人々はスマホアプリに夢中になり、挙げ句の果てに怪我をしてしまう。 そう、人間とは愚かなものだ。
全米100カ所の病院の救急治療室を訪れた患者のデータを収集している「全国電子傷害監視システム (NEISS:National Electronic Injury Surveillance System)」を通じて提出されたデータに基づく新しい研究が、12月5日、米国医師会雑誌(JAMA)に掲載された。 研究チームは、1998年1月から2017年12月までの間に頭や首を負傷した患者の事例を調べ、スマホとの関連性が報告されているものにデータを絞り込んだ。最終的なデータ数は2500件に上り、負傷した主な原因は、つまずいたり、転倒したりしたことであった。
意外に少ない数だと思うかもしれない。しかし、NEISSのデータベースはごく少数の病院から収集された情報であるため、実際はそれより大きな数字となることはまず間違いない。 さらに、自己報告に基づいた統計であり、漏れている事例が多数存在するとみられる。 保険の適用や法的な理由から、事故当時にスマホを使用していたと話したがらない人は多いだろう。 研究チームは、スマホ使用中に頭頸部を損傷した人の実際の数は、7万6000人に達する可能性があると推定している。
同論文の共同執筆者で、ラトガース大学の外科医であるボリス・パシュコバー医師は、2007年に負傷者数が明らかに急増し、2008年には急激に減少したものの、その後10年間にわたって急上昇していることを指摘している。 「携帯電話で話をしていることが問題なのではありません」と、パシュコバー医師は述べる。通話中であっても、視線は常に上向きであり、周囲の危険に配慮できる。スマホ アプリが問題なのだ。
2007年の負傷者数の急増は、その年の6月にアイフォーンが発売されたことと関係がある。 アップルは翌月の7月には、500種類のアプリを取り揃えたアップストア(App Store)を立ち上げている(そういえば、2016年のピーク時に「ポケモンGO」というスマホゲームが登場したのを覚えているだろうか。2017年の調査では、このゲームが原因で、負傷者および死者まで出ていることがわかった)。
この問題はどうすれば解決できるだろうか。注意散漫な状態になっている歩行者やドライバーに対し、一部の都市や国では罰金を科す動きが出始めている。パシュコバー医師は、人々に歩きスマホの危険性について理解してもらうと同時に、負傷する最大の原因となっている、道路を渡る際の歩きスマホをしている人々に罰金を科すという案がより好ましいと考えている。 簡単に守れるルールとして同医師は、 「道路を横断する際には、スマホを手に持たないことです」と述べる。「自分が注意散漫になっていると、すべての人々を危険に晒すことになるのです」。