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『HUMAN LOST 人間失格』の木﨑文智監督インタビュー

太宰治の「人間失格」がSFダークヒーローアクションに

2019年11月29日 17時00分更新

文● 野村ケンジ 編集●ASCII

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時代の閉塞感や未来への漠然とした絶望が現代と重なる

──さて、ここからは作品の内容についてお聞かせください。そもそも、何故いま「人間失格」を作品の原案として用いることとなったのでしょうか。

木﨑 それは、「人間失格」という作品が持つテーマ性や世界観が、いまの時代性とシンクロしているのではないか、ということを感じたのがきっかけでした。「人間失格」には、時代の閉塞感や未来への漠然とした絶望などが描かれていますが、現代もそういった風潮と重なる部分があると思うんです。現代と地続きな作品の世界観を通して、どういった未来を見据えていくのがよいのか、「人間失格」をモチーフとすることで、そういったテーマを与えられるのではないか、と考えました。

──いっぽうで、この作品は未来の時代を舞台としています。何故、『HUMAN LOST 人間失格』をSF作品として作り上げていったのでしょうか。

木﨑 ポリゴン・ピクチュアズの作る映像作品として、どういった舞台が良いのかを考えた部分はあります。しかしながら、基本的には作品として表現したい内容を考えて、未来の世界、SFの世界を選んだ、というのが本当のところです。同時に、現代や「人間失格」の時代と地続きであることも強調したかった。そのため、作品の舞台は未来ではあるけれど、背景としては昭和を感じさせる、レトロフィーチャーな映像を採用しています。3Dアニメでこういった世界観を表現するのは初めてのことですし、そのぶん苦労も多かったですが、とても印象的な世界観が作り上げられたと思います。そういった映像表現にも注目していただけると嬉しいです。

──確かに『HUMAN LOST 人間失格』の映像表現は独特ですね。未来的でもあり、レトロ風でもあり。こういった部分は、どうやって作り上げていったのでしょうか。現在のVRやARなどのイメージも取り込まれているのでしょうか。

木﨑 AKIRAやブレードランナーが企画時のイメージベースではありますが、昭和や令和となった現代と地続きな未来であることにこだわって欲しいというリクエストを、コンセプトアートを担当した富安健一郎さんが応えてくれて、作り上げていってもらいました。

──また、作品を拝見するとSFダークヒーローとしての明朗快活さもありました。

木﨑 このあたりは、私自身がこだわった部分でもあります。世界観のしっかりしたSF作品は、どうしても難しい内容になってしまいがちですし、本作品は「人間失格」をモチーフとした重々しいテーマも持ち合わせています。しかしながら、設定ばかりに意識を持っていかれたくはなかったですし、「人間失格」をよく知らない人にも、そしてSFファンではない人にも純粋に作品を楽しんで欲しいと思ったんです。ですから、SFダークヒーロー作品としての分かりやすさや楽しさを重視したストーリーに仕立てていきました。 あくまでも、大庭葉藏と柊美子の2人が中心となって織りなすヒューマンドラマとして描かれていますので、まずはシンプルにSFダークヒーローものとして楽しんでいただけたらと思います。

──エンターテインメントとして楽しく、それでいてしっかりとしたテーマ性のある作品に作り上げられています。

木﨑 はい、映像もかなりのこだわりを持って作っています。スタッフもかなりこだわって作り上げてくれましたので、表現の細やかさ、美しさに関しては大いに自信を持っています。また、主役の2人(大庭葉藏役の宮野真守さん、柊美子役の花澤香菜さん)はもちろん、堀木正雄役の櫻井孝宏さんやマダム役の沢城みゆきさんなど、演者の選定や音響面での作り込みにもこだわりました。ストーリーも映像も音も、あらゆる意味で『HUMAN LOST 人間失格』は深い内容と完成度の高さを持ち合わせている作品だと自負していますので、大いに楽しんでいただけたら嬉しいです。

© 2019 HUMAN LOST Project

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