Integrity rx2600の改良型を次々と投入
VMSの話に寄り道しすぎたので話を戻そう。2003年7月には前回紹介したrx2600に加え、rx5600も発売された。こちらは同じzx1チップセットを使いつつ、最大4つのMadisonを実装可能なラックマウントタイプだった。ただし厚みは7Uと結構な大きさである。
同年11月にはさらにrx4600/rx7600/rx8600を追加する。rx7600/rx8600はzx1ではなくsx1000という、最大64プロセッサーまで対応可能なCellベースのチップセットとなっている。「Cellベース」はSCEとIBMと東芝が共同開発したアレではなく、HPの用語である。
要するにパーティショニングができるという話で、例えば64 CPUを丸ごと1つのCellとすることもできるし、32 CPUづつの2つのCellに分割することも可能というものだ。
これを利用して、1つのサーバー上で複数のOSを動かすことも可能になる。上で2004年に、1台のSuperdomeの上で4種類のOSを同時に動かした話に触れたが、これは1台のSuperdomeを4つのCellに分割、それぞれ異なるOSを稼働させたという話である。
このsx1000を利用して構築されたのがSuperdomeである。実はSuperdomeと一口で言ってもものすごい種類があるのでわかりにくく、筆者にも全部を網羅できている自信がない。
Superdomeの元になるのは、ConvexのExemplar SPPである。1994年にPA-7100×2~16構成、クラスター構成で最大128プロセッサーをサポートするSPP 1000シリーズが投入され、次いでPA-7200を搭載するSPP 1200シリーズに刷新、さらにCPUをPA-7200のままながら2MB 2次キャッシュを搭載するモデルに切り替えたSPP 1600シリーズときて、最終的にはPA-8000を搭載するSPP 2000シリーズが投入された。
このSPP 2000シリーズ、最小構成となるS-Classは最大16プロセッサー、クラスター構成となるX-Classは最大512プロセッサーといった、ちょっとしたお化けである。ここまでのSPP 2000シリーズはすべてConvex由来のクロスバスイッチを利用して構築された。
このSPPシリーズをHP独自のHyperPlaneで作り直した、いわばxemplar SPPとSuperdomeの中間に位置する製品がV-Classと呼ばれる製品群で、最初のHP V2200はPA-8200×4~16構成。次いでV2500(PA-8500×2~32)やV2600(PA-8600×2~32)も投入され、さらにV2500/V2600のクラスター構成も用意された。
Exemplar SPPとV-Classのソフトウェア面での違いはOSで、Exemplar SPPがSPP-UXというConvex時代のものが利用されたのに対し、V-ClassはHP-UXが利用されている。
さて、このV-Classを上回る規模のものとして投入されたのがSuperdomeとなる。最初に投入されたのはSuperdome Legacy、通称“White”で、こちらはCell最大64個のPA-8x00シリーズ(いろいろ選択できたらしい)が利用された。このWhiteが、HP 9000 Superdomeと称されることがあった。
次に投入されたのが、先に紹介したsx1000チップセットを利用したsx1000 Superdome、通称“Black”である。こちらは最大64個のPA-8800/8900、またはItanium 2を搭載できるというものだった。
名称に違和感があるかもしれないが、こういう文章がある以上、この当時は“Superdome sx1000”ではなく、“sx1000 Superdome”で、どこかでこの順序がひっくり返ったらしい。
sx1000 Superdomeの後継としてsx2000 Superdomeも投入され、これがPA-RISC(PA-8900)をサポートする最後の製品となった。
ちなみに、PA-RISCからItaniumへの以降の最中である2004年12月16日、HPはItaniumプロセッサーの開発から手を引く事を発表する。
HPに在籍していたItanium関連の開発メンバーはインテルに移籍することになった。VLIWに魅せられてCydra 5で失敗した後はHPのFellowとしてEPIC開発の指揮を執ってきたBob Rau博士が、HPの撤退を知ることなく2002年末に亡くなったのは幸運だったのかもしれない。

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