日本でも認知度が上がっているeスポーツ
オリンピックの正式種目に採用される可能性があることなどもあり、日本でも近年になってeスポーツの知名度は上がっている。
世界でのeスポーツの市場規模について、アメリカの調査会社のNewzooによれば、2019年は11億ドル(約1170億円)に達し、前年比で26.7%の増加が見込まれているとのこと。また全世界のeスポーツの視聴者数は4億5380万人で、前年比で15%増加するという。
国内のデータについては、2018年のGzブレインによる調査結果で、市場規模は前年比13倍の48.3億円と発表されている。同社は2019年から2022年までの年間平均成長率は19.1%と予測しており、2022年には99.4億円にまで市場が拡大するとしている。
国内のeスポーツファン数は前年比66%増の383万人。同社では日本にはゲーム関連動画の視聴者が約2500万人いると推計しており、そのうち15%がeスポーツファンとのこと。
大会賞金の規模については、大会によってさまざまではあるのだが、規模の大きいものでは、2018年にMOBAの人気タイトル「Dota 2」で賞金総額約28億円の大会が開かれた例もある。
単発の大会だけでなく、定期的なプロリーグを開催しているタイトルもあり、eスポーツというビジネス市場が存在するという認知は着実に広がっていることだろう。
選手との距離が近いeスポーツ界
eスポーツ業界では、TwitchやOPENREC.tv、YouTubeなどで、プレイヤーたちが積極的に配信活動をしているのが面白いポイントのひとつだ。
ゲーム実況のように、ゲームプレイの様子を映しつつ、プレイヤーが解説したり、リアクションをとったり、あるいは雑談したりという動画や生放送の文化は、10年以上前から動画配信プラットフォームにある。
eスポーツ界では、世界のトップ選手たちもこうしたゲーム配信をしている人が多い。もちろんプロだけあって実力は折り紙付きなので、しばしばスーパープレイが飛び出すこともある。そんなプレイを無料で、しかも世界中どこででも見られるというのはかなりお得だ。
加えて、普段の選手のことを知るきっかけにもなる。頻繁に配信している人なら話のなかで人となりや性格などもわかってくるし、コメントなどでコミュニケーションもとれるので、選手のことを深く知る機会が多い。
このような活動は、まさにインターネットや配信プラットフォームが発達した現代にマッチしたものでもある。選手のことを深く知ることで、選手を身近に感じられたり、応援する気持ちが強まったりするのもまた、eスポーツの発展を支えている要素のひとつと言えるだろう。
「スポーツ」としての地位を確立するには課題も
認知が高まってきており、独自の魅力もあるeスポーツ。しかし国際的なスポーツとして地位を築くには、まだ課題があることが浮き彫りになっている。
eスポーツはオリンピックのメダル種目への認定も議論されているのだが、、国際オリンピック委員会(IOC)では、2018年12月に「一部のタイトルが、オリンピックの価値観と相容れないこと」などを理由に、eスポーツのオリンピック種目への認定は時期尚早だという見解を示している。
つまりは、人を銃で撃つなどの暴力的な表現が、「平和の祭典」であるオリンピックの価値観に沿わないということである。ほかにも、eスポーツ業界は変化のスピードが早く、人気タイトルの移り変わりが激しいことなども理由として挙げている。
また、eスポーツで用いられるタイトルに関しては、パブリックコンテンツである従来のスポーツと異なり、ゲームソフトメーカーの版権が明確に存在する。こういった点をどのようにクリアしていくのかなども考える必要があるだろう。
さらに日本においては、刑法賭博罪、風営法、景品表示法などの観点から、eスポーツの大会に多くの制限が設けられ、業界発展の壁となっている部分すらある。景品表示法によって、ゲームメーカーが自社のタイトルを使ったeスポーツ大会において、最大10万円までの賞金しか授与できないことなどが一例だ。
2018年に発足した「一般社団法人日本eスポーツ連合」は、プロライセンスを発行することで、法解釈によって高額な賞金の授与を可能にしたとされるが、制度の適法性について疑問視する声もある。
とはいえ、国内でも世界でも、eスポーツを国際的な競技の地位に押し上げようという流れは強まっている。IOCも、eスポーツが伝統的なスポーツに迫る人気を獲得していることや競技性の高さについては理解を示しており、頭ごなしに否定しているというようなことはない。
今の段階では、eスポーツという存在について、従来のスポーツ文化と大きく異なりがあるため、折り合いがつかない部分があるのだろう。eスポーツの存在は、これまでの「スポーツ」という概念に大きく影響を与えるものであるだけに、受け入れる体制を入念に整える必要があるのだと考えられる。