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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第529回

HPの命運を変えた第一世代PA-RISCの誕生 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2019年09月23日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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PA-RISCの最初のプロセッサー
PA-7000

 PCXに続いて1991年に開発された後継製品がPCX-Sで、こちらはPA-7000という名称に途中から変更になった。

 PA-RISCの最初のプロセッサーと紹介されることもあるが、確かにPA-XXXXという型番で呼ばれるようになったのはこのPA-7000が最初の製品である。

 命令セットは32bitのままながら若干変更されたPA-RISC Version 1.1になっている。相変わらず周辺回路は別チップ構成で、製造プロセスは1μmのCMOS26Bのまま、パイプライン段数も5段で変わらないが、動作周波数は最大66MHzに引き上げられた。

 その一方で、プロセッサー/メモリーバスであるSMBは新しい32bit幅のPBUS(Processor Bus)に変更になった。帯域的にはSMBがプロセッサーの動作周波数の半分だったのに対し、PBUSは最大で動作周波数と同じなので理論上は同等ということになる。ほかに動作周波数の1/2あるいは2/3での設定も可能だった。

 もっともPBUSもSMB同様共有バス構造になっており、これで最大4プロセッサーまでのSMP構成が可能となっていた。CPUそのものは14.2mm角のダイで、トランジスタ数は57万7000個、プロセスそのものは引き続き1μmのCMOS26Bを利用している。

PA-7000のダイ写真。下部に馬のロゴと、その横に3文字の略語が並んでいるが、これは開発者のイニシャルだろうか?

 おもしろいのはFPUで、こちらはTIのEPIC-2(Enhanced Processed Implanted CMOSの略で、後のItaniumにつながるEPICとはなんの関係もない)という0.8μmのCMOSプロセスを利用して製造されていることだ。トランジスタ数は64万個であるが、プロセス微細化の効果か、ダイサイズそのものは13.0mm角となっている。

 このPA-7000はHP 9000シリーズでも広範に採用された。まずはHP 9000/705・710・720・730・750と、HP 9000/F10に採用され、後に登場したHP 9000/890というサーバーにも最大4プロセッサーのPA-7000が搭載されている。

 また変わったところでは三菱電機のME/R7200・R7300・R7500というワークステーションにも採用されたが、これは三菱電機がHP 9000/720・730・750のOEM供給を受けてMELCOM ME RISCシリーズとして販売したものである。これはPA-RISCの初の外販でもあった。HP 3000シリーズについては後述する。

 PA-7000続き、より性能と集積度を引き上げたのが、1992年に登場するPA-7100であり、これを少し改良して動作周波数を引き上げたのが1994年に登場するPA-7150となる。

 PA-7100/7150では、ついにFPUとMMUもワンチップ化されることになった。このFPUはALUと同時に動作するため、2命令のスーパースカラーに進化したことになる。

 パイプラインそのものは5段のままであるが、内蔵されるTLBは120エントリーに増えたほか、新たにBTLB(Block TLB:複数ページをまとめて扱えるTLB)を16エントリー搭載したのはやや珍しい。

 引き続き1次キャッシュはオフチップであるが、命令は1MB、データは2MBにそれぞれ増量された。動作周波数は100MHz(PA-7150は125MHz)で、引き続きCMOS26Bを使いつつプロセスそのものは0.8μmに微細化され、総トランジスタ数は85万個。100MHz駆動で消費電力は30Wという記録がある。

 PA-7150もこうした特徴はほとんど変わらないが、「内部構造に少し手を入れて」125MHzまで動作周波数を引き上げたそうだ。なお、プロセスそのものはCMOS26Bの0.8μmのままだ。

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