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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第545回

ハードウェアから撤退し株価急落、迷走するHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2020年01月13日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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ハードウェアの販売から撤退
株価が急落しApotheker氏は解任

 こうしてApotheker氏が就任したが、もともとSAPの子会社がOracleから一部ソフトウェアを盗み出していたという訴訟が起きている最中の出来事であり、Apotheker氏はまさにその当事者だった、というわけでElison氏は激しい拒絶をしている。

 ただ問題はむしろApotheker氏のその後の方針にあった。Hurd氏の辞職直後は20ドル近かった同社の株価はなかなか上がらず、2011年に入るとむしろ下落傾向にあった。

HPの株価

 何があったか? Apotheker氏は就任後、すべての事業部の状況に目を通した上で、HPはより収益性の高いビジネスに絞り込むことを考えていた。

 具体的には、利益率の低いハードウェアの販売から撤退、より利益率の見込めるソフトウェアあるいはサービス部門へのシフトである。この戦略に基づき、2011年8月にはタブレットやスマートフォンから撤退するとともに、PSG(Personal System Group)の分離あるいは売却を検討することを発表した。このあたりはSAPという純然たるソフトウェア企業のCEOらしい判断ではある。

 ただこれだけだと利益率は向上するかもしれないが、売上そのものは大幅に減少することになる。Apotheker氏の決断は、連載543回の部門別売上と営業利益のグラフから、IPG/PSG/ESSを除くことになる。

2005~2010年の部門別売上

2005~2010年の部門別営業利益

 そこで、これを埋めるべく大きな売上が立つ部門が必要になる。これが、先ほども触れたAutonomy Corporation PLC.の買収である。同社は今風に言えば、「不正規なビッグデータを収集、分析するプラットフォーム」ということになるだろうか。

 不正規、というのはきちんと整った形ではない、さまざまなフォーマットの雑多なデータという意味で、現在もビッグデータを分析する際に問題になる項目ではある。

 もっとも同社にそれだけの実力があったか? というと疑問で、もともとはCambridge Neurodynamicsというコンピューターベースの指紋認識を手掛けていた会社からスピンオフ。ドットコムバブルに乗じて上場し、その際の資金を利用してさまざまなスタートアップ企業を買収、自社に取り込んでいたメーカーである。

 したがって、体裁は整っていたものの、内実がともなっていない恐れがあった(そしてのちに現実になる)。このAutonomy Corporationを、HPは一株42.11ドルで買収する。

 これは当時の株価に79%ものプレミアを載せたもので、買収総額はおおよそ110億ドルに達した。この買収は当時のCFOですら反対したにも関わらず、Apotheker氏はこれを強行する。

 このPCを含むハードウェア部門の廃止/売却予定、およびAutonomy Corporationの買収は、市場から強い反発を招いた。グラフを見ると株価が2011年8月に10ドル近辺まで急落しており、その後ほとんど上がっていないことでそれがわかる。

 もちろん株主だけでなくアナリストなども口をそろえて、HPの戦略が迷走中であるとした。Autonomy買収を発表したのと同じ2011年10月、Apotheker氏は取締役会から解任されることになる。氏の在任期間中にHPの時価総額はおおよそ300億ドルほど減った計算となる。

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