虎の穴と北海道テレビ放送はアップデートと業界動向を披露
Timers、POL、PIAZZAなどがビジネスと技術を語る第10回X-Tech JAWS
2020年02月05日 09時30分更新
既存業界とテクノロジーが混交する中、それぞれの業界でどのようにテクノロジーが活かされているのかを学び合うX-Tech JAWS。以前から気になってはいたのだけど、スケジュールが合わず参加できていなかった。そんな訳で1月15日に開催された「~新春あけおめX-Tech JAWS~」レポートをX-Tech JAWS初参加の重森がお届けする。
FammはSavings Plansを活用して大幅コストダウンを実現
既存のサービスをAWSに移行するのは、容易ではない。複数のサービスを連携させている場合は、特にハードルが高くなる。「家族の絆を深める」をテーマにサービス展開を進めるTimersも、既存サービスがそれぞれに連携しており、ビジネス全体をクラウド化するのは困難と思われた。しかしビジネスがスケールするに従ってインフラコスト、運用コストは増加。クラウド化を視野に入れざるを得なくなっていったと、「家族の絆を深めるプラットフォーム」と題して登壇したTimersの岩村 康平さんは語った。
「Fammというアプリを軸に共有アルバム作成や、写真を使ったオリジナル商品作成、ママ専用スクールなど複数のサービスを展開してきました。これら既存のサービスをAWSに移行するのは簡単ではないと思われたので、完全に新規に構築するサービスでまずAWSの使い勝手を検証することにしました」(岩村さん)
白羽の矢が立ったのは、プロカメラマン出張撮影サービスだ。サービスに登録している全国のプロカメラマンが、七五三など家族のイベントを出張撮影してくれる。価格は19,800円からと、リーズナブル。家族が撮影するよりいい写真が撮れるのはもちろんだが、撮影に気を取られてパパだけ行事に集中できない、なんてこともなくなる。岩村さんは立ち上げからこのサービスに携わり、システムをAWS上に構築した。
「長期間プロジェクトとして立ち上げたので、運用面を考慮してECS Fargateを使ったコンテナ化を採用しました。開発からデプロイまでの手間を減らし、プロダクトのコンセプト面に集中できました。またコスト面では、Savings Plansが大きな効果をもたらしています」(岩村さん)
Savings Plansは2019年のre:Inventで発表されたばかりのコスト削減サービス。1年間もしくは3年間にわたって一定の使用量をコミットすることで、割引が適用される。リザーブドインスタンスに似ているが、スケーリングを考慮しており、実際の利用量の変化に柔軟に対応される点がアドバンテージとなる。コミットする期間や使用量によるが、EC2では最大72%のコストダウンを実現できるという。
他にも認証にAWS Cognitoを採用したり、カメラマンのポートフォリオをLambda@Edgeを使ってリサイズ、CloudFrontで配信するなど、AWSのサービスをフル活用した事例になっていた。
柔軟なスケーリングを求めて新規サービスから順次AWS化を進めるPOL
続いてはLabTech企業POLの星牟禮 健也さんが登壇。POLの事業を簡潔に言い表すと、理系学生に特化した就職支援サービスだ。「研究者と理系学生の未来を創る『LabBase』とAWS」と題して、こちらも新規サービスにAWSを導入した事例を語ってくれた。
「ここのところ日本の科学領域における研究は停滞傾向にあり、論文数ランクは最低クラスです。研究領域には課題が山積みで、ヒト・モノ・情報・カネ、どれにも問題がある状況となっています。POLが一番重視しているのは、ヒトに関わる問題です」(星牟禮さん)
同社が「LabBase」を立ち上げて理系学生のHRサービスに乗り出したのは、2017年。当時は理系学生に特化したHRサービスはほとんどなかったという。情報リテラシーが高い学生はスタートアップのサービスを信用してくれず、当初は利用者獲得に苦労したとのこと。様々な手段で利用拡大に努めていたが、どこまでスケールするかわからない新領域のサービスだけだ。「とにかくインフラコストを抑えたかった」という理由で、当初はConoHaのVPSを利用してシステムを運用していた。負荷が高いサービスでもないため、コストを最優先した結果の選択だった。しかし次第にユーザーが増え運用負荷も課題視されるようになり、メディアスパイクでシステムダウンを経験し、クラウドへの移行が取り沙汰されるようになった。
「新サービスの構想もあったので、そのサービスでまずAWSを使い始めてみようということになりました。従来のLabBaseは企業の人事と学生、研究生をマッチングしていましたが、新サービス『LabBase X(クロス)』では産学連携のマッチングを行ないます。大学を横断して研究者やシーズを検索でき、企業は自社の構想するサービスにマッチした研究者や研究室にアプローチできます」(星牟禮さん)
ConoHaのVPSを使っていた当時、サービスが増えるにしたがってインテグレーションに苦戦した。同じ轍を踏むことがないよう、LabBase Xではビジネススケーリングやサービス増加を見越したシステム設計を心がけたという。
「システム構築のしやすさは確認できましたが、新規事業なので成長するまでスケーリング時の効果はわかりませんね。しかし、今後のリプレイス計画には大いに参考になる経験でした」(星牟禮さん)
今後は新規サービスをAWSで構築していくだけではなく、従来提供しているサービスのAWS移行も計画されている。将来のLabTech事業群を見据えて各機能をマイクロサービス化し、APIで結びたいと方針について語ってくれた。
この連載の記事
-
第26回
デジタル
コロナ禍で社会インフラとなった保育園 ルクミーはこうして支えている -
第25回
デジタル
オンライン診療の規制緩和にいち早く対応したMICINの新機能開発 -
第24回
デジタル
「Cariot」のリアルタイム性を強化するKinesis、Lambda、DynamoDBの整え方 -
第22回
デジタル
メンヘラ彼女向けのサービスを1週間で開発させられた話 -
第21回
デジタル
教育市場を盛り上げる「AWS EdStart」と「AWS Educate」 -
第20回
デジタル
AIで時事クイズと高校野球の戦評記事を作ってみた -
第19回
デジタル
おやつのサブスク「snaq.me」でのLambda活用術 -
第18回
デジタル
X-Tech JAWSで聞いたナビタイム、Resola、千のAWSの使いこなし -
第17回
デジタル
契約書のレビューを支援するLegalForce、CTOと事業開発担当が語る -
第16回
デジタル
「SQL書きたい」のリクエストにukkaのエンジニアはどう応えたのか? - この連載の一覧へ