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佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第14回

Bluetooth SIGの解説ビデオを見る

完全ワイヤレスを視野に入れた、新しいBluetooth規格「LE Audio」

2020年03月02日 17時40分更新

文● 佐々木喜洋 編集●ASCII

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 最近、Bluetoothの規格推進団体、Bluetooth SIGが“LE Audio”の解説動画「An Introduction To LE Audio」を公開した(英語のみ)。

 LE Audioがもたらす、Bluetoothの新しいユースケースをこの動画から抜粋して紹介してみようと思う。

 まず、オーディオ分野におけるBluetoothの現状から。2019年度には1億台ものBluetoothのオーディオ関連製品が出荷されたと述べられている。一方で、完全ワイヤレスイヤホンの普及や、マルチソース再生など、これまでのBluetooth規格では限界が見えてきたことも述べられている。そのために、次の20年を見据えた新しいアプローチとして“LE Audio”が登場したということだ。

 また、従来のBluetoothオーディオは“Classic Audio”と呼ばれ、これまでのBluetooth資産との互換性も保たれる。

完全ワイヤレスの通信がもっと安定する?

 LE Audioの導入により、4つの新しいユースケース・機能を提供できる。

 第1に「LC3コーデック」だ。

 これは、従来のSBCと同等の音質を、より小さなデータ量(ビットレート)にして送ることができる。グラフにもあるが、SBCの345kbpsと同等の音質評価を、LC3では160kbpsで得ることができる。設計側は、低電力と音質の兼ね合いにおいて、より高い柔軟性を持つことができる。

 第2に「マルチストリーム・オーディオ」である。

 従来のBluetoothでは、ひとつのスマートフォンから、ひとつの出力先(ヘッドホンやスピーカー)にしかデータを送ることができなかった。結果、完全ワイヤレスイヤホンでは、片側で一度信号を受けてから、もう一方にデータを転送する必要があった。これが、左右の音切れの問題につながっていたが、LE Audioでは、左右両方のイヤホンに直接信号を送れるようになり、リレー転送が不要となっているとのこと。また、左右の信号は数十マイクロ秒単位で同期されているそうだ。

マルチストリーム・オーディオ

従来のリレー伝送

 第3に補聴器のサポートである。現状、大人の15%が聴覚障害を持っており、さらに増える傾向にある。LE Audioは低電力・マルチストリームと言った利点から効果的な補聴器ができるようになるとのこと。

 最後に、Bluetooth SIGが最も重要だと考えるユースケース「ブロードキャスト」機能が紹介されている。

 従来のBluetoothオーディオでは、すでに述べたように「1:1」のデータ通信しかできなかったが、LE Audioでは「1:多数」の通信ができるようになる。この数は無制限で、機器ごとに“公開”にも“非公開”(限定)にもできる。これが「Audio Sharing」と呼ばれるもので、応用方法として“Personal Audio Sharing”と“Location Audio Sharing”の2種類が紹介されている。

 例えば、Personal Audio Sharingでは、1台のスマートフォンで再生中の音楽を周囲にいる友人たちと共有することができるようになる。一方、Location Audio Sharingではレストランや空港などで、近くにいる人に対して、公共アナウンスの音声を送ることができる。さらに、多言語化して配信することも可能だという。もちろんこの技術は、補聴器にも応用できる。

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