に位置づけられるソリューションで、クラウドネイティブなインメモリデータベースとして提供される。SAPジャパン プラットフォーム&テクノロジー事業本部 SAP HANA COE シニアディレクターの椛田后一氏は、「SAP HANA Cloudはすべてのエンタープライズデータのシングルゲートウェイ。経営者のためのマネージドサービスとして、新たにさまざまな機能を実装した」と語り、その中でももっとも重要な機能として以下の3点を紹介している。

SAP HANA Cloudはデータソースの場所を問わず、インメモリ上で仮想的に一元化して連携させるシングルゲートウェイとして機能する

●仮想データアクセス … SAP/Non-SAP、クラウド/オンプレミスを問わず、あらゆるデータソースのデータを仮想的(仮想テーブル、キャッシュ、レプリカなど)にHANA上に統合。ユーザからはHANAが単一のアクセスポイントとして機能し、透過的でリアルタイムなデータアクセスを実現。リモートデータとローカルデータをJOINして返すなど、SQLオプティマイザも機能強化。

SAP HANA Cloudの目玉機能ともいえる仮想データアクセス機能。データの場所や種類を問わず、データソースからダイレクトにデータを参照してビュー(仮想テーブル)をインメモリに展開、リアルタイムで透過的な高速アクセスを提供する

●データ階層化 … ひんぱんにアクセスされる「ホットデータ」、まれにアクセスされる「ウォームデータ」、ほとんどアクセスされることのない「コールドデータ」と、使用頻度に応じてデータを階層化し、ホットデータはインメモリに、ウォーム/コールドデータはストレージ(ローカル/クラウド)に自動で配置することで、パフォーマンスとコストのバランスを最適化

●Kubernetesによるリソース拡張(2020年中に実装予定) … ビジネスの状況に応じて柔軟にリソースを制御するために、Kubernetesによるスケーリングを実装。よりきめ細やかなリソース制御と容易な運用管理を実現へ

Kubernetesによるクラウドの自動リソース拡張は2020年第2四半期中に実装予定

 とくに注目すべきは、HANAをあらゆるデータソースのシングルゲートウェイとして機能させる仮想データアクセス機能だ。実際には、ローカル/リモート(パブリッククラウド含む)のデータソース上のテーブルからビュー(仮想テーブル)を作成してHANA上に展開、また仮想テーブルに対するクエリもキャッシュとしてHANAに展開されるが、ユーザ側からはすべてのデータがHANA上に統合されているように見え、透過的なデータアクセスが可能となる。仮想テーブルやキャッシュはインメモリにデータが保持されないので、メモリリソースを無駄に占有することはない。したがって新規のデータソースを連携させることも容易で、多種多様なデータ活用が促進されることになる。

 気になるのはリモートデータソースからデータを参照するときのパフォーマンスだが、椛田氏は「仮想テーブルやキャッシュはインメモリ上にデータを保持するわけではなく、仮想テーブルやキャッシュを通してデータを“流して”いるだけなので、メモリ使用量は多くない。ただし、仮想テーブルに頻繁にアクセスしたり、一定以上のサイズの仮想テーブル/キャッシュを作成する場合は、リサイジングでレプリカを作成してインメモリ上に展開し、パフォーマンスを担保することが可能」と語っており、アクセス頻度やデータサイズによってフェデレーション/キャッシュ/レプリケーションをオンラインで切り替える方法を推奨している。

 また、SAP HANA Cloudは“経営者のためのDaaS”を掲げており、ビジネスユーザにとって使いやすいインタフェース/エクスペリエンスを提供するため、インスタンス作成/デプロイは実質2ステップ(オプション含めると4ステップ)で完了し、データのアップロードやテーブルの作成などもごく簡単な操作で済むように設計されている点も大きな特徴のひとつといえる。

SAP HANA Cloudのインタフェース。インスタンスは実質2ステップで簡単に作成可能

SAP Data Warehouse Cloud:ビジネスユーザのための「データ活用プラットフォーム」

 上述のSAP HANA Cloudを基盤に、ビジネスユーザの利用にフォーカスしたインタフェース(ガバナンス、データモデリング、ビジネスモデリング、リポジトリ、セキュリティ)をサービスとして実装し、「データウェアハウス専用データベースのクラウドサービスではなく、ビジネスユーザのためのデータ活用プラットフォーム」(椛田氏)として提供されるのがSAP Data Warehouse Cloudだ。HANAをベースにした高速なデータアクセスと、ITユーザと業務ユーザのコラボレーションを同時に実現、さらに可視化ツールの「SAP Analytics Cloud」やサードパーティのBIツールと連携することで、エンドツーエンドの可視性とインサイトをビジネスユーザに提供する。

SAP Data Warehouse Cloudは、SAP HANA Cloudを基盤としたクラウドネイティブでデータマートレスなDWH。明細データレベルのリアルタイム分析を実現する

 従来のデータウェアハウスとSAP Data Warehouse Cloudの最大の違いは「データマートレス」にあると椛田氏は強調する。

 これまでのデータウェアハウスは、明細データに直接アクセスするのではなく、サマリテーブルやデータマートをIT部門があらかじめ作成してから分析を開始するケースが多かったため、データのアクセスに時間がかかり、またデータマートの開発/運用コストも肥大化しがちで、新規のデータソースを取り込みにくいというボトルネックが存在していた。一方で、SAP Data Warehouse Cloudは複数のデータソースをリアルタイムに連携するSAP HANA Cloudがバックエンドデータベースなので、データマートを作成する必要がなく、ビジネス部門の担当者による明細データへのダイレクトなリアルタイムアクセスが可能になる。

既存のデータベースとSAP HANA Cloudをベースにしたデータウェアハウスの最大の違いは「データマートレス」

 IT部門はデータマートの開発や運用/管理にあてていたリソースを削減し、ビジネス部門に対する付加価値の高いサポート(クラウドリソースの使用領域を適切に割り当てる、他のシステムとの連携を実現する、など)を提供することで、データ活用における全社的なレベルの向上も期待できる。いわば「全員参加型のデータウェアハウスであり、次世代データ活用基盤」(椛田氏)として機能させることが可能だ。

ビジネスユーザでも簡単に利用できるインタフェースを備え、従来IT部門に依頼していたデータのクレンジングやデータマート作成などをビジネスユーザ自身が行える。また可視化ツールのSAP Analytics Cloudを連携することで、データ活用のエンドツーエンドな環境が実現する

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 SAPジャパンは今後、SAP HANA CloudおよびSAP HANA Data Warehouse Cloudの国内展開において、アビームコンサルティングや富士通といったパートナー企業によるソリューションの提供を図るほか、ライブセミナーなどを通した情報提供やセルフラーニングコンテンツ/トライアル環境/バーチャルハンズオンなどの提供に注力していくという。インメモリデータベースとしてSAP HANAが世界に誕生してから約10年、ようやくクラウドネイティブなデータ活用のバックエンドとして本格的な普及を目指すフェーズに入ったようだ。

インメモリデータベースとしてHANAが登場して約10年が経過、今後はクラウドネイティブなデータベースとして新たなフェーズに入っていく

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