完全ワイヤレスイヤホンの中でもソニーだけが唯一実現していた技術が、音楽リスニングの際に周囲の騒音を低減するアクティブ・ノイズキャンセル技術。そんなソニーのライバルと呼べる完全ワイヤレスイヤホンが、IFA 2019では3機種登場。IFA 2019の会場でノイズキャンセル効果を体験したのでレポートする。
オープン型でノイズキャンセル!?
ファーウェイ「Freebuds 3」
完全ワイヤレスイヤホンでノイズキャンセル対応の第一弾が、ファーウェイが発表した「Freebuds 3」。ファーウェイが自らプレスカンファレンスでライバルとして名指ししていたアップルの「AirPods」に非常に良く似ていると呼ぶしかないデザインで、構造的にもAirPodsと同じオープン型。つまり、カナル型のように耳が塞がっておらず、基本的には外の音が入る構造でいながら、アクティブノイズキャンセル対応を謳っているのだから、かなりチャレンジングな仕様だ。
Freebuds 3の内部にはファーウェイ製の「Kirin A1」チップを搭載。最大15dBまでのノイズ低減が可能で、外音にあわせて自動的にNC効果が調整される。
IFA 2019のファーウェイブースで実際にFreebuds 3で音楽を聴いてみると……。元のサウンドまでAirPodsを彷彿とさせる中域に厚みのある音というのもあるが、Freebuds 3の左イヤホンをノックしてノイズキャンセルをOnにすると、一気に外部の騒音のレベルを押さえて、遠くで小音量でガヤガヤするような雰囲気に。これは十分効果を実感できる水準だ。
ただ、音楽を聞きながらでも騒音は気になってしまうので、正直に言って、これでカナル型でノイズキャンセルならもっと性能が上がるだろう。むしろ、オープン型では耳に直接入ってくる音もある状態で、このレベルのノイズキャンセルをよく仕上げたな、という方が驚きだった。
FreeBuds 3は欧州では10月に発売予定。ワイヤレス充電にも対応。ノイズキャンセル付きのAirPodsが登場すると考えると、相当にユニークな存在と呼びたい。
Libratone「Track Air +」は待望のクアルコムQCC5100チップ搭載
IFA 2019の会場で多数ある完全ワイヤレスイヤホンの中に、普通にノイズキャンセル対応モデルが置かれていたのがデンマークLibratone社による「Track Air +」だ。
「Track Air +」でノイズキャンセルを実現しているチップはクアルコムの「QCC5100シリーズ」。実はリリースは古く、2018年1月には発表されていたが(完全ワイヤレスの音切れなくす? 期待のクアルコム新チップ)、高機能過ぎるゆえかチップの出荷が遅れていて、QCC3020シリーズなど後発チップの出荷にも抜かれていた。だが、QCC5100シリーズが出回ればどこのブランドも当たり前にノイズキャンセル対応完全ワイヤレスイヤホンを作れる、そんなゲームチェンジャーになると呼ばれていた代物だ。
ノイズキャンセル機能は4つのマイクを内蔵したフィードバック・フィードフォワードのハイブリッド型。マニュアル設定だけでなく、ユーザーの環境や動きに応じて適切なノイズキャンセリングレベルに自動的に調整。最大30dbまでのノイズキャンセルが可能としている。
IFA 2019の会場では実際に「Track Air +」を装着してノイズキャンセル効果を確かめた。率直に言ってかなり効果アリ。アプリで最大30段階で調整できるのだが、最大の「30」の状態ではIFA 2019の喧騒もグッっと絞られて、ほとんど気にならないレベルに。あまりに効き過ぎたところが予想外だった。
「14」程度まで効果を下げても喧騒を少し感じる程度に落ち着く。短時間の検証だがノイズキャンセルイヤホンとして実用レベルにありそうだ。Libratone社は過去にもノイズキャンセル対応の実績があるので、チューニングも含めてお手の物なのかもしれない。あとは、電車や飛行機といった騒音にどれだけ対応できるか次第。
「Track Air +」は英国では8月より発売されているモデルで、欧州価格は199ユーロ(約2万4000円)。日本でも取り扱いのあるブランドで日本語版の製品ページも既に存在する(公式ページ)くらいなので、日本での発売にも期待大だ。
おしゃれブランドのMASTER&DYNAMICもノイズキャンセル対応
IFA 2019で以外なブランドから登場するノイズキャンセル対応完全ワイヤレスイヤホンがMASTER & DYNAMIC社の「NW07 PLUS」だ。MASTER & DYNAMIC社はニューヨークに拠点を置くヘッドホン・イヤホンブランドで、日本でもオリジナルモデルにあたる「NW07」は発売中で、べっこう柄のデザインで人気だ。
ノイズキャンセルの性能は4つのマイクを内蔵したフィードバック、フィードフォワードマイクシステムを採用しており、こちらもクアルコム社の”QCC5100シリーズ”採用と見られる。会場では実際にノイズキャンセル効果を体験できる状態ではなくショーケース内の展示のみだったが、期待の高まるモデルだ。発売は9月予定で299ユーロとのこと。
完全ワイヤレスでソニーが圧倒的な支持を集める原動力となっているノイズキャンセルだが、IFA 2019のタイミングでライバル機が続々登場し、なかなか面白い事になっていた。ノイズキャンセル対応完全ワイヤレスチップの出荷が本格化すれば、今後完全ワイヤレスイヤホンの上位モデルの顔ぶれを一新するインパクトになるだろう。
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