プリンターを接続するPCはIBMの天下
HPのシェアはわずか1%強
ではこのプリンタービジネスを支えているPCは? というと、連載526回で紹介したVectraシリーズが健在であるが、他を圧倒するというのは難しい。
下のグラフは“External Economies and Economic Progress: The Case of the Microcomputer Industry”に掲載されていたデータ(元データはDataquest)をベースに、IBM-PCおよびその互換機メーカーのマーケットシェアをまとめたものである。
合算しても100%にならないのは、分母がPC全体だからで、それこそAtariやCommodore、Tandyなどの8bit機や、NECのPC-8001/8801/9801シリーズなども含まれている。IBM-PCおよびその互換機だけに絞って分母を計算し直せばもう少し数字は大きくなるのだが、あくまで傾向を見たいだけなのでこのままとする。
こうしてみると、さすが1991年までの範囲で言えばIBMが圧倒的なシェアを獲得しており、他のメーカーは数%のところでひしめき合っている感じである。
ではIBMを除くとどうなるか?というのが下のグラフで、やっぱり1%あたりでひしめき合っている構図に大きな違いはないのだが、COMPAQがその中から早いタイミングで抜け出し、1991年では3.99%とかなり大きなシェアを握っている。
続いてPackard Bellが2.46%、東芝が2.03%といった具合で、その他のメーカーはすべて1%台である。それではHPのシェアは? というと、1980年からで言えば下表のように平均すると1%強を維持してはいるが、平均的といったあたりだ。
| HPのマーケットシェア | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 年 | シェア | |||||
| 1980年 | 1.26% | |||||
| 1981年 | 1.41% | |||||
| 1982年 | 0.81% | |||||
| 1983年 | 0.48% | |||||
| 1984年 | 0.86% | |||||
| 1985年 | 1.10% | |||||
| 1986年 | 0.82% | |||||
| 1987年 | 0.92% | |||||
| 1988年 | 1.19% | |||||
| 1989年 | 1.18% | |||||
| 1990年 | 1.22% | |||||
| 1991年 | 1.10% | |||||
もっともここからは先の数字はない。だいぶ探し回ったのだが、1990年代のシェアが見当たらなかった。例えばComputerworldの1995年10月における、ディーラーチャネル向けのPentium機の売れ行き一覧を見ると、それなりに健闘しているポジションにいることが見て取れる。
Pentium機の売れ行き一覧。まだDellはここに入ってきておらず、COMPAQとIBMの間にHPが割って入る感じになっている
画像の出典は、Google Book所蔵のComputerWorld 1995年10月2日号
これに加えて、その1995年にはコンシューマー向けのバリュー製品としてPavilionというブランドを新たに追加する。
1995年に発表されたPavilion 5030はPentium 75MHzに8MB DRAM、850MB HDDと4倍速CD-ROMドライブを搭載。Windows 95を簡単に使える家庭向けマシンとして登場したものの、やはり同様のコンセプトで1993年から市場投入されていたCOMPAQのPresario同様、あまりヒットしたとは言えなかった。
画像の出典は、HP Virtual Museum
日本でもこの当時、確かAIWAがinforteiment PC-MT466という家庭向けPCをリリースしている(調べたところ、月刊ASCII 1994年11月号のNEW MODEL IMPRESSIONでレビュー記事があるらしい)が、こうしたものを含めてほぼどれも鳴かず飛ばずだった記憶がある。
理由は簡単で、こうした家庭向けPCはコストを抑えるため、拡張性を最小限に抑えており、ところがソフトウェアの側がどんどん進化していき、結果としてより高性能なCPUや大量のメモリー、大量のストレージなど新しい拡張カードを必要とするようになったにも関わらず、こうした家庭向けPCにはその対応が不可能だったからだ。
したがって、Pavillionは低価格向けブランドとして現在に至るまで使われているものの、これで大きくPCビジネスが伸びるというわけにはいかなかった。(続く)

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