ハードウェアの販売から撤退
株価が急落しApotheker氏は解任
こうしてApotheker氏が就任したが、もともとSAPの子会社がOracleから一部ソフトウェアを盗み出していたという訴訟が起きている最中の出来事であり、Apotheker氏はまさにその当事者だった、というわけでElison氏は激しい拒絶をしている。
ただ問題はむしろApotheker氏のその後の方針にあった。Hurd氏の辞職直後は20ドル近かった同社の株価はなかなか上がらず、2011年に入るとむしろ下落傾向にあった。
何があったか? Apotheker氏は就任後、すべての事業部の状況に目を通した上で、HPはより収益性の高いビジネスに絞り込むことを考えていた。
具体的には、利益率の低いハードウェアの販売から撤退、より利益率の見込めるソフトウェアあるいはサービス部門へのシフトである。この戦略に基づき、2011年8月にはタブレットやスマートフォンから撤退するとともに、PSG(Personal System Group)の分離あるいは売却を検討することを発表した。このあたりはSAPという純然たるソフトウェア企業のCEOらしい判断ではある。
ただこれだけだと利益率は向上するかもしれないが、売上そのものは大幅に減少することになる。Apotheker氏の決断は、連載543回の部門別売上と営業利益のグラフから、IPG/PSG/ESSを除くことになる。
そこで、これを埋めるべく大きな売上が立つ部門が必要になる。これが、先ほども触れたAutonomy Corporation PLC.の買収である。同社は今風に言えば、「不正規なビッグデータを収集、分析するプラットフォーム」ということになるだろうか。
不正規、というのはきちんと整った形ではない、さまざまなフォーマットの雑多なデータという意味で、現在もビッグデータを分析する際に問題になる項目ではある。
もっとも同社にそれだけの実力があったか? というと疑問で、もともとはCambridge Neurodynamicsというコンピューターベースの指紋認識を手掛けていた会社からスピンオフ。ドットコムバブルに乗じて上場し、その際の資金を利用してさまざまなスタートアップ企業を買収、自社に取り込んでいたメーカーである。
したがって、体裁は整っていたものの、内実がともなっていない恐れがあった(そしてのちに現実になる)。このAutonomy Corporationを、HPは一株42.11ドルで買収する。
これは当時の株価に79%ものプレミアを載せたもので、買収総額はおおよそ110億ドルに達した。この買収は当時のCFOですら反対したにも関わらず、Apotheker氏はこれを強行する。
このPCを含むハードウェア部門の廃止/売却予定、およびAutonomy Corporationの買収は、市場から強い反発を招いた。グラフを見ると株価が2011年8月に10ドル近辺まで急落しており、その後ほとんど上がっていないことでそれがわかる。
もちろん株主だけでなくアナリストなども口をそろえて、HPの戦略が迷走中であるとした。Autonomy買収を発表したのと同じ2011年10月、Apotheker氏は取締役会から解任されることになる。氏の在任期間中にHPの時価総額はおおよそ300億ドルほど減った計算となる。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事
-
第868回
PC
物理IPには真似できない4%の差はどこから生まれるか? RTL実装が解き放つDimensity 9500の真価 -
第867回
PC
計算が速いだけじゃない! 自分で電圧を操って実力を出し切る賢すぎるAIチップ「Spyre」がAI処理を25%も速くする -
第866回
PC
NVIDIAを射程に捉えた韓国の雄rebellionsの怪物AIチップ「REBEL-Quad」 -
第865回
PC
1400WのモンスターGPU「Instinct MI350」の正体、AMDが選んだ効率を捨ててでも1.9倍の性能向上を獲る戦略 -
第864回
PC
なぜAMDはチップレットで勝利したのか? 2万ドルのウェハーから逆算する経済的合理性 -
第863回
PC
銅配線はなぜ限界なのか? ルテニウムへの移行で変わる半導体製造の常識と課題 -
第862回
PC
「ビル100階建て相当」の超難工事! DRAM微細化が限界を超え前人未到の垂直化へ突入 -
第861回
PC
INT4量子化+高度な電圧管理で消費電力60%削減かつ90%性能アップ! Snapdragon X2 Eliteの最先端技術を解説 -
第860回
PC
NVIDIAのVeraとRubinはPCIe Gen6対応、176スレッドの新アーキテクチャー搭載! 最高クラスの性能でAI開発を革新 -
第859回
デジタル
組み込み向けのAMD Ryzen AI Embedded P100シリーズはZen 5を最大6コア搭載で、最大50TOPSのNPU性能を実現 -
第858回
デジタル
CES 2026で実機を披露! AMDが発表した最先端AIラックHeliosの最新仕様を独自解説 - この連載の一覧へ











