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業界を知り、業界をつなぐX-Tech JAWS 第23回

虎の穴と北海道テレビ放送はアップデートと業界動向を披露

Timers、POL、PIAZZAなどがビジネスと技術を語る第10回X-Tech JAWS

2020年02月05日 09時30分更新

文● 重森大 編集●大谷イビサ

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 既存業界とテクノロジーが混交する中、それぞれの業界でどのようにテクノロジーが活かされているのかを学び合うX-Tech JAWS。以前から気になってはいたのだけど、スケジュールが合わず参加できていなかった。そんな訳で1月15日に開催された「~新春あけおめX-Tech JAWS~」レポートをX-Tech JAWS初参加の重森がお届けする。

運営メンバー増員を報告する吉江瞬さん

FammはSavings Plansを活用して大幅コストダウンを実現

 既存のサービスをAWSに移行するのは、容易ではない。複数のサービスを連携させている場合は、特にハードルが高くなる。「家族の絆を深める」をテーマにサービス展開を進めるTimersも、既存サービスがそれぞれに連携しており、ビジネス全体をクラウド化するのは困難と思われた。しかしビジネスがスケールするに従ってインフラコスト、運用コストは増加。クラウド化を視野に入れざるを得なくなっていったと、「家族の絆を深めるプラットフォーム」と題して登壇したTimersの岩村 康平さんは語った。

Timersの岩村 康平さん

「Fammというアプリを軸に共有アルバム作成や、写真を使ったオリジナル商品作成、ママ専用スクールなど複数のサービスを展開してきました。これら既存のサービスをAWSに移行するのは簡単ではないと思われたので、完全に新規に構築するサービスでまずAWSの使い勝手を検証することにしました」(岩村さん)

 白羽の矢が立ったのは、プロカメラマン出張撮影サービスだ。サービスに登録している全国のプロカメラマンが、七五三など家族のイベントを出張撮影してくれる。価格は19,800円からと、リーズナブル。家族が撮影するよりいい写真が撮れるのはもちろんだが、撮影に気を取られてパパだけ行事に集中できない、なんてこともなくなる。岩村さんは立ち上げからこのサービスに携わり、システムをAWS上に構築した。

「長期間プロジェクトとして立ち上げたので、運用面を考慮してECS Fargateを使ったコンテナ化を採用しました。開発からデプロイまでの手間を減らし、プロダクトのコンセプト面に集中できました。またコスト面では、Savings Plansが大きな効果をもたらしています」(岩村さん)

 Savings Plansは2019年のre:Inventで発表されたばかりのコスト削減サービス。1年間もしくは3年間にわたって一定の使用量をコミットすることで、割引が適用される。リザーブドインスタンスに似ているが、スケーリングを考慮しており、実際の利用量の変化に柔軟に対応される点がアドバンテージとなる。コミットする期間や使用量によるが、EC2では最大72%のコストダウンを実現できるという。

Saving Plansの概要

 他にも認証にAWS Cognitoを採用したり、カメラマンのポートフォリオをLambda@Edgeを使ってリサイズ、CloudFrontで配信するなど、AWSのサービスをフル活用した事例になっていた。

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柔軟なスケーリングを求めて新規サービスから順次AWS化を進めるPOL

 続いてはLabTech企業POLの星牟禮 健也さんが登壇。POLの事業を簡潔に言い表すと、理系学生に特化した就職支援サービスだ。「研究者と理系学生の未来を創る『LabBase』とAWS」と題して、こちらも新規サービスにAWSを導入した事例を語ってくれた。

POL 星牟禮 健也さん

「ここのところ日本の科学領域における研究は停滞傾向にあり、論文数ランクは最低クラスです。研究領域には課題が山積みで、ヒト・モノ・情報・カネ、どれにも問題がある状況となっています。POLが一番重視しているのは、ヒトに関わる問題です」(星牟禮さん)

 同社が「LabBase」を立ち上げて理系学生のHRサービスに乗り出したのは、2017年。当時は理系学生に特化したHRサービスはほとんどなかったという。情報リテラシーが高い学生はスタートアップのサービスを信用してくれず、当初は利用者獲得に苦労したとのこと。様々な手段で利用拡大に努めていたが、どこまでスケールするかわからない新領域のサービスだけだ。「とにかくインフラコストを抑えたかった」という理由で、当初はConoHaのVPSを利用してシステムを運用していた。負荷が高いサービスでもないため、コストを最優先した結果の選択だった。しかし次第にユーザーが増え運用負荷も課題視されるようになり、メディアスパイクでシステムダウンを経験し、クラウドへの移行が取り沙汰されるようになった。

理系学生のHRサービス「LabBase」

「新サービスの構想もあったので、そのサービスでまずAWSを使い始めてみようということになりました。従来のLabBaseは企業の人事と学生、研究生をマッチングしていましたが、新サービス『LabBase X(クロス)』では産学連携のマッチングを行ないます。大学を横断して研究者やシーズを検索でき、企業は自社の構想するサービスにマッチした研究者や研究室にアプローチできます」(星牟禮さん)

 ConoHaのVPSを使っていた当時、サービスが増えるにしたがってインテグレーションに苦戦した。同じ轍を踏むことがないよう、LabBase Xではビジネススケーリングやサービス増加を見越したシステム設計を心がけたという。

「システム構築のしやすさは確認できましたが、新規事業なので成長するまでスケーリング時の効果はわかりませんね。しかし、今後のリプレイス計画には大いに参考になる経験でした」(星牟禮さん)

 今後は新規サービスをAWSで構築していくだけではなく、従来提供しているサービスのAWS移行も計画されている。将来のLabTech事業群を見据えて各機能をマイクロサービス化し、APIで結びたいと方針について語ってくれた。

■関連サイト

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