祖業をそのまま引き継いだKeysight
今回はHP編の最後として、KeysightとAvagoのその後を解説しよう。まずはKeysightから。
Keysight、正式名称はKeysight Technologiesである。分離した会社としての事業開始は2014年11月1日。同社の2014年10月31日、つまり分離直前のAgilentのEM(Electronic Measurement:電子計測器)部門における売上は約29億ドル。売上の36%がアメリカ国内、残り64%が海外でのものだった。この時点でおおむね9600名の従業員を抱えており、顧客は全世界に約1万4000社と説明されている。
2014年にスタートした時には、Measurement SolutionとCustomer Support and Servicesという2つの事業部門から構成されていた。
このうちMeasurement Solutionは、Communications Test Market(通信業界)、Aerospace and Defense Test Market(航空宇宙防衛)、Industrial, Computer and Semiconductor Test Market(工業/半導体)という大きく3つの市場を対象に、RFおよびマイクロ波製品、デジタル製品、その他という3カテゴリーの製品群を提供している。
このうち「その他」はバラエティーに富んでおり、それこそ電圧計や電流計、信号発生器の類の汎用品の他、半導体や基板のテスターに加え、防衛/政府部門向けの監視カメラおよびサブシステム、光ファイバー関連測定機器、顕微鏡(といっても原子間力顕微鏡や走査型電子顕微鏡などの電子顕微鏡である)などまで含まれている。
顕微鏡はまだわかるのだが、監視カメラソリューションは測定なのか? と若干の疑問はあるが、ニーズに対して応えた結果なのだろう。
一方のCustomer Support and Servicesの方だが、こちらは修理/較正/パーツ供給/中古再生品販売という、ごく当たり前のものだ。
ただ高精度の測定器の場合は定期的な較正が欠かせない(ピアノが定期的に調律師によってチューニングされないと、音程が狂うのと同じ)わけで、修理などとも合わせて定期的な売上が期待できる。
中古再生品販売は、一度引き取って修理や較正をやり直し、新品に準じた状態に仕上げて安価に販売する、いわゆるリファビッシュ品のことだ。
測定器が必要だが、最新のグレードのものは必要ないし、そこまでの予算もないユーザーには手頃なソリューションであり、長期的には自社のユーザーを増やすことで将来の売上も期待できることになる。
この2事業部門体制は2016年まで続いた。まだAgilent傘下にいた2012年からの財務状況をまとめたのが下表で、確実な売上は維持しているものの、あまり変動がなく成長という感じにはなっていない。
| 2012~2006年の業績(単位:ドル) | |||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 年度 | 売上 | 営業利益 | 純利益 | ||||
| Products | Services&Others | 合計 | |||||
| 2012 | 28億6200万 | 4億5300万 | 33億1500万 | 7億3300万 | 8億4100万 | ||
| 2013 | 24億3400万 | 4億5400万 | 28億8800万 | 4億9600万 | 4億5700万 | ||
| 2014 | 24億7900万 | 4億5400万 | 29億3300万 | 4億6900万 | 3億9200万 | ||
| 2015 | 24億800万 | 4億4800万 | 28億5600万 | 4億3100万 | 5億1300万 | ||
| 2016 | 24億4000万 | 4億7800万 | 29億1800万 | 4億600万 | 3億3500万 | ||
さてそのKeysightであるが、2016年8月に事業部門を再編する。Measurement Solutionsがあまりに多様多種すぎるので、もう少しセグメント分けしようというのは理解できる。
Aerospace&Defence(航空宇宙防衛向け)がCommunications Solutionsに分類されたのはやや意外だが、扱っている製品はレーダーなどのミリ波機器向けも多いので、これはこれで妥当なのかもしれない
画像の出典は、Keysight Reporting Segments。
この結果、2017年からはCommunication Solution、Electronic Industrial Solutions、Service Solutionsの3部門になることが決まったのだが、2017年1月にIxiaを16億ドルの現金で買収することを発表、4月に買収を完了したことで再び4部門体制となる。
Ixiaはもともとはイーサネット/IPベースのネットワークテスターを提供する会社であったが、2009年にCatapult Communicationsを買収し、同社が抱えていたワイヤレス向けのネットワークテスターのラインナップを手に入れた。
その後もVeriWaveやAnue Systems、BreakingPoint Systems、Net Opticsといったさまざまなネットワーク関連テストソリューションのベンダーを買収、ラインナップを増強してきており、Ixiaの買収でKeysightはネットワーク向けテストという新しい部門を手にしたことになる。

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