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Why Slack?で聞いたオープンな情報共有の課題と効能

クオカードとアビームが語るSlackのオープンコミュニケーション

2020年01月09日 09時00分更新

文● 指田昌夫 編集●大谷イビサ

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アビームコンサルティングが進める「Slack×業務アプリ」

 続いて、アビームコンサルティング P&T Digital ビジネスユニット HCMセクター ダイレクターの全 大忠氏が、Slackの社内導入と連携システムの開発などについて講演した。

アビームコンサルティング P&T Digital ビジネスユニット HCMセクター ダイレクターの全 大忠氏

 全氏が率いるHCMセクターは、人事部門向けコンサルティングと人事アプリケーション、生産性向上ツールの導入支援などを行っているが、同社内への業務改善ツールの提案や導入も行なっている。Slack導入の第1段階は2019年5月に着手、全氏が統括するHCMセクターの130名から利用を開始した。現在は第2段階に拡大し、500名が利用している。

 全氏は、Slackによる効果を次のように語る。

「まず、部内のメンバーからは、私からの返信が非常に早くなったことが最大の効果だと言われている(笑)。それは、単にSlackをよく見ているだけでなく、部内で『全must』というチャンネルを作ってもらい、必ず見て返信しなければいけない用件はそこに投稿してもらうようにしたことが効いている。メールの場合、クリックして開かなければ優先順位が判断できなかったため、応答するのに時間がかかっていたが、Slackによって早く返信すべきものに集中できるようになった」。

 さらに、発言することへのハードルが下がったという声や、発言へのレスポンスが絵文字でしやすくなったなどの効果もあったという。「導入前は、Slackを入れてもダイレクトメッセージやクローズドなプライベートチャンネルでのやり取りが多いのではないかと思っていたが、実際はオープンなパブリックチャンネルが9割を占めており、予想以上に活発にコミュニケーションが行われている」。また、業務以外のプライベート情報のワークスペースを作り、家族やペット、趣味のチャンネルも設けており、社内の風通しを良くする効果も出ているという。

 業務フローの改善にも取り組む。手始めに日報をSlackから送れるようにした。「マネージャー泣かせの“日記のような日報”は読みたくないもの。それをなくすため、ワークフロービルダーを使ってSlack内に日報のフォーマットを作り、質問に答えることでその日の課題を簡潔に共有、管理できるようにしている」。

 運用を開始して半年ほどだが、同社ではSlackと他の社内アプリケーションとの連携もはじめている。たとえば経費精算ソフトのSAP Concurと接続し、誰がどのプロジェクトで使った経費なのかを紐づけして承認プロセスに流すようにした。そのおかげで承認担当者はいちいち内容を調べなくても、ワンクリックで承認が取れるようになり、経費精算作業が非常に短時間で完了するようになった。

 また、タレントマネジメントシステムのSAP SuccessFactorsとの連携も、すでに開発が終わっていて、Slackのユーザー企業である武蔵精密工業に導入されている。社員の検索がSlack上で簡単にできることから、人事システムの利用が活性化される効果も期待できるという。

 さらに、現在開発中の会議調整システムのデモも行なわれた。スケジュール管理アプリケーションと連携して、幹部を含む会議メンバーの空き時間を、Slackに投げかけるだけで自動的に調べて全員が空いているスロットを返信してくれるものだ。

 アビームコンサルティングでは、Slackによって社内のオープンコミュニケーションを実現するだけでなく、他の業務システムとの連携ツールを積極的に開発して自社や顧客企業の業務改善を進める。

“食わず嫌い”のメンバーを一押しすることが大事

 2社の事例報告の後、参加者からの質疑応答が行なわれた。

 まず社内で利用を促進するための方策について質問が出た。クオカードの小林氏は、「ヘルプのチャンネルを作ったり、各部署で自発的に、使いこなしている若手社員を先生役に指名して教え合ったりしている。Slackの使い方自体はとても簡単なので、当初抵抗がある人でも、最初に使い始めるところさえしっかりサポートできれば、あとは自然と使われるようになる」と答えた。

 また、Slack導入の投資対効果をどう測るかについての質問に、アビームコンサルティングの全氏は「当社はまだ部分導入なので全体の投資対効果は測れないが、Slackというコミュニケーションツールのトップランナーを利用していないことは、我々のような企業にとってリスクである、という話をして導入を進めている」と語った。

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